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はじまりの物語  作者: はあや
本編
21/431

閑話 アルツィードの昼休み

「隣、良いか?」


夏季休暇中に数回行われる騎士科の訓練日。


食堂で昼食を摂っていたアルツィードは、同じクラスのキアルに声を掛けられていた。


慌てて口の中のものを飲み込み、アルツィードが返事をするが、キアルは返事を待つことなくさっさと座って食べ始めている。


シスツィーアのいる普通科とは違い、アルツィードがいる騎士科は貴族と平民が分かれているだけだ。


国に有事があった時には、最前線に立つ騎士を育成するための科。


ここでは魔力量よりも、剣技などの実力が重視される。


キアルとは一年生から同じクラスだが、アルツィードは話したことは殆どなくあいさつを交わす程度。


それは生徒会の魔道具整備をすることになっても変わらなかった。


不思議に思いながらも食事を続けていると、半分ほど食べ終わったキアルが話しかけてくる。


「この間、偶然知ったんだけどさ。アルツィードはシスツィーア・アルデス子爵令嬢と兄妹なんだって?」

「そうですが・・・?」



『自分と兄妹と知られたら、お兄さまに迷惑かかるかも』



アルツィードは気にしてなかったが、入学する前に妹が気にしていたことを思い出す。


もともと、話しかけられたら話すけれど自分から話すタイプでもないアルツィードは、生徒会に出入りすることなってもシールスと話くらいで、リューミラともあいさつ程度しかしてない。


キアルが知っていることに軽く驚いき、話すならシールスあたりか?と検討をつける。


「本人から聞いてな。シスツィーア嬢は俺が知らなかったことに驚いてたぞ」

「なるほど」


きっと、生徒会でバレているとでも思ったのだろう。


まあ、知られて困ることではない。


食事を続けながら、ふと「妹とキアルさまはどこで知り合ったんだ?」と疑問が湧く。


まさかとは思うが・・・・・・


背筋にひやりとするものを感じながら、恐る恐る尋ねる。


「もしかして、妹が何か失礼をしたのでしょうか?」

「ん?俺にはしてないぞ」



・・・・・・・・・・



(「俺には」ということは、誰かに失礼な態度をとったということでは・・・?)


「すみません!妹がご迷惑をお掛けしたみたいで」


勢いよくキアルへ頭を下げる。


キアルは一瞬だけ目を丸めて驚いたが、手を横に振りながら屈託なく笑う。


「いいって。これから長い付き合いになるだろうしなー」

「と、言われますと?」

「聞いてないか?シスツィーア嬢、アランの側近になったんだよ」

「アランさま・・・?ですか・・・?」


聞きなれない名前に首を傾げる。


それに、『側近』というものは、あれか?


アルツィードの記憶違いでなければ、『側近』とは王族の身近に仕え、補佐する者のはずだ。


それとも、自分が知らないだけで公爵家あたりなら、『側近』がいてもおかしくないのか?


そもそも、なんで妹が『側近(そんなもの)』に?


妹と『側近』の単語が結びつかなくて、アルツィードは疑問だらけだ。


そんなアルツィードを見たキアルは、苦笑しながら教えてくれる。


「アランは、アランディールのことだよ。第二王子で、レオンの弟で、俺の従弟」

「あらん、でぃーる・・・・でんか・・・あの、病弱と噂の!?」

「そうそう。『死にぞこないの王子』だよ。あんま人前でてないから知らなくても無理ないよな」


喋りながらも食べる手を休めず、品よく食事を口に運ぶキアル。


アルツィードは驚きで食事を忘れ、手が止まっている。


「なんで、そんなことに・・・?」

「聞いてないかー?まあ、正式に許可が下りたのも昨日だしな。今頃任命書が届いてんじゃないかな」


どこで会ったのか、なんでそんなことになったのか、知りたいことが頭をめぐり、呆然とする。


「たぶん、夏季休暇から生徒会にも参加すると思うぞ。アランの代わりになー」


いつの間にか食べ終わったキアルが、席を立ちぽんっとアルツィードの肩を叩くと食器を持って行ってしまう。


残されたアルツィードは、それどころではなく


午後の訓練に遅刻すれすれまで、食堂で呆然としていた。


最後までご覧くださり、ありがとうございます。

次話もよろしければご覧ください。

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