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はじまりの物語  作者: はあや
本編
2/431

プロローグ ②

ゆっくりと目を開ける


いつも朝起きる時のように


「あ、目、覚ました」


金髪の男の子がわたしをのぞき込んで、目が合う。


「母上―!ツィーア、目を覚ましたー!」


後ろを振り返り、そう叫ぶ。


(ツィーア? 誰?)


起き上がろうとすると


「あ、まだ寝てろよ!母上が今来るからさ」


心配そうに男の子がこちらを見て、わたしの手を握る。


(あれ?)


頭がまだ動かないけど、なんだか引っ掛かりを覚える。でも、それが何なのか分からなくて


(ここ、どこだろう?)


横になったままで目を動かすけど、木と石で造られたっぽい建物。微かに木の匂いもするし、たぶん木でできた長椅子に寝かされてる。


(なんだか、幼稚園の時に行ってた教会を思い出すな)


キリスト教の幼稚園に通っていて、隣には教会もあって、そこで歌の発表会や卒園式をしたことを思い出す。


その教会と同じような雰囲気の建物。


「具合はどう?ツィーア?」


まただ。ツィーアって、誰?


男の子に手を引かれ、お母さん?髪の色は茶色だけど、男の子とよく似た面差しの女性がやって来た。

おでこに手をのせられ、少し冷たい手が気持ちいい。


「熱はないようね。起きれそう?」


身体を支えられ、上半身を起こす。


(あれ?)


軽々と支えられて起き上がった時に見えた手が、とても小さくて子供みたいで。


(身体が、小さい?)


両手をとじて、開いて。


(わたしの、手?)


色もお人形さんみたいに白くて


「どこかおかしいの?」

「えっと、・・・・・大丈夫」


女性が心配そうに尋ねるから、反射的にそう答えた。


でも、声も幼くて、わたしの声じゃなくて


「そう?もう少し神官さまとお話があるから、ここにいてね」


そう言って、少し離れた所にいるスーツ姿の男性と、神父さまっぽい服を着た人のところへ行ってしまう。


「ツィーア、なんだかぼーっとしてるけど、ほんとに大丈夫か?」


男の子が、また手を握ってくれる。


よく見ると、左右の瞳の色が違う?青い色だけど、片方は少し色が薄くて水色だ。


「えっと・・・・」


状況が分からなくて、口ごもると


「魔力検査してるときに、倒れたんだよ。なんか、すっごく光ったって?それでぴっくりして倒れたって、神官さま言ってた」

「そう・・・なんだ」


何のことか全然分からなくて、首をかしげる。さらっと髪が流れて、触ってみると白っぽい金色で。


(わたしの・・・・・髪?)


「なー。ほんとに大丈夫か?」


男の子が更に顔を近づけて、わたしをのぞき込む。


「どうかなさいましたか?」


初老の白髪の男性がやってきて、男の子に尋ねる。


「神官さま!ツィーアの様子おかしい!ぼーっとしてるし、なんかへん!」

「ああ。心配いりませんよ。初めての魔力検査の後は、ぼんやりすることが多いのです。アルツィードさまも覚えてはいらっしゃらないでしょうが、こんな風になってらっしゃいましたよ」


しゃがんで男の子と視線を合わせて、安心させるように笑いかける。わたしにも優しく笑いかけながら


「喉が渇いたでしょう?どうぞ、お飲みください」


木で作ったコップを差し出す。受け取ると、かすかに柑橘系の香りがして、ゆっくり一口飲んでみると、少し冷たくて味もレモン水みたいで飲みやすい。


こぼさないようにしっかりコップを持って、ゆっくり飲み干す。


「ありがとう、ございます。・・・・神官さま」


わたしがどこか不安そうに見えたのだろう、目線を合わせて安心させるように笑いながらコップを受け取ってくれた。


「ご両親の所に行かれますか?」

「え・・・・・っと」

「にいさまと行くか?」


(にいさま・・・?この男の子が・・・?)


「・・・うん」


少し高い椅子から降りるときには、神官さまが手伝ってくれて、男の子・・・・・お兄さまから差し出された手を握って、引っ張られながらさっきの女性のいる所へ行く。


「――――――です」

「ですが、――――――など」

「もちろん、――――――でも良いと思いますが・・・・」


近づくにつれて、大人たちの難しい顔と深刻そうな雰囲気が伝わってくる。


話の邪魔にならいようにと、少し離れた所で立って待つ。


手を繋いだお兄さまも一緒で


さっき、「母上」と呼ばれていた女性がこちらに視線を向ける。

その隣で女性の肩を抱いているスーツ姿の男性が、たぶん父親。


「今後のことを考えると、3年後に探すよりも今からの方が。猶予があるのとないのでは、身の振り方が変わってきます」

「ですが・・・・・」


女性(母親?)が声を詰まらせ、男性(父親?)が慰める。


「レザ神官は、どなたが良いと思われますか?」

「・・・・・ラドリスト辺境伯家はどうでしょう?幸い、夫人の父君は辺境伯家の血族です」

「・・・・・ですが、養女にだすなんて・・・」


よう・・・・じょ・・・?


「まだ、決める必要はありません。万が一を考えて視野に入れておく。ただ、それだけのことです」


レザ神官と呼ばれた人が、女性(母親?)に優しく諭すように言い、わたしの方を見る。


おもわず繋いだ手を離して、男の子(お兄さま)の腰のあたりに、ぎゅーっとしがみつく。


なぜだろう?どこか、同情?憐み?可哀そうな子を見るみたいで、落ち着かない。


「いずれにしろ、夫人の父君へ相談されては如何でしょう」

「わかりました。ご助言ありがとうございます」


男性(父親?)が頷く。


頭はなんだかぼーっとしていたけれど、一つだけ理解できた。


この子(わたし)は何処かへ行かされるの?


男の子(お兄さま)へぎゅーっと力いっぱい抱きつく。


男の子(お兄さま)もわたしの身体に手を回して、両手でぎゅっと掴んでくれる。


なんでわたし、ここにいるの?


なんでわたし、よそに出されるの?


それより、この子(わたし)はだれ?


分からないことだらけで、頭がぐるぐるになって


ずっと男の子(お兄さま)にしがみついていた。








ゆっくりと瞼をあける


懐かしい夢


まだ寝起きでぼーっとしていて、だからこそ余計にあの日のことを思い出す。


あの時の女の子(シスツィーア)になって、初めての記憶。


5歳の魔力検査の日。


魔力検査用の宝珠に触って気を失ったわたしは、目が覚めた時には『篠崎 優愛』と言う、こことは別世界の15歳の少女の記憶があった。


『優愛』は原因不明の病気で入院していたから、たぶんそのまま死んだんだと思う。


だから転生して(生まれ変わって)、この世界で『シスツィーア』になって、魔力検査の時に『優愛』の記憶が蘇った。


と勝手に思ってる。



だって、あの時からずっと、シスツィーア(この身体)で生きてるんだから



最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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