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はじまりの物語  作者: はあや
本編
166/431

レザ司祭と侯爵

シグルドたちとの話し合いも一段落したあと


まだ話し合うシグルドたちへ、レザ司祭は暇を告げて部屋を出る。


神殿へ帰ろうと、城の出入り口へ向かう途中で


「レイザード!」


レザ司祭は、良く知った声に呼び止められた。


(また面倒な)


内心の不快さを押し込め、いつものように穏やかな顔で振り返る。


「お久しぶりですね、レザ侯爵」

「貴様!さっきはどういうことだ!?」

「どういうこと・・・とは?」

「ふざけるな!」


半ば引きずられるように、レザ司祭は王城の一室に連れ込まれ、兄でありオルレンの父でもあるレザ侯爵と向き合う。


「我が家がレオリード殿下を推しているのは知っていよう!それなのに、アランディール殿下を推すなど、裏切りではないか!」

「お言葉ですが、私は神職へ入った際に「これよりは女神の使徒として生きる」そう、誓ったのですよ?」


神職へ入る際の誓いの儀式で、「世俗には惑わされず、女神の使徒として殉ずる」そう宣誓した。

その場には、まだ存命だった父母とこの兄も立ち会っている。


「ご存じですよね」


そう言われて、言葉に詰まるレザ侯爵だが、すぐに態勢を立て直す。


「オルレンがレオリード殿下の、側近として働いているのは知っていよう!貴様には肉親の情はないのか!?」

「ありますよ?ですから、彼の眼の治療には一役買いました。お忘れですか?」


うぐっ。と表現できそうなほど、怒りながらも口ごもるレザ侯爵。あのとき、治癒が終わった後に事の次第を知ったレザ侯爵は、「勝手なことをしおって!」と、オルレンやレザ司祭へ怒り狂い、


「あのときに、たしかレザ侯爵は「勝手なことをしおって!今後一切、我が家とは関わるな!」そう、私へ仰っていませんでしたか?」


にこやかに笑顔向けるレザ司祭へ、侯爵は口をパクパクとして顔はどす黒くしている。


「それよりも、こんなところで私に構っていて大丈夫でしょうか?」

「なに!?」

「先ほど、陛下も仰ったではありませんか。アランディール殿下を見極めると。今後の身の振り方を考えなくても、良いのですか?」


心配する素振りを見せて言うと、訝しげだったレザ侯爵の顔が、だんだんと青くなって


「なにをお考えかは存じませんが、先代のレザ侯爵が仰ったように貴方も「すべて国王に従う」そうしていれば、よかったのですよ」

「・・・・・っ!うるさい!貴様に何が分かる!!」

「ええ。私には何もわかりません。ですから、私は女神に従います」


そう言って恭しく礼をし、レザ司祭は部屋を出た。





(・・・・・無駄なことを)


城を出て、神殿へ続く道を歩きながら、レザ司祭は兄への苛立ちを募らせていた。


レオリードを次期国王に。


それはレザ侯爵にレオリードと同じ年の息子(オルレン)が生まれてから、言いはじめたことだった。


昔からレザ侯爵()は、自分に自信がなかった。


同じ両親を持つのに、自分より優秀なレザ司祭()


いつからか父は弟に侯爵家を継がせるつもりだと、そんな妄想に取りつかれてレザ司祭を疎み、神職へと入れて


自身の立場を、次期「レザ侯爵」の座を守ろうとした


(・・・・その次は、次期国王の側近の父ですか。相変わらずの権力志向ですね)


自身にその器がないと、分かっているだけマシだが、それでも息子に権力を握らせて「権力者の父」として、貴族からの羨望を集めたいのか


派閥の重心になろうと、少しでも存在を知らしめたいとする侯爵のその姿は、司祭にとっては滑稽以外の何ものでもなかった。


(まあ・・・私に害がないなら、どうでもいいが)


レザ司祭を煩わせることがなければ、今さらレザ侯爵()が何をしようと興味はない。


ただ、生まれ育った家が没落するのだけは、今後の教団での立場を考えると遠慮したい。


それだけだ。


それにどれだけ権力を持とうとも、所詮は井の中の蛙。


王家に、王族に成り代わることができるわけではない。


(知らないと言うのは、幸せですね)


先代レザ侯爵()からは教えられなかったのか、それとも教わっても理解できなかったのか


いずれにしても、次期侯爵(オルレン)に期待するしかない


そうすれば、少しはやりやすくなるだろうと


ため息を吐きながら、神殿へ帰った。








最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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