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はじまりの物語  作者: はあや
本編
148/431

開いた扉

「・・・あ」

「どうかしたか?」

「・・・いや、失敗した・・・」


執務室で書類を書いていたレオリードは、ペンが上手く動かずに紙に引っかかって文字が歪んで


「書き直しかな」


ため息を吐きながら苦笑いをして、レオリードは書類を横にやる。キアルがその書類へ視線を走らせて


「んー。こんくらいなら、大丈夫じゃないか?にしても珍しいな」

「ああ。少し気がそれた。オルレン、新しいものはあるか?」

「すぐにご用意いたします」


オルレンはすぐに立ち上がり、新しい紙をレオリードへ手渡す。


「ありがとう」

「・・・少し、休憩なさいませんか?ずいぶんと根を詰めていらっしゃいますし」

「いいな!ちょっと疲れたし、茶飲もうぜ」


ここ最近のレオリードは、いつにも増して公務に邁進していて、側で見ているオルレンは、無理をしているようにも見えて心配だった。

それを察してか、オルレンの提案にすぐにキアルが賛成して、んーっと伸びをしながらさっさとソファーへ座る。


「そうだな。オルレン、頼めるか?」

「お待ちください」


キアルの様子に苦笑しながらレオリードも頷き、オルレンはお茶の用意を始める。


いつもなら、午前のお茶の時間には甘味を用意しないのだが、レオリードへ少しでも気持ちを和らげて欲しいと、オルレンは用意しておいたクッキーを添えて、テーブルへお茶と一緒に並べて


「ありがとう」


レオリードがクッキーへ手を伸ばしたのを見て、キアルもクッキーを口に放り込む。


「アランたちがいないと、静かだなー」


深くソファーへ腰かけて、キアルがのんびりと口にする。


アランに執務室が与えられて、そちらで過ごす時間が多くなると、キアルたちの負担は減ったけれど、なんだか静かで。

もともと賑やかなのが好きなキアルとしては、お茶の時間くらいたまには一緒にしたいと思うが、なかなかタイミングも合わずにいた。


「そうだな・・・」

「今日は神殿だっけ?レザ司祭が案内してくれるんだろ?」

「そうらしいですね。リドファルド神官も一緒だと思いますよ」

「あー。あのふたり、仲良いもんなー」


キアルもレザ司祭とリド神官とは、毎年行われる王家の『建国の儀式』で来るので顔見知りだ。


「せっかくなら、オレたちも行けばよかったかな。なあ、レオン?」

「そうだな・・・」


レオリードはキアルへ返事をするもの、どこか上の空でぼおっと窓の外を見ていて


「レオリード殿下?すこしお疲れではありませんか?」

「そう・・・か?」

「最近、なんだかんだで休んでないもんなー。明日は一日休みにしようぜ」


再開された公務に学園生活に生徒会。レオリードはここ一週間ゆっくりと休んだ記憶もなく、もちろんそれはキアルとオルレンも同じだが、負担はレオリードが一番大きい。


「・・・そうだな。来週も忙しくなる。明日は休みにしよう」







「・・・あい・・・た」


アランの言葉に続いて、シスツィーアも呟く。


「ええ。本当に開くとは」


レザ司祭もまさか開くとは思わずに、珍しく呆然としている。


「・・・入ってみても良い?」


アランの言葉に、レザ司祭も躊躇いながら頷く。


「ええ。開いたと言うことは、殿下にはこの部屋に入る資格があると言うこと。どうぞお入りください」

「うん。ツィーアも行こう」

「え?でも・・・・」


アランから手を差し伸べられ、シスツィーアは躊躇う。


「いいから」


ぐいっと手を掴まれて、反論する間もなくさっさとアランは回廊へと進む。


「おっ!お待ちください!」


ロイたちが慌てて警護のためにアランを追うけれど、


ギ・・・ギギ・・・・・・


ロイたちの行く手を阻むように、扉が動いて


「お止めなさい。あなた方が入ろうとしても、扉が閉じますよ」


レザ司祭の言葉にロイたちの足が止まる。

中に入ることができないのなら、せめて見える範囲にはいて欲しい。


そう判断して、アランたちのあとを目で追う。幸い、回廊もその先の部屋も見通しがよく、ロイたちからふたりの様子は見える。


いつになく真剣な顔をして、ロイはアランたちを、ラルドは周囲を警戒する。


「・・・教主へお伝えしてきます」


レザ司祭にだけ聞こえるように、そっとリド神官が言う。それにレザ司祭も微かに頷くと、すぐにリド神官はその場を離れて・・・


(『女神の祝福』は、どちらに与えられたのでしょうね)


心のなかで、レザ司祭は独り言ちた



最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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