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はじまりの物語  作者: はあや
本編
13/431

招待状

シスツィーアが医務室で目覚めたのは、日が暮れた後のこと。


慌てて失礼しようとすると


「もう外は暗いから送っていいってあげよう」


様子を見に来た父親アルバートくらいの年代の男性に言われ、送ってもらうことになった。


馬車に乗せてもらって家に帰り着くと、アルデス子爵からは


「城でこんな失態をおかすとは、情けない」


そうお小言を言われ、夫人からは何も言われない代わりにため息をつかれた。


「大丈夫?今日はもう休みなさい」


とリューミラだけがシスツィーアを気遣うが、明日参加するメイド希望者の見学会に障りがないか気にしていた。





「いったい何なの?昨日のアレは」


翌日、シスツィーアは朝からまだ身体が怠く、ずっとベッドで横になっていた。


思うように身体が動かせないし、なんとなくまだ痛い気がする。


(それに、彼は一体何者なの?)


昨日の見学会に来ていた学生に、あんな人はいなかった。


なにより、ぼんやりしか覚えてないが、城に来るにしては軽装だったと思う。


そんなことを考えながら、うとうとしていたら


「シスツィーア、王宮から死者の方がお見えよ。すぐに支度して降りてきなさい」


と、夫人が呼びに来た。


できる限り急いで支度して応接室へ入ると、夫人からは「急ぎなさいと言ったはずよ」

そんな非難めいた視線が来る。


「申し訳ありません。お待たせ致しました」

「急に伺ったのはこちらです。お気になさらずに」


ソファーへ座る使者の方へ礼をし、顔を上げると、昨日シスツィーアを送ってくれた男性だった。


「体調は如何ですか?」


と優しく微笑みながら、シスツィーアを気遣う。


見知った人が使者であったことに、すこしだけほっとして、シスツィーアも笑顔を見せる。


「ありがとうございます。念の為に休んでいただけですから」

「それはよかった。本日は、第二王子の命で参りました。殿下は昨日、シスツィーア嬢が倒れたのは、急に自分が声を掛けて驚かせたからだ。といたく心配され、お詫びに王宮でのお茶会にご招待したいと仰せです」


(第二王子!?昨日の人が!?)


昨日の男性が王子であることも驚きだが、社交界デビューすらしていない下位貴族の自分に王族からの招待状が来るとは思わず、シスツィーアは驚きのあまり言葉を失う。


「招待状です」と手渡された封筒を開ける手も震えていて、なんとか落とさないように読むと、三日後を指定してあった。


できればお断りできないかと、やんわりと申し出る。


「第二王子殿下のお気遣いにお礼申し上げます。わたしこそ御前で失礼いたしました。なのに、お茶会だなんて申し訳なくて・・・・・」

「殿下は病弱で学園にも通われていませんから、知り合いも少なく、ぜひ招待を受けて欲しい。そう仰せです」

「・・・・・わかりました。ご招待いただき光栄です。三日後、お伺いいたします。とお伝えください」

「畏まりました。では、お茶会の2時間前にお迎えに参ります」

「ありがとうございます。お待ちしております」


外の馬車まで使者を見送ったあと、部屋へ戻って改めて招待状を見る。


上品なオフホワイトの便せんに、綺麗な文字で書かれた招待状。


わざとなのか流儀なのか、招待主の名前は書かれておらず、代わりに蝋で封をしたあとに押されるのはこの国の紋章。


王族しか使えないそれは、まぎれもなく王族からの招待状であることを示していた。


(断ることはできないわね)


使者の方との会話中、夫人はずっと険しい目でシスツィーアを見ていた。


なぜレオリード殿下のお手伝いをしているリューミラじゃないのかと憤る気持ちと、どんな理由であれ「アルデス家の者が王族に招待された」その事実は光栄なことだと、無理やり自分を納得させる。そんな感情の入り混じったアルデス夫人の目。


きっとすぐに子爵へ報告するだろう。子爵からも何を言われるか分かったものではない。


使者はそんな夫人に気づくこともなく、穏やかな雰囲気のまま話を進めていた。もちろん、シスツィーアが招待を受けて当然としか思っていない。


青白い顔色の、瘦せ型の男性。


まさか王子とは思わなかったけど、お城なのに軽装でいてもおかしくないのは王族しかいない。


納得しながら招待状を引き出しにしまう。


レオリード殿下とは似ていない第二王子


(あまり、関わりたくないわ)


そっとため息をついて、再びベッドで横になった。



最後までご覧いただき、ありがとうございます

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