献血する若者が減少している、という話を聞いて
献血する若者が減った。
そういった話を聞いたとき、思い出すことがある。
それは自分が学生のころに会った、ひとりのクラスメートのことだ。
彼はすこし天然の入った、一風変わった生徒でもあった。
勉強も運動も不得意で、部活にもほとんど参加せず、気の合う仲間と(たまに自分もそこに加わっていたが)しゃべったり、買い物に出かけたり……。そんな──すこし不出来な生徒だった。
彼と話しているとき、彼が献血に行っていることを話したことがあった。そのときの話はあまり覚えていない。
確か──「献血カード」みたいな物を見せられたかもしれないが、とにかく彼は自主的に献血することがよくあるのだと言っていた。
わたしもほかの同級生たちも、献血に行くだなんてばかばかしいことだと笑っていたと思う。
はっきり言うと当時のわたしは、どこにでもいる愚かな学生のひとりにすぎなかったし、想像力も思考力も未熟な、残念な若者のひとりだった。
この話を思い出し、いまのわたしは当時のことを思い浮かべながら、彼のことを見直した。
むかしの、学生時代の自分がなんと言ったかは覚えていないが、きっとほかの同級生と同じく、「そんなことをするなんてバカだなぁ」くらいのことしか言わなかっただろう。
だがいまのわたしだったら、ちょっとおバカでおまぬけなところもあった彼を、手放しで褒めただろう。
彼は「献血のあとはジュースがもらえるんだ」なんてことを言って笑っていたが、その言葉すらもいまでは謙遜に思える。
「自分は社会貢献したくて献血に参加するんだ」
そんな考えは微塵も見せずに、何度も献血に行っていたおとなしい彼。
自主的に献血という奉仕活動に参加していた彼。
思い出の中にある彼の姿は、あの弱々しい見た目とは違って、どこか頼もしいクラスメートとして思い出されるのだった。
目をとおしてくれて感謝します。
あなたのまわりにいる人に対してもわたしと同様に、「以前はこう思ってたけど、よくよく考えると……」といった心境の変化がおこるかもしれませんよ。