柔和と甘さ
壊れたアルミ缶がカタカタなれば
闇夜に響く振動音
古い冷蔵庫のコンプレッサー
正常でありながら
空間がそれを煩くする
全てが停電してくれたらいいのに
願いごと
願われごと
スイッチを切る時に
スイッチの感情になる奴は居ない
壊れかけたCDプレイヤーの中は
居酒屋で飲んだくれた人間と変わらず
指令と行動が合致しない
二曲目を聞きたくて
早送りボタンを押すのだが
十五曲目、十四曲目が
堂々と表示される
此方側が間違っているのかと
困惑しながら確認するが
間違えてはいない
今では、もう慣れてしまった
二段構えのウォシュレットは
停止ボタンで停止しない
本来の行動とは違う動きをしながら
水を排出する
尻に二回も水がかかる
使い始めて十何年か経つ
今では
ちょっとした愛嬌となっている
ルールが違うだけで
ただ待てば良いのだ
便座もしっかり温かい
誰を主軸にするかで違うが
大きなルールが変わった訳ではない
タイヤの擦れる音がして
雑音の無い
でも静寂では無い
一定の間があった後に
誰もが振り向くだろう
大きな音がした
幸いにも単独事故である
運転手は直ぐに降りてきて
離れた場所で電話をしていた
ちゃんとした人だが
心配ではあるので
しばらく眺めていた
警察が来ると交代をする
元気に動けていたようだから
それで良かった
ブレーキ云々の会話が
微かに聞こえてきた
人間の方のブレーキは
大丈夫だと思った