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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第4章 ロヴァル騒動
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4-1 公国の姫君

第4章では他キャラ視点が多くなりますので予めご了承願います。

 

 ほっそりとした体形をした若い女性が、金色の髪の毛を靡かせながら急ぎ足で歩いていた。


 彼女の後ろには護衛の騎士が付かず離れずの絶妙な距離を保って追いかけていることから、彼女が高貴な存在だという事は一目瞭然だった。


 彼女はロヴァル公国の次期大公である、この国の第一公女ジュビエーヌだ。


 齢17歳となる彼女が向かっている先は、彼女の御祖母様にあたるソフィア・ララ・サン・ロヴァルが終の棲家としている離宮で、当番兵から御祖母様が倒れたと報告があったためだ。


 公国では、ソフィア・ララ・サン・ロヴァルが第31代大公に即位してから一度も結婚せず大公職を務めてきたが、それでも80歳になると流石に周りも焦り出し、始祖の血を引くオルランディ公爵家からラヴィニア・ビーチェ・オルランディを養女に迎え大公職を譲っていた。


 第32代大公となったラヴィニアは、アメーリア公爵家からエドゥアル・ピネー・アメーリアを王配に迎え、長女ジュビエーヌと長男クレメントを産んだ。


 だが、ラヴィニアはクレメントを産むと産後に肥立ちが悪く急逝してしまい、それからはソフィア・ララ・サン・ロヴァルが大公に復帰していた。


 そしてソフィア・ララ・サン・ロヴァルは、次期大公を誰にするのかという議論の中、始祖の血を引くアメーリア家が強く押すカッサンドラを退けてジュビエーヌを次期大公に指名すると、2年前に彼女の父親に大公職を押しつけて引退していた。


 引退したと言ってもその存在感は大きく、国内の貴族の仲裁や他国の牽制も行えるソフィアの健康状態は、この国にとっては重大事項になっていた。


 そのソフィア・ララ・サン・ロヴァルが倒れたという報告を受けたジュビエーヌは、大急ぎで離宮にやって来たのだ。


 離宮にやってくると、そこには御祖母様のお世話をしている侍女長が待っていた。


「エルメリンダ、御祖母様の容態はどうなの?」


 侍女長は何も言わずに首を横に振ったので、相当悪いという事が分かった。


 御祖母様は彼女の強力な後ろ盾であり、赤色魔法を使えるその魔力は他国からも恐れられているのだ。


 それに引き換えジュビエーヌは、最悪の魔女の呪いで魔法が使えなかった。


 もし御祖母様が亡くなり、何もできないちっぽけな自分が取り残されたらと思うと不安で堪らなかった。



 ===7年前===

 ロヴァル公国の第1公女である私は、10歳の誕生日を迎えると御祖母様に呼ばれて離宮の地下にある訓練場に来ていた。


 訓練場の外壁は石で組み上げられておりとても頑丈な作りになっていて、その先には標的のような丸い目標物が設置してあった。


 そしてそこには既に侍女長のエルメリンダが待っていて、手には防具を持っていた。


「ジュビエーヌ様、お待ちしておりました。早速ですがこの防具を付けて貰います」


 そう言うと私にその防具を装着させていると、御祖母様が訓練場にやって来たのだ。


「御祖母様、これから何をするのですか?」

「ジュビエーヌ、今日で10歳になりましたね。おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

「今日は貴女に、あの的に向けて炎弾粒を撃ってもらいます」


 炎弾粒は藍色魔法だ。


 ジュビエーヌは既に青色魔法である火炎弾を使う事が出来るのに、何故そんな弱い魔法を試すのか分からなかった。


 でもそれが御祖母様の指示なのだからと、素直に実行したのだ。


 だが、目の前に藍色の魔法陣が現れ炎弾粒が飛び出すと、途端に目の前が真っ赤になり体に痛みが走った。


「きゃああああ」


 思わず悲鳴を上げていた。


 体中から炎が上がったように熱くなっていたが、直ぐに冷たくなった。


 一体何が起こったのか分からなかった。私はそのまま気を失った。


 目覚めるとそこはベッドの中で、傍にはエルメリンダがじっと私の様子を窺っていた。


「ジュビエーヌ様、気分はいかがですか?」

「少し頭が痛いけれど、大丈夫よ。それよりも何が起こったの?」

「それは主様からお聞きください」


 私はベッドから起き上がるとエルメリンダに着替えをさせてもらい、御祖母様が待っている部屋に入って行った。


 御祖母様は少し疲れたような顔をして待っていた。


「ああ、ジュビエーヌ、怪我は治っていると思うけど、大丈夫かしら?」

「ええ、大丈夫です。それよりも何が起こったのか教えて欲しいです」

「そうね、分かったわ」


 私は御祖母様が話すことをじっと聞いていた。


 まず話してくれたのは、7百年前の公国の始祖である大魔法使いロヴァルについてだった。


 最悪の魔女を討伐し生き残った4人の騎士達は、魔女討伐の証としてそれぞれ魔女が身に付けていたというマジック・アイテムを持ち帰ったのだ。


 我が公国の始祖である大魔法使いロヴァルが持ってきたのは「魔力操作のサークレット」と呼ばれる品で、それを装備していると直線的にしか飛ばない魔法弾を自由自在に操れるという代物だった。


 だが、そのマジック・アイテムはバンダールシア大帝国が崩壊する過程で喪失しており、今は文献でしかそれがどういった物だったのかを知るすべが無かった。


 問題はそのマジック・アイテムが呪われていたという事だった。


 大魔法使いロヴァルは、その呪いにより魔法を放つとその魔法が自分自身に襲い掛かって来るという事実に衝撃を受けたようだ。


 慌てて呪われていたマジック・アイテムを探し出そうとしたのだが、既に何処に行ったのか全く行方が掴めなかったらしい。


 ロヴァル公国では、高い魔力を内包する直系の女性が大公を継ぐことになっているのは、ロヴァルの血を受け継いだ男性がその呪いによって全く魔力を持たないからだとされていた。


 だが、最悪の魔女の呪いは高い魔力を持つロヴァルの子孫が10歳になると発現するもので、だからジュビエーヌも10歳の誕生日のこの日、その呪いが発現したのかどうかを調べられたのだ。


 先程放った炎弾粒は、そのまま私に返ってきたらしい。


 今分かる事は、私は今後二度と魔法が使えないという事だ。


 そこで疑問になるのが百年前、バルギット等3ヶ国がこの国に攻め込んできた時、御祖母様が赤色魔法を使ったという事実だ。


 その疑問をぶつけると御祖母様はアオイというエルフの友人が居て、その友人が百年前、御祖母様に代わり赤色魔法を放ったそうだ。


 だが、そのエルフの友人はその反動で「獅子の慟哭」というマジック・アイテムの中に吸い込まれてしまったそうだ。

 =========


 離宮の寝室では御祖母様が静かに眠っていた。


 ジュビエーヌはベッドの側らにある椅子に座り御祖母様の手をそっと握ると、御祖母様の瞳が開いた。


「ジュビエーヌ、貴女なの?」

「はい、御祖母様、早く元気になってください。御祖母様に居て貰えないと私不安で堪りません」


 私がそう言うと、御祖母様は私の事を見つめながら優しく頭を撫でてくれた。


「これからは貴女がこの国を率いて行くのですよ」

「私にその力があるのでしょうか?」

「大丈夫です。貴方なら立派な大公になれます」

「でも・・・」


 私は不安で涙が出てきたが、御祖母様は優しく指で拭ってくれた。


「貴女に良い事を教えましょう」

「何ですか?」

「私にアオイが居たように貴女にもユニスが居るわ。困った時は彼女を頼るのよ」

「そのユニスと言う方もエルフなのですか?」

「そうよ」

「何処に居るのですか?」


 その時、彼女の弟であるクレメントと父親が寝室に入って来たので、それ以上尋ねる事が出来なくなってしまった。


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