表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第3章 封鎖された町
75/416

3-24 ゴーレム戦

 

 パルラの町に逃げ込んできた人達は、この町に居る死を偽装した従業員達の家族だった。


 丁度北門に向かったオーバンの知らせでウジェ達が町中に避難してきたので、逃げ込んできた人達を家族がいる七色の孔雀亭に案内させた。


 そして南門前の戦況を把握するため城壁に飛び上がると、そこで2列横隊を作った味方ゴーレムとあのさそりもどきが対峙している場面が目に飛び込んできた。


 しかもサソリもどきは、味方ゴーレムに向けて黄色魔法を放とうとしているのだ。


 なんでゴーレムが魔法を使えるのかと言う疑問はとりあえず置いといて、危機に直面しているゴーレム達を何とかしなければならなかった。


 俺はメガホンを手に取ると、ゴーレム達に命令を伝えた。


「散開」


 ゴーレム達はその命令を受けて蜘蛛の子を散らすようにあちこちにばらけだしたが、十分に避難する前に魔法の詠唱が終わってしまったようだ。


 黄色の魔法陣から現れた眩しい閃光で一瞬目が眩むと、何本もの光の矢が飛びゴーレム達に命中していった。


 列の中央に居て逃げ遅れた第3班10体はその直撃を受けて完全に崩壊し、第3班の両側の2班と4班でも被害が出ていた。


 サソリもどきの後ろにいた辺境伯軍は、その光景を見て歓声を上げていた。


 損傷を受けたゴーレムは、地面の土を材料に魔宝石の魔力で自動修復を始めていた。


 あれを城壁に近づけさせるのは非常に拙いので、前進を阻むための命令を発した。


「第4班、スクラムを組んで敵ゴーレムの前進を阻め、第1は右、第5は左から敵ゴーレムの足を破壊せよ、第2班は第4班の支援砲撃を行え」


 ゴーレム達はその命令に従い第4班は4、3、2、1のラグビーのスクラムのような陣形を組むと、敵ゴーレムの正面からぶつかり前進を阻んだ。


 第4班がサソリもどきと力比べを始めると、すかさず第1と第5班が左右から襲い掛かりその太い腕でサソリもどきの短い足を殴りつけていた。


 サソリもどきの足は8本もあるので、1本あたり2、3体での攻撃だ。


 前進を阻まれたサソリもどきは、2本の前足でスクラムを組むゴーレム達の背中にその巨大なハサミで攻撃するが、直ぐに第2班が順次2百発の石礫をサソリの目を狙って撃ち込むと敵ゴーレムの攻撃の精度が落ちていた。


 40体のゴーレムに纏わりつかれ劣勢となったサソリもどきに、加勢しようと敵の騎馬兵が駆けつけてきた。


 騎馬兵がサソリもどきの足を攻撃しているゴーレム達に向かうと、それを阻止すべく第1と第5班のゴーレムに2体に騎馬兵に向けて胸の扉を開き威嚇すると、慌てて逃げて行った。


 その時敵軍の中から大きな矢が飛んでくると、威嚇していたゴーレムの胸に突き刺さった。


 動力源である魔宝石を砕かれたゴーレムは、崩壊し砂に変わっていた。


 何が起こったのか確かめると、そこには今まで気が付かなかったバリスタがいた。


 どうやら迷彩を施した布を被せて、最初の一撃を放つまで隠していたようだ。


 そのバリスタは台車の上に載っており、しかも2頭の馬で引かれていて攻撃した後は発射地点から素早く移動していた。


 それは前回の攻防戦の時、動かないバリスタをスリングショットで狙い撃ちした事への対策のようだ。


 その姿は、さしずめ火砲に機動性を持たせた現代の自走砲だ。


 確かにあれだと、城壁の上からスリングショットで狙う事は難しいだろう。


 だが、それなら近寄ればいいだけだ。


 俺は城壁の上から飛び上がると、そのまま辺境伯軍の上空まで飛行魔法で飛んでいった。


 地上では兵士達がこちらを見上げては何やら叫ぶと、弓兵が出てきてこちらに矢を射かけてきた。


 今は的にならないように蝶の翅は具現化していないので、小さく動き回る目標に矢を射かけるのは相当難しいだろう。


 上空から見る辺境伯軍は、前回とは明らかに違い騎馬兵が多く鈍重な重装歩兵は連れて来ていないようだ。


 その編成は機動性重視となっており、明らかに戦略を変えてきていた。


 辺境伯は性格はあれだが、攻城用ゴーレムといい自走バリスタといいなかなか良い軍事センスを持っているようだ。


 2台のバリスタは仰角の問題で上空に居る俺には矢を撃てないようで、俺が接近すると馬に引かれて右に左にと逃げ回り、こちらが狙いを定められないようにしていた。


 だが、上空からだと狙い撃ちするのは簡単なのだ。


 俺の前に青色の魔法陣が現れると、魔法陣から「石弾」が飛び出し眼下のバリスタに目掛けて落下していくと、被弾したバリスタから破片が飛び散った。


 敵陣から「魔法で攻撃してくるぞ」と叫ぶ声が聞えてきた。


 そこで一瞬考えると前回攻められた時、魔法で攻撃していない事を思い出した。


 どうやら敵軍は前回使った催涙弾やグレネードの対策はしたが、魔法攻撃は考慮していなかったようだ。


 そしてもう1台の方に向かいそこで「石弾」を撃つと、バリスタの周りに居た兵士達がフラムという魔法の盾を展開して防いでいた。


 直ぐに対策を打ってくるのは、流石は正規軍といったところか。


 だがフラムには、同じ威力の魔力をぶつけると対消滅するという弱点があった。


 直ぐに緑色魔法に切り替えてフラムを消滅させると、防御手段を失ったバリスタを破壊した。


 バリスタを始末してサソリもどきの方に注意を向けると、そこではサソリもどきとゴーレム達の戦闘が続いていた。


 力比べをしている第4班は、前足の攻撃でかなり損傷しているがしっかり持ちこたえていた。


 それには敵の攻撃を石礫の連続発射で敵の目を眩ませている第2班の支援攻撃も、功を奏しているようだ。


 おかげで第4班は、魔宝石が砕かれるような直撃は回避出来ているようだ。


 そして足を破壊する作業をしている第1班と第5班は、大きな両腕を振り回して殴りつけてはお互いの体を構成する岩が砕け破片が飛び散っていた。


 味方ゴーレム達は、自身の体が崩れると交代して自動修復を行いながら再び戦闘に参加していた。


 サソリもどきの足は短く胴体から横に突き出して関節部分から直角に曲がり体を支える構造になっていて、味方ゴーレムはその関節部分を殴って壊そうとしていた。


 ゴーレムが繰り返し殴りつけると、サソリもどきの自動修復が追い付かなくなり徐々に亀裂が大きくなっているようだった。


 元々サソリもどきは攻城用の兵器のようで、対ゴーレム戦をあまり想定していないのか敵からの攻撃は序盤での黄色魔法の他は前足での攻撃くらいだった。


 もしかしたら最初の黄色魔法で、こちらのゴーレムを一掃するつもりだったのだろうか?


 そして繰り返し攻撃している足の一部が折れる音が聞こえてくると、サソリもどきが大きく右側に傾き前進する力が落ちたようだ。


 すると押し合いに勝った第4班が一気に押し返し、サソリもどきの足から何かが壊れたような音が聞こえると、そのまま尻餅をついたのだ。


 それはまるで前進のギヤが入っているところで無理やり後進したため、歯車が壊れたような感じだった。


 そのチャンスを生かすためゴーレム達にその場から退避を命じると、サソリもどきの前に移動した。


 走行機能が壊れたサソリもどきの動きは止まっていたが、頭についている目でこちらを認識すると前足を大きく伸ばして俺を攻撃してきた。


 だが、距離が足らずそのハサミは俺まで届かなかった。


 そして先程味方ゴーレムを破壊されたお返しをすることにした。


 俺の前には体よりも大きな黄色の魔法陣が現れた。


「大瀑布」


 魔法陣から現れた大量の水をまともに受けたサソリもどきは、その圧倒的な水圧に抗えず押し流されていった。


 魔法の効果が消えた後には、ひっくり返り腹を上にしたサソリもどきの姿があった。


 その体は、あちこちにぶつけたか水圧で押し潰されたのか、至る所に罅割れが走っていた。


 そしてひっくり返った腹には、中に入るハッチがあった。


 どうやら中には乗組員が居るようだ。


 もしかしてサソリもどきは攻城用の機能の他に、兵員を輸送する機能もあるのかもしれない。


 城壁を破壊して中に入り、腹の中から兵士達がどっと現れる姿を想像してみた。


誤字報告ありがとうございます。評価、ブックマーク登録ありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ