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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第3章 封鎖された町
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3-17 先達との邂逅1

 

 オルランドが来た日の翌朝エルメリンダに手伝ってもらい町娘の姿に着替えたソフィアは、擬態の魔法で離宮に働きに来ている10代のメイドに化けるとエルメリンダを自分の身代わりにしてそっと部屋を抜け出した。


 通用口からそっと裏庭に出て日陰伝いに出口を目指すと、誰にも見つからずに離宮の裏門に辿り着いた。


 門には必ず門番が居るのだが、交代の時だけ隙ができるのだ。


 ソフィアはその事に気づいていたが、そのまま放置していた。


 それは仮に暗殺者が離宮に入ってきてもソフィアなら難なく対処できるし、こうやって何かあった時には気軽に抜け出せるので便利だからだ。


 そしてオルランド・ロザートが持って来た荷馬車を駐車させている場所までやってくると、指示どおり5台の荷馬車がロープで繋がっている事を確かめた。


 それから荷台を覗きエルメリンダに頼んでおいた物品が積まれている事を確かめると、荷馬車に重力制御魔法をかけて重量をほぼゼロにすると先頭の荷馬車を引いて上空に舞い上がった。



 ソフィアはパルラに向かいながら、ドーマー辺境伯がヴァルツホルム大森林地帯に隣接する場所に対魔物用の要塞を作ると言ってきた時の事を思い出していた。


 ソフィアがロヴァル公国の大公になってから、各領地の経済力に応じた負担金を徴収し対魔物用の軍事施設には支援金を出していたのだ。


 最初に疑念に感じたのはパルラ要塞の申請を許可した後で、エリアルで有名な宝石店や服飾店等にダラムへの出店を勧誘した時だった。


 ドーマー辺境伯の領都ダラムもそれなりに栄えた町ではあったが、公都の高級店を軒並み勧誘する程の購買力は無いはずなのだ。


 それが要塞が出来た頃から、国内外の有力貴族や裕福な商人が盛んにドーマー辺境伯領に訪問するようになり、その殆どがダラムの町に行くと行方不明になった。


 そして新たに買収した会社の従業員をダラムに異動させるという話を聞きつけ、その従業員を間者に勧誘したのだ。


 そしてフクロウと名付けた間者からの報告で、その要塞の実態が明らかになったのは最近の事だ。


 やがて前方にヴァルツホルム大森林地帯が見えてくると、その手前に円形の城壁に守られた町が見えてきた。


 上空から見るそれは、要塞などではなく明らかに町だった。


 ソフィアは町の中心にある広い空間にゆっくりと降りて行くと、傍にはその光景を眺めている複数の獣人が居た。


「貴方達、ユニスに会いたいのだけれど何処に居るのかしら?」


 ソフィアがそう声を掛けると一瞬驚いたようだった。


「えっと、貴女は誰ですか? この町の人間じゃないみたいですが?」

「私は・・・ララよ。運送会社の社員で、注文のあった食料を配達に来たのよ」

「ああ、そうだったのですか。それではご案内しましょう」


 +++++


 娼館に駆け込んできた猫獣人が、俺の姿を見つけると嬉しそうな顔になって近づいてきた。


「ユニス様、運送会社が食料を運んできましたよ」


 俺は一瞬何を言われたのか分からなかったが、そこでビアッジョ・アマディとパメラ・アリブランディに食料を求めた事を思い出し、どちらかの主が送ってくれたのだろうとピンと来た。


 娼館の入口で待っているとベインに案内された一人の若い女性が、5台の荷馬車を引っ張っている姿が見えた。


 そのあまりにもありえない光景に一瞬目を疑ったが、直ぐに重力制御魔法だと気が付いた。


 だが、その女性は魔法使いには見えず、ただの町娘にしか見えなかった。


「初めまして、私はララと言います。貴女がユニスさんね」

「はい、そうです」


 どうやらこの女性は俺の事を知っているらしい。


 警戒しながらその女性を観察してみることにした。


「ところでララさん、貴女は誰から指示されて食料を運んできたのですか?」


 すると目の前の女性は俺を指さした。


 え、俺からの指示だと言いたいのか?


「えっと、意味が分からないんだけど?」

「あら、貴女が食べ物が欲しいと言ってきたのでしょう? だから態々持ってきてあげたのよ。小麦にケチャップ、マヨネーズ、味噌や醤油それに米もあるわよ」


 え? ケチャップにマヨネーズ、それに味噌に醤油に米?


 まさか。


 俺は驚いて目を見開いた。


「その反応から見るに貴女日本人ね?」

「え? なんで分かったの?」


 思わず言葉が漏れてしまったが、この世界にはジゼルの他にも魔眼を持っている者が居るのだろうか?


 すると、その女性はとても可笑しそうに笑っていた。


「貴女、腹芸は全然駄目ね。あ、私も同じ日本人よ」


 そう言われてあの遺跡に転移した人間であの仕掛けに気付いた者が、俺以外に居てもおかしくない事に気が付いた。


 その事実に気が付くと目の前の女性がとても身近に感じてしまい、思わずお茶に誘っていたのだ。


 食堂でチェチーリアさんにお茶を用意してもらい、それを持ってララと名乗る女性を案内して娼館の1階にある応接室と呼ぶ元々は待合室だった部屋に入った。


 この部屋の中央には応接セットが置いてあり、娼館にやってきた客がメニュー表から相手を選べるようになっていたのだ。


 俺は奥の上席にララを誘うと、自分は手前の席でお茶をテーブルに置いて目の前の女性を観察した。


 見た目の年齢は10代前半と言ったところで、この世界では一般的な特徴である金髪に紫色の瞳をしていた。


 肌は白人にように白くきめも細かいようだ。


 着ている服はリーズ服飾店のルーチェ・ミナーリや、彩花宝飾店のマウラ・ピンツァが着ていた服と同じような物に見えた。


 そして最も知りたい事を聞いてみる事にした。


「貴女がこの世界に来てから、どの位経つのですか?」

「そうねえ。百とちょっとってところかしら」

「え、百? 百年? それって・・・」

「ああ、この世界も地球と殆ど同じよ。1年は360日ね」


 保護外装の外見が老化しないのは分かったが、すると中身は既に相当な年齢になるという事か。


 するとおばあちゃんと呼ぶべきか。


 俺がそんな事を考えているのを察したようで、顔を顰めて俺を睨らんできた。


「貴女、何か失礼な事考えているわね。念のため言っておくけど保護外装を纏っていると年を取らないのよ」


 驚きである。


 という事はこの世界は、御伽噺で言う所の浦島太郎が行った竜宮城なのか?


 すると、俺も地球に帰ったら今までの年齢が更新されて白髪の老人になるのか?


「この世界には乙姫様はいるのですか?」


 俺がそう言うと目の前の女性は驚いたように目を見開き、それから腹を抱えて笑いだした。


「ぶふふふっ、本当に日本人だったのね。そう言えば自己紹介がまだだったわね。私は考古学者の影島あおいよ」


 乙姫が分かるという事はこの女性の中身も日本人で間違いないようだが、影島あおいはあの隠し部屋に居る白骨死体なのだ。


 するとこの女は、他人の名前を騙る詐欺師か?


 それとも俺を試しているのか?


「ほう、そうかい。じゃあ、俺は政治家の聖徳太子だよ」


早い物で初投稿から半年が過ぎました。最近さぼり癖がついたようで気を引き締めて頑張りたいと思います。あ、評価、ブックマーク登録ありがとうございます。



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