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番外21 疑惑のミード3(BC)

 

 申請書類に記載した内容は、指示元が渡してきた完璧な書類であり、手数料もちゃんと貰ってきていた。


 何時もなら書類審査に問題は無く直ぐに受け付けてもらえるはずなのに、何故か今回は目の前の受付嬢にじっと顔を見つめてられているような気がしていた。


 そこで思い切って顔をあげると、目があった受付嬢がにっこり微笑んだ。


 こんな事があるのだろうか?


 この俺にもモテ期が来たのだろうかと勝手に盛り上がっていると、目の前の受付嬢は「失礼します」といって席を外した。


 それは今まででは無かった行動であり、俺は不安になった。


 俺に指示してきた男も、目立つような行動は絶対にするなと言われていたので、受付嬢が普段とは違った行動を取った事が気になり落ち着かなかったのだ。


 俺はこのまま逃げてしまおうかと思ったところで、受付嬢が戻って来た。


 どうやら商会設立の書類は正式に受理されたようだ。


 ふう、脅かしやがって。


 これは罰として今回の仕事料が入ったら食事にでも付き合ってもらわなければならないな。


 久しぶりに良い気分になった男は、商業ギルドを出るとせっかくだからと普段とは違う道をとおり女連れで入れる店を探すことにした。


 すると後ろから馬車が近づいてきたと思ったら、目の前に黄色の女の顔を見た途端、意識を失った。


 +++++


 商業ギルドからロザート商会に戻って来た俺達は、連絡が来るまでの間、偽造防止対策を考える事にした。


 偽物が作れないようにするには空き瓶をデポジットにして回収してみたらどうだろう?


 だが、購入するのは金持ちの貴族であり小銭欲しさに空き瓶を返してくるかといえば、自分達の誇りのためにも絶対そんな事はしないだろうと思われた。


 それに偽物を作るような連中なら、必要となれば瓶だって偽造するだろう。


 それなら開封済が分かるように栓と瓶を繋ぐラベルを作り、それを切らないと飲めないようにすればどうか?


 う~ん、考えたらきりが無いな。


 いやいや、不正を働く連中なら偽物のラベルだって作ってみせるか。


 希少性があって高価な商品だから、それくらい手間をかけてもペイしてしまうんだろうな。


 まずは出来る所からコツコツとやっていくか。


 そこで考えたのがミード酒を入れる化粧箱の方だった。


 この箱に封印の魔法を掛けて、購入時に箱の封印を解除する使い捨ての解除キーを渡すのだ。


 そしてこの案をジゼルとアレッシアに提案してみた。


「どう、これなら少しは偽造防止になると思う?」

「そうね、良い方法だと思うわよ」

「辺境伯様、これはなかなか賢いやり方かもしれません」


 この案は良さそうだったので、早速ロザート照会にある在庫に封印の魔法を掛けて行った。


 偽造防止対策を施した所で、突然俺の左手甲に蝶が現れた。


 俺がその翅に触れると通信文が現れた。


 そこには「例の奴が来た」と記載されていた。


 俺達は平民に見える恰好に着替えると、早速商業ギルドに向かった。


 商業ギルドの扉を開けると、俺達の姿に気付いた受付嬢が顎で指示した先には、1人の男が手続きをしていた。


 俺は受付嬢に了解の意味を込めて頷くと、少し離れた場所で男を観察した。


 男は、背が低く小太りで暗い茶色の髪で口髭と顎髭を生やして、顔の輪郭をぼかしていた。


 受付嬢は男から手数料を受け取りその金額を確かめると、商会設立の登録が完了したようだった。


 申請手続きを終えた男は満足そうな顔で入口に向かっていた。


 俺はその満足そうな顔をした男に、そう簡単に悪事は続かない事を教えてやる事にした。


 俺達が馬車に乗り込むと、御者台に座るグラファイトとインジウムに目的を告げた。


「グラファイト、インジウム、あの髭面の男を攫って馬車に乗せるのよ」

「分かりました」

「はあぃ」


 馬車がゆっくりと動き出すと、直ぐに男の近くまで接近すると一瞬インジウムの姿がぼやけると馬車の空いている場所に意識を失った男が座っていた。


 そして再び御者台から振り向くと俺に向けて親指を立てていた。


 うん、ご苦労さま。


「それでユニス、この男をロザート商会に連れて行くの?」

「いや、この場で必要な事を聞き出すのよ」


 俺は自白の魔法を掛けると、男の意識を取り戻した。


「お前の名前は?」


 男は自白魔法を掛けられた者特有の状態である、ぼんやりと意思の無い表情をしていた。


「エネーア・アランジです」

「お前が偽物のパルラ産エルフミードを売っているのか?」

「はい」

「偽ミードは何処で製造しているのだ?」

「分からない。俺は指示された場所で商品を受け取り、リストにある商人に商品を売るだけだ」


 こいつはただのトカゲのしっぽだったか。


「商品を受け取った後は?」

「指示された商人に商品を売り、代金は指定された場所に置いてくる。その時の指示書は取引完了後焼却する」


 証拠を残さないようにしているのか。


「代金の保管場所は都度変わるのか?」

「そうだ」

「それから?」

「商会を破産させる」


 裏に居る主犯格はかなり慎重な奴だな。


 なら、商品の方から追いかけるしかないか。


「商品を受け取るのは何時だ?」

「明後日の深夜、空き家になっている家で行う」

「その家の持ち主は?」

「分からない」


 ここまで慎重な奴だと、商品の引き渡しにやって来るのも事情を知らないトカゲのしっぽだろうな。


 そう考えると、取引相手を尾行して誰と接触するか確かめる必要があるか。


 自白魔法で質問した事はこの男の記憶に残ってしまうので、取引場所には俺が擬態魔法で成りすまそうかと思ったが、男に化けるには体形的に無理があった。


 そこでトラバールを見た。


 この男に任せて大丈夫だろうか?


 いや、他に選択肢がないな。


「よし、このままこの男の家に行くわよ」

「「「はい」」」


 魔力感知で周囲を警戒しながら男を尾行したが、こちらを監視しているような影は無かった。


 男が家だという場所は、破産した商家の建物だった。


 奥にかろうじて住める部屋があったので、そこに集まると、明後日の段取りを相談することになった。


「まず、明後日の深夜に取引先に向かうのは、擬態魔法でこの男に化けたトラバールに任せるわ」

「おう、姐さん、任せてもらおう」

「荷馬車はインジウム、お願いね」

「はあぃ」


 次にグラファイトを見た。


「取引現場に現れた相手の尾行は、グラファイトに頼むわね」

「お任せ下さい」

「ええ~、どうして、グラなんですかぁ?」


 インジウムが不思議そうに小首を傾げたので、暴走されないように理由を説明することにした。


「グラファイトは元が黒いから、暗闇に溶け込むには丁度良いのよ。インジウムだと光っちゃうでしょう?」

「む~、確かにそう言われちゃうと、言い返せませんよぅ」


 俺の説明に皆が納得するように頷いた。


「そして私はジゼルと一緒に上空からの監視ね」



 商品引き渡し当日、俺はジゼルを伴って上空から魔力感知を発動して周囲の警戒をしていた。


 地上では闇の中を男に化けたトラバールが、商品の受け取り場所である空き家に入って行くところだった。


「魔力感知に反応が無いから空き家を監視している者はいないわね」

「それって、空振りって事?」

「相手が警戒していないという事は、やって来るのは何も知らないトカゲのしっぽ、もう長いからしっぽ君でいいわね、で間違いないって事ね」


 やがて背中にバックパックを背負った取引相手が、周囲を警戒しながら取引場所に近づいてきた。


 取引相手が視線を向けた先には、グラファイトが隠れている場所もあったが、闇の中に溶け込んでいるので認識されていないようだ。


 取引相手が空き家に入って暫く経つと、荷物を持たない取引相手が出てきた。


 その間、周囲に魔力感知に反応は無く、どうやらしっぽ君だけで取引させているようだった。


「どうするの?」


 困った顔のジゼルが聞いてきたが、相手はしっぽ君だから大した情報は得られないだろう。


「グラファイトに任せましょう」


 商会に戻って来ると、トラバールとインジウムは既に戻っていた。


「姐さん、商品は受け取ったが、指示通り相手が声をかけてこなかったから何も話していないぞ」

「ええ、それで問題無いわ」


 渡されたバックパックには商品として10本のミード酒と、それを渡す相手の名前と住所が記載されたメモが入っていた。


 そしてミード酒の瓶を光に翳してみると、本物は綺麗な金色だがこれは明らかに濁っていた。


「しかしこんな偽物が何故分からないのかしら?」

「それは本物を見たことがないからじゃないの?」


 ジゼルの指摘はもっともだった。


「どうする、この商人達を尋問するか?」


 リストにある商人達に接触すれば主犯にその情報が洩れる可能性があるな。


 するとグラファイトがすっと現れた。


「大姐様、尾行した先は貧民街で、男は安酒を買ってました」


 やはりそうか。


「それで姐さん、この後どうする?」


 トラバールがそう聞いてきたので、俺は悪い笑みを返した。


 +++++


 エリアルのラディズラーオ商会では、裏ルートで注文を出したエルフミードの配達を首を長くして待っていた。


 今エリアルでは、パルラ産のエルフミードが貴族達の一つの象徴として扱われていて、それを夜会等で客達に振舞える貴族は、他の貴族よりも一目も二目も上に見られていた。


 逆に言うと手に入れられない貴族は見下されるので、皆血眼になって探していた。


 そのため出入りしている貴族家からは、絶対に手に入れるようにと厳命されてしまい困っていた。


 元々流通量が少ない高級品なんか、特別な伝手でもない限りそう簡単に手に入れることなど出来ないのだ。


 そんな困った状況に陥って酒場で愚痴をこぼしていると、そっと男が近づいてきた。


「旦那、お困りごとですかい?」


 ダンテは明らかにうさん臭い男の雰囲気に嫌悪感を覚えた。


「ふん、只の愚痴だ。気にするな」

「どうですかい。いや、旦那がその気なら、パルラ産のエルフミードをお譲りしようかと思っていたんですがねぇ、どうやら勘違いだったようだ」


 パルラ産のエルフミードだと?


 こんなうさん臭い男に手に入れられる訳がない。


 ダンテがそう思っていると、男もそれを理解しているのか、くっくっと笑いだした。


「いや、私が用意する訳じゃないですぜ。用意できる場所を知っているってだけで」


 ダンテはその言葉にぴくりと反応していた。


「それは何処にある?」


 うさん臭い男に顔を寄せて、こっそり小声でそう尋ねると、男も態と小声で返してきた。


「この先に赤い馬という酒場があって」

「ふむ」

「そこのカウンター席で、店主に合言葉を言えば手配してくれるんでさぁ」

「その店主が伝手を持っているのか?」

「いえ、店主は注文を通すだけで、その先は裏の業者が商品を届けてくれるんで」


 男の話を聞いているうちに、これは裏ルートでこっそり手に入れているのだろうと推測できた。


 興味を持ったダンテは男にそっと尋ねた。


「合言葉は何だ?」


 すると急に男は興味を失ったかのように急に距離を取った。


「旦那、こんな美味しい話をただで教えてもらえると?」


 くそっ、こっちの足元を見やがって。


 だが、簡単に教えない事でよりこの話が真実味を帯びてきたと思えた。


 ダンテはそっと男の手の金貨を握らせた。


 男はニンマリと笑みを浮かべると、合言葉を口にした。


あけましておめでとうございます。

今年が皆様にとって良い年になるよう願っております。


評価ありがとうございます

いいねも、ありがとうございます。

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