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番外18 魔法学校の開校祭6(BC)

 

 ようやく音楽が終わり、タスカ学校長とのダンスという名の攻防戦も終わった。


 おのれエロ爺め好き勝手にセクハラしまくりやがって、後で思いっきり教育してやる。


 そう思ってジゼル達の所に帰ろうとすると、俺の前に男達の壁が現れ全員が右手を差し出してきた。


 ちょっ、俺は見た目エルフなんだから、ダンスは人間同士でやってくれないか。


 壁を避けようと方向を変えると、そちらにも壁が出来ていた。


 そして完全に行く手を遮られたところで、俺にダンスを誘う声が聞こえてきた。


 皆が無言で手を差し出す中、俺に声をかけるのは誰だと声がした方向を見ると、俺を取り囲んでいた男達の壁が開き、そこからまるで本日の主役のようにクレメントが現れた。


「ガーネット卿、1曲お付き合い願いたい」


 公の場で俺に手を差し伸べてきたのは初めてじゃないか?


 だが、ここで断れば王族に恥をかかせてしまうんだよな。


「ええ、分かりました」


 そしてクレメントの右手を掴むと、それに合わせたかのように楽団が音楽を奏で始めた。


「殿下も普通に踊るのですね?」


 クレメントが初めて踊る姿を見た感想を口にすると、クレメントは顔を顰めていた。


「姉様からガーネット卿と懇親を深めるよう命じられたのだ。それと姉様はエルフは社交に慣れていないから、踊りが苦手でも馬鹿にされないと言ったんだ。だから練習台になってもらいなさいと」


 ああ、貴族令嬢は皆上手だからなあ。その気持ち分かるぞ。


 だが俺がクレメントと踊ると、周囲のご令嬢達の視線が一気に冷えたように感じるんだよなぁ。


 そしてようやく曲が終わると、意外にもクレメントは俺をエスコートしたままジゼル達の元に戻ってきてくれた。


 クレメントの後を狙っていた男子たちも、クレメントが離れないから近づけないようだ。


「一応、これで姉様からの義理は果たしたからな」


 そう言ってクレメントは離れて行った。


 助かったよクレメント、俺から離れた途端令嬢達に囲まれてはいるが頑張って対応してくれ。


「ユニス、おかえり」

「姐さん、疲れただろう」


 元居た席に座り、俺が踊っている間じっと見守ってくれていた2人は流石に飽きてきたような顔をしていた。


「喉が渇いたわね。ちょっと軽食コーナーで休憩しましょう」

「ええ、賛成よ」

「おお、やっと食えるのか」


 トラバール、お前は早食いで肉の塊を食っていただろう。


 軽食コーナーはビュッフェスタイルになっていて、トラバールは早速皿を手に好きなものを取っていた。


 俺はそれよりも喉が渇いていたので、給仕係に声をかけた。


「果実水をお願い」

「はい、こちらをどうぞ」


 そして手渡されたグラスを手にコクリと一口飲むと、俺達を追って来たのか親子のような2人組が目の前に現れた。


 初老の男性は夜会服を、息子の方は魔法学校の制服姿でネックスカーフの色は黒だった。


「ガーネット様、失礼します。開校祭の間は、生徒は格上の貴族にも話しかけられるというルールがありますので、声をかけさせて頂きました」


 生徒がそう言ったので、俺はそれに同意するように頷いた。


「ええ、構いませんよ」

「ありがとうございます。私は政治・行政科のトナート・オリンピオ・ネスタと言います。隣は父親で伯爵家当主アミントレ・ルキーノ・ネスタです」

「ガーネット卿、こうして直接言葉を交わすのは初めてですな」


 伯爵家当主がそう言ってきたので、俺も挨拶を返した。


「ええ、そうですね。なかなかエリアルに来る機会が無かったものですから」

「成程、これを機会に懇意にしていただければと思います。それと今回は学校行事という事もありまして、息子の社交訓練に少し付き合ってもらえますかな」


 確かにここは学び舎ですからね。


 快くお付き合いしますよ。


「ええ、構いませんよ」


 そして一歩前に押し出された生徒は、やや緊張した面持ちで話しかけてきた。


「パルラ辺境伯様と言葉を交わせることは光栄でございます」

「ふふ、どうぞ」


 俺が初めてのお使いをする子供を生暖かく見守るようにそう言うと、トナート君は少し顔を赤らめながら言葉を続けた。


「私が所属する政治・行政科でも、パルラの町について授業で習っているのです」


 ああ、そう言えば、タスカ学校長が見学旅行に出かけた生徒達にレポートを書かせていると言っていたな。


 その内容が授業に反映されているのか。


「それで我が町は、どのように紹介されているのでしょうか?」

「えっと、まず軍事面では辺境伯領は公国が求める派兵規模を賄えない程小さいが、辺境伯様お1人でそれを覆す能力を持っていると」


 ああ、そう言えば爵位によって有事の際派兵する人数が決まっていたな。


 確かに、赤色魔法が使える魔法使いが1人居れば、それだけの働きは出来るな。


「ええ、確かにそうですね」

「次に経済面では、エルフミード、魔素水、魔物素材等の他領へ売れる特産品が多い事や、街中に人々を引き寄せる娯楽が沢山あり情報発信の中心地だと教わりました」


 確かに経済力を付けようと結構働いたが、そこまで褒められるとなんだかおもがゆいぞ。


「まあ、そんなに褒めて頂けるなんて嬉しいですわ」


 俺がそう言うと、生徒はとても嬉しそうな顔をしていた。


「それでネスタ伯爵領には、どのような特産品があるのですか?」


 俺がそう質問すると、トナート君は待ってましたとばかりに、にやりと笑みを浮かべた。


 その笑みには何か含みがあるように感じた。


「我が領の特産品は、蜂蜜とミード酒となります。公国内でも結構流通しているのです」


 蜂蜜かぁ。


 パルラに住むエルフ達は、採取してきた蜂蜜を全部ミード酒の原料にしてしまうんだよなぁ。


 だから蜂蜜が必要な時は、態々ダラムまで買い付けに行くんだよ。


「我が伯爵領では大陸蜂の養蜂をしているので、大量に生産できるのですよ」


 おお、この世界にも養蜂があるのか。


 パルラで蜂と言えば大森林蜂だし、あれって2種類の毒針を持っていて極めて危険だから養蜂にはむかないだろうなぁ。



 飼育にしやすさで比べると、さしずめ地球でのキラービーが大森林蜂で、セイヨウミツバチが大陸蜂のようなものだろうか?


「先日全くの偶然ですが、パルラ産のエルフミードを手に入れる事が出来たのです」


 エルフミードは、エルフ達が自分達で飲むために作っている酒だから、外に流通させる分はかなり限定されてしまうんだよなぁ。


 あちこちで量を増やしてほしいと言われているが、増産をするには人手が足りないので、いっそのことノール湖のエルフ達をパルラに移住するよう勧誘してみるか。


「そうですか。気に入って頂けたのなら嬉しく思います」

「私達もどのくらい違いがあるのかと試飲してみたのですが、我が領で生産しているミードに自信が持てました」


 うん、そうなのか。なんか下に見られたような気がするぞ。


 確かヴァルツホルム大森林地帯に生息する大森林蜂と大陸中に居る大陸蜂の蜂蜜では、内包する魔素量が全然違うと聞いたぞ。


 この地の人達の舌は、魔素量が多い方がよりおいしく感じるのではなかったのか?


 いや、彼らが大陸蜂の蜂蜜で、同じくらい品質が高い物を作ったという事だろう。


「まあ、それは素晴らしいですね」


 俺がそう言うと、トナート君の後ろにいたネスタ伯爵がニヤリと笑みを浮かべていた。


「ええ、それでパルラ辺境伯様にも是非我が領で生産しているミード酒を飲んで頂きたく、このように1本持ってまいりました。是非進呈させてください」


 そして綺麗に包装された酒瓶をこちらに差し出してくると、さっと前に出たグラファイトがそれを受け取っていた。


「ありがたく頂戴しますね」


 お披露目会もそろそろお開きの時間になった頃、俺達は出入口が混む前に退出することにした。


 そして出口付近に来たところで、俺達を待っていたアレッシア・ロザートが小走りにやって来た。


「パルラ辺境伯様、本日はお楽しみいただけたでしょうか?」

「ええ、とても楽しかったわよ。おもてなしありがとう」

「ふふ、そう言って頂けて私も嬉しいです。あ、それとこれをパルラに帰る前にお読み下さい」


 そう言って手紙を差し出してきたので、そのまま受け取った。



 エリアル魔法学校を後にした俺達は、ジュビエーヌに晩餐に招待されていたのでそのまま公城に向かった。


 夕方に公城アドゥーグに到着した俺達は、王族専用食堂でジュビエーヌと夕食を共にしていた。


 クレメントは学園での片付けと打ち上げに参加するとかで、晩餐には参加していなかった。


「ユニス、今日は楽しかった?」

「ええ、とても色々あったわよ」


 俺がちょっと含みのある言い方をすると、ジュビエーヌはいたずらが成功した子供のように笑みを浮かべた。


「全く、事前に教えて欲しかったけど、会場で男の子達に囲まれた時は助かったわ」

「あら、クレメントも少しは役に立ったのね」

「ええ、おかげさまで」


 そして食事が終わり給仕が俺達のグラスにエルフミードを注いだところで、お披露目会の会場で渡されたネスタ伯爵領産のミード酒がある事を思い出した。


「ねえ、今日ネスタ伯爵から領の特産品だといってミード酒をもらったの。せっかくだから飲み比べをしてみない?」

「え、ああ、ネスタ伯爵領のミードだと大陸蜂の蜂蜜だから、ユニスの所のと比べたらかなり見劣りするわよ」


 ジュビエーヌがそう指摘したが、トナート君は自信満々だったんだよなあ。


「ネスタ伯爵家でパルラ産エルフミードと飲み比べして、大した差はなかったと言っていたわよ。きっと、品種改良をして美味しいのが出来上がったんだと思うわ」


 俺がそう言うと、ジュビエーヌも渋々と言った感じで頷いた。


「分かったわ。ユニスがそこまで言うなら飲み比べてみましょうか」


 そして給仕係にネスタ産のミードを渡してグラスに注いでもらった。


 保護外装を纏った俺の味覚は少しずれているので、ジュビエーヌの評価の方がより、現地の評価に近いはずだ。


 俺の好みとしてはパルラ産エルフミードの方なのだが、はたしてジュビエーヌはどうなのだろう?


「ジュビエーヌどう?」


 俺が感想を聞いてみようとジュビエーヌに声をかけると、俺の顔をまじまじと見つめ返してきた。


「どうも何も、当然パルラ産の方が断然美味しいわよ」


 その言葉を聞いて俺はジゼルとトラバールを見ると、2人とも当然ともいうように頷いていた。


 おかしいなぁ、それならネスタ伯爵家の人達は、どうしてあんなに自信満々だったのだろうか?


 ジュビエーヌとの晩餐を終え公城で用意してくれた客間に戻って来ると、そこでアレッシア・ロザートに渡された手紙を開いてみた。


 そこには「エルフミードについて大事な相談があるので、パルラに戻る前にお立ち寄りください」と書かれてあった。


 なんだろう?


 このネスタ産のミードと何か関連があるのだろうか?


「ジゼル、トラバール、明日ロザート商会に立ち寄るわよ」

「ええ、分かったわ」

「了解、姐さん」


いいね、ありがとうございます。

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