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番外17 魔法学校の開校祭5(BC)

 

 シャミナードが意識を取り戻すと、目の前にはガッティ教師の顔があった。


「シャミナード、大丈夫か?」


 頭が混乱していたシャミナードは、自分がどうして倒れていたのか直ぐには思い出せなかった。


「何が、あったのですか?」

「お前達は、開始と同時に藍色魔法を浴びて全員倒れたんだよ」


 それを聞いたシャミナードが驚いて周りを見ると、そこには一緒に戦っていた生徒達が介抱されていた。


 そしてようやくあの時の記憶が蘇ってきた。


「え、だけど、開始と同時に相手が消えましたよね?」

「消えたんじゃない。上空に舞い上がったんだ。そして無防備のお前達の頭上に藍色魔法を30発撃ち込んでいたぞ」


 あの一瞬で飛行魔法で舞い上がり30発の藍色魔法を放った、だと?


 その事実に驚いていると、ガッティ教師が肩に手を置いてきた。


「まあ、お前の気持ちは分かるが、あれが高位魔法使いの実力というやつだ。お前もいい勉強になったのではないか?」


 シャミナードは自分の思い上がりにガックリと肩を落とした。


 +++++


 校庭での模擬戦を終えた俺達は、コルネーリア嬢に挨拶するため儀礼科のサロンに向かっていた。


 そこに馬車を置いてきたグラファイトとインジウムが、まるでタイミングを計ったかのように現れた。


「お姉さまぁ、お待たせしましたぁ」

「大姐様、着替えを持ってまいりました」

「2人ともありがとう」


 そしてお披露目が行われる大広間に隣接するサロンにやってくると、俺達の姿を見てぱあっと明るい顔になったコルネーリア嬢がやってきた。


「ガーネット様、遅れていたので心配しておりました」

「ごめんなさいね。校庭で剣技科の人達と模擬戦をしていたのよ」

「まあ、ひょっとしてお疲れではありませんか?」


 俺の事を心配してくれたコルネーリア嬢は、サロンの空いているテーブルに案内してくれた。


 そこに俺達3人が座ると、いつの間にかテーブルの上にはお茶のカップが置かれていた。


「一息つかれましたら講堂の奥にある個室に案内しますので、そこでドレスに着替えて下さいね」

「ええ、ありがとう」


 コルネーリア嬢が他の用事を済ませるため去っていくと、ジゼルが心配そうな顔になっていた。


「ねえ、私踊れないわよ」

「今日は令嬢達が踊るのを見るだけだから問題ないわよ。確か飲食が出来るからそこで料理でも堪能していましょう」


 俺が安心させるようにそう言ったが、ジゼルはどうも疑っているようだ。


 まあ、始まってしまえば、あとは人込みに紛れ込んでしまえば問題無いだろう。


 すると2人の令嬢がこちらにやって来た。


「お待たせしました。コルネーリア様が手が離せないので、代わりに来ました。私はバスクヮーリ伯爵家のアンナリーザです」

「私は、ストラーニ子爵家のノヴェッラです」

「パルラ辺境伯様それとお連れの方、これから着替えの場所に案内します」


 アンナリーザ嬢達の案内で俺達は講堂奥の通路に入ると、そこには沢山の扉が並んでいた。


 2人はそのうちに1つの扉の前で止まった。


「辺境伯様はこちらに、男性の方はその奥で着替えをしてください。会場へのご案内は別の者が参ります」


 個室に俺達が入ると、早速グラファイトが荷物の中からドレスを取り出してくれた。


 俺達はグラファイトとインジウムの手慣れた手付きで服を脱がされていくと、インジウムがとても嬉しそうな顔で最後の1枚に手をかけた。


「ちょ、インジウム、それはいいわ」

「え~」


 俺はインジウムの手首を掴むと指をかけている最後の1枚からなんとか遠ざけたが、インジウムはとても不満そうな顔をしていた。


 俺が異常なのかと、ちらりとジゼルの着替えを手伝っているグラファイトを見ると、最後の1枚には手をかけていなかった。


 俺は当たり前のように最後の1枚に手をかけたインジウムに、今度やったら停止だと言っておいた。


 なんだかんだでようやく支度が整うと、コルネーリア嬢が迎えに来てくれた。


「辺境伯様、準備はよろしいですか?」


 更衣室に入って来たコルネーリア嬢は、俺達の出来栄えをチェックしていた。


「お2人とも耳に特徴があるので、飾り付けも個性的ですね」


 いや、これも保護外装に穴を開けられないから挟んでいるだけだけどね。


 そして金属糸に興味をもったようだ。


「ガーネット様、お召し物に触ってもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」


 コルネーリア嬢がそっと私のドレスに手を伸ばすと、指の感触で調べていた。


「やや硬くて弾力性があまりないようですね」

「ええ、これは金属糸ですからね」

「えっ、そんな物があるのですか?」


 コルネーリア嬢がもっと情報を欲しそうだったので、少し説明してあげた。


「これはヴァルツホルム大森林地帯の魔物から採った素材ですよ」


 それを聞いて、入手困難な素材だと分かり残念そうな顔をしていた。


「まあ、今日出席された方で、そのようなドレスは誰も持っていないでしょうね。でも、なんだか重そうですけど?」

「ええ、重いのよ。それを重力制御魔法で軽くしているの」


 するとコルネーリア嬢が当たり前の疑問を口にした。


「え、態々そんな事をしてまでも着る物なのですか?」

「ふふ、これは問題避けですよ」

「問題・・・ですか?」


 前に呼ばれた時は飲み物をかけられたが、コルネーリア嬢は知らされていないようだ。


「ええ、問題です」


 そして個室を出ると、そこには立派な夜会服を着たトラバールが待っていた。


「姐さん、どうだ?」


 どうだと聞かれたら、それは褒めてやらねばならないよね。


「ええ、立派な紳士に見えるわよ」


 到着したお披露目会の会場では既に正装した男女が集まっており、あちこちで友人同士の会話で盛り上がっていた。


 コルネーリア嬢に先導されて俺達が現れると、あちこちで盛り上がっていた人達が一瞬黙ると、皆がこちらに挨拶しようと集まって来た。


 最初に挨拶してきたのは鮮やかな青色で、沢山のフリルが付いたドレスを着た令嬢だった。


「パルラ辺境伯様、こちらはベルトーネ侯爵家のカールラ様ですわ」


 隣に立つコルネーリア嬢がそう教えてくれたので、俺はにっこり微笑んだ。


「初めまして、カールラ嬢」

「初めましてガーネット様、本日は私達のお披露目会に参加頂きましてお礼申し上げますわ」


 それからも挨拶が続いたので、貴賓席に辿りついたのはかなり時間が経ってからだった。


「ふう、やれやれね」

「ユニスお疲れ、喉が渇いたんじゃないの?」

「流石にあれだけ挨拶されると、そうなるわね。でも、これで私の役目は終わったから、後はゆっくりしましょう」


 俺がそう言ったところで想定外の人物がやって来たが、顔色一つ変えずに微笑んでやった。


「タスカ学校長、本日は招待して頂きましてありがとうございます」


 学校長はとても良い笑顔を返してきた。


「ほっほっ、ガーネット卿、エリアル魔法学校の開校祭りに参加してもらえて嬉しい限りですじゃ。責任者としてお礼申し上げますぞ」

「ふふ、そう言って頂けると、参加した甲斐がありますね」


 挨拶を終えるとタスカ学校長は俺の隣の席に座った。


「おお、そこで相談なのじゃが、先ほどの模擬戦で見せたガーネット卿の姿があまりにも優雅で見栄えがあったのでな。あれを魔法科の演技に取り入れたいのじゃ」


 フィギュアスケートもどきが、こちらでは魔法の演技に見えるのか。


「演技中は、楽団に音楽を付けてもらおうかと思っておるのじゃ。なかなか見ものだと思わないかな?」


 その光景は氷の無いスケートショーのように見えたが、確かに的当てや剣技科との模擬戦よりも面白いかもしれない。


「面白い企画ですね」

「ほほ、ガーネット卿ならそう言ってもらえると思っておりましたぞ。ついては、魔法科の生徒達に飛行魔法と演技指導をお願いできますかな?」

「え?」


 なんで俺がと思っていると、タスカ学校長が顔を寄せてきた。


「まさかとは思いますが、手伝って下さらないのですかな? これは魔法科の生徒達の未来を左右する重大な案件なのですぞ」


 ちょ、顔が近いって。


 それでも少年少女達の未来は明るいものであってほしいよな。


「分かりました。協力は惜しみません」

「おお、流石はガーネット卿ですな」


 俺がタスカ学校長の押しに負けたところで、会場では開始を告げる楽団の演奏が始まり、それに合わせて「わぁ」っと歓声が上がった。


「ガーネット卿、1曲お付き合い願えませんかな?」

「え? 今日は皆様の日頃の努力を観覧するだけと聞いているのですが?」

「ほほ、それではせっかくの衣装が台無しですぞ。それにこれは主催側が賓客に示す敬意ですじゃ」


 この男の顔を見れば絶対踊っている間にセクハラしてくるのが目に見えているが、こうやって誘われてしまうと、非常に断りにくい。


「しかたありませんね。1曲だけですよ」


 そして差し出された手を軽く掴むと、直ぐに学校長の左手が腰に回されてきた。


 そしてダンスが始まると、少しずつ学校長の左手が腰の括れを撫でながら下にずれていった。


「学校長、それ以上撫でたら足を踏みますよ」

「ほっほっ、怖いですなぁ。美人が台無しですぞ」


 そう言いながらもタスカ学校長の手が尻に延びてきたので、足を踏んづけてやった。


「おっと、これはなかなか痛いですな。ガーネット卿も意外と太って、痛て」


 また失礼な事をいいやがりましたので、今度は先ほどとは違う足を踏んづけてやった。


「これに懲りて、大人しくすることですね」


 俺がそう言うと、タスカ学校長の目が光った。


「ほほ、怖いですなぁ、それでは魔法でガーネット卿にくっ付いた方がよさそうですかな?」


 それはこの学校長の魔法でパルラに招待した時、人間将棋でやられた魔法だ。


「ちょっ、この場でくっ付くのはマナー違反ですよ」

「なに、周りを見てもさほど目立ちませんぞ」


 そう言われて他の人達を見ると確かに殆どくっ付かれた状態で踊っていた。


 +++++


 クレメントは既に始まっていた会場を見回してエルフを探すと、今回のお披露目に誘ってきたカールラ嬢の姿を認めた。


 拙い、一度参加を断っておきながら、のこのこやって来たと知られたら何を言われるか分かったものじゃないな。


 クレメントはそっとカールラ嬢の視界に入らないように移動しながら、再び目立つエルフの姿を探した。


 そして、それが学校長と踊っている姿を見つけた。


 クレメントもパルラで他のエルフを見かけたが、皆妖精種特有の美しい顔立ちはしていたものの、体に凹凸が無く男女の区別もつかなかった。


 それだというのに目の前のエルフは、明らかに雌だと分かる体形をしているのだ。


 あの顔立ちでしかも体に女性特有の凹凸があるって、むしろ反則じゃないのか?


 しかも先ほど剣技科との模擬戦で見せた動きは、まるで校庭を舞台に見立てて優雅に踊っているように見えた。


 高速で地面を疾走しながらも軽やかに障害物を避ける動きや、生徒達に包囲されるやいなやその場でジャンプしながら回転して周囲に魔法を放つ姿は、まるで光の花が咲いたような美しさがあった。


 剣技科の連中は、日頃から魔法使いなんてフラムがあれば敵じゃないと言ってはばからなかったが、それが1人の魔法使いに公衆の面前で翻弄され無様な姿を晒す姿は見ていて笑いがこみ上げてきたものだ。


 それだけの実力があるというのに、今は学校長相手にぎこちない踊りを披露し、そのうえ学校長が左手を伸ばして尻を触っているのをなんとか体をよじって避けようとしていた。


 学校長の嫌がらせなど簡単にあしらえると思うのだが、態々学校長のおふざけに付き合っている姿はむしろ滑稽に見えた。


 変った存在にしか見えないが、むしろそれだから姉様が執着するのかもしれないな。


 さて、全く不本意ではあるが、俺も姉様のためにあの女に配慮してやるか。


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