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番外1 大陸の新秩序1(AD)

 

 ジュビエーヌがディース神に化けたユニスがエリアルから帰って行くのを見送っていると、息を切らせたフェーグレーン司祭が駆け込んできた。


「はぁ、はぁ、ああ神よ。お待ちくださいませ」


 願いも空しく上空に舞い上がったユニスが一瞬で消えると、がっくりと肩を落としたフェーグレーン司祭の視線がこちらに向いた。


「陛下、あのお方はディース神様のようにお見受けしたのですが?」


 周囲に他人の耳目がある状況でそう聞かれたら、答えは1つしかなかった。


「ええ、そうですよ」


 ジュビエーヌの言葉を聞いた司祭は目を大きく見開いた。


「ああ、何という事だ。我らディース教が敬愛してやまない我らが神が、この世に顕現なされるなんて、この上ない喜びではないか」


 そう言ってユニスが消えた空間に祈りを捧げるポーズを取ると、興奮した周囲の人々が司祭に声をかけていた。


「司祭様、女王陛下は神と共に私達の目の前に現れました」

「司祭様、神は女王陛下にこの地の統治をお認めになられましたぞ」

「司祭様、神敵はバスラー宰相だったのです。私達は騙されていたんです」


 それを聞いた司祭は祈りのポーズから立ち上がると、慌てた表情に変わっていた。


 表情がころころ良く変わるなとジュビエーヌが思っていると、独り言なのかぶつぶついう声が聞こえてきた。


「な、なんと、ディース神は源流派を神敵認定なされたのか。ふふふ、これは面白くなってきましたね。いや、待て、ディース神が我ら主流派と源流派の区別ができるのだろうか?」


 先ほどから丸聞こえなんですけど、それは独り言なの?


「陛下、何処に行けばディース神様に再び会う事が叶うのでしょうか?」


 まさかこの男、ユニスがパルラに居ると言ったら押しかけるつもりなの?


「え、本当に会いに行きたいのですか?」

「はい、陛下も我々ディース教が崇め奉るお方が誰だかご存じでしょう。何が何でも神にお会いする必要があるのです。是非、是非、お教え願いたい」


 ジュビエーヌはユニスが迷惑する顔が思い浮かぶので断ろうとすると、フェーグレーン司祭はそれを察したのか慌てて口を開いた。


「おお、これは失礼しました。それでは教会の総力を挙げて、信者に陛下がディース神から公国の統治を任された事を大々的に広めましょう。陛下の公国統治が盤石になる事請負ですぞ」


 フェーグレーンがそう口走ると、集まっていたやじうま達が目を輝かせた。


「おお、司祭様、これからの教会での説法が楽しみですなぁ」

「ほほ、そうであろう。これからはディース神様に会った時の事も交えて話をしよう。皆も期待してよいぞ」

「おお、それは素晴らしい事です」


 そしてフェーグレーン司祭が期待を込めた瞳でこちらを見て来ると、それに合わせて周囲に集まったやじうま達も期待を込めた瞳で私を見てきた。


 こ、これは、断ったら拙い事態になりそうね。


 でもユニスに迷惑を掛けたくないし、どうしたらごまかせるかしら?


 だがそんなジュビエーヌの心配をよそに、クレメントが口を滑らせていた。


「ああ、それならパルラに行けば会えるぞ」


 ジュビエーヌは思わずクレメントの口を封じようとしたが、時既に遅かった。


 フェーグレーン司祭はクレメントの答えを聞いて、ぱあっと花が咲くように笑顔になったからだ。


 フェーグレーン司祭は神に会える喜びを全身で表していた。


「おお殿下、ありがとうございます。私は急用ができましたので、これで失礼します」


 そう言うと司祭は大急ぎで教会に帰って行った。


 最早何を言っても無駄と悟ったジュビエーヌは、心の中でユニスに謝罪していた。



 新しく興った神聖ロヴァル公国の初代女王になったジュビエーヌが公城アドゥーグの執務室で公務に励んでいると、新しくオルランディ公爵になったノルベルト・トビア・オルランディからの使者がやって来た。


 現役引退した前公爵は、パルラに邸宅を建てて余生を楽しむのだと公言しているのだとか。


 執務室に入って来た使者は、私の前で一礼すると公爵からの手紙を差し出してきた。


「陛下、オルランディ公爵からの手紙を預かってまいりました」


 当番兵に合図して手紙を受け取ると、そこにはハンゼルカ伯国のルミール・アスベカが降伏したいと申し入れてきたと書かれてあった。


 パルラから逃げ出した敗残兵の中には教国の兵士もいたはずだし、本国に逃げる途中でハンゼルカ伯国を経由したはずだ。


 その時、大帝国がディース神から神敵認定された事が広まるはずだし、大帝国に加担したハンゼルカ伯国でも動揺が広がった事だろう。


 ルミール・アスベカも身の安全の為に何か行動を起こすだろうとは思っていたが、それがディース神から統治の承認を受けた公国への降伏だったようね。


「伯国の条件は?」

「はい、ルミール・アスベカ様とその一族の身の安全です」


 仮にエリアルで保護したとしても、当然彼らが神敵とされている事はエリアルの民にも伝わっているから警護が大変だわ。


 意外かもしれないけど最も安全な場所はパルラなのだけれど、ルミール・アスベカはユニスの性格を知らないから抵抗しそうね。


「こちらの条件は、ルミール・アスベカとその一族の身柄をパルラに送る。これが受け入れられないなら、この話は無かった事にするわ」


 +++++


 サン・ケノアノールのディース教大聖堂内では、源流派を追い出し新しくル・ペルテュのメンバーになった主流派の司教達が集まっていた。


「我ら主流派が教会の主導権を奪い返したのは良いのだが、信者達は我々がディース神に認められた存在だという根拠を求めているようだぞ」

「だが、神にとっては源流派も我々主流派も同じだと思われるのではないか?」


 そこで集まったメンバーが押し黙ると、1人の司教が口を開いた。


「ロヴァル大公は、ディース神から統治のお墨付きを得たというじゃないか。それなら我々もお墨付きを貰えばよいのではないか? 幸か不幸かまだ新しい教皇を決めていないことだし」


 集まった司教達が考え込む中、進行役の司教が口を開いた。


「それはつまり新しい教皇をディース神に決めてもらうという事か?」

「ああ、成程、それなら教徒達にも我々の正当性を示せるし、誰も文句を言えないな」


 その一言に、慌てた司教が声を上げた。


「ちょっと待ってもらいたい。ディース神様が何時までこの世に顕現しているとは思えないのだが?」


 その一言に集まった司教達が一斉に頷くと、進行役の司教が口を開いた。


「ああ、それならエリアルのフェーグレーン司祭からの報告書が来ていただろう。それによるとパルラに行けば、我らが神に会う事ができるらしい」

「は? あの町には最悪の魔女が居るのではないのか? 教会としては、神と魔女が同居しているなんて、信者から問われたら何と答えればいいのだ?」


 そう言って再び皆が押し黙ったところで、また1人の司教が口を開いた。


「そう言えば、最悪の魔女の正体は女神だったという報告をした助祭がいたな」

「ああ、あの失笑をかった愚かな報告書か・・・」


 そこで全員が顔を上げた。


「・・・まさか、それが本当なら、神と魔女は同一かまたは親しい関係という説明がつくのではないか?」

「こ、これは、その助祭を呼んで詳細を聞き取る必要があるのではないか?」

「たしかにそうだな」


 全員が頷いたので、本日の会議は終了となった。


 +++++


 ガリカ助祭は下働きのダナと一緒に、サン・ケノアノールにあるディース教大聖堂を見上げていた。


「まさか目が黒いうちに、またこの場所に来る事になるとはのう」


 感慨深げにそう呟いたが、隣のダナはそんなガリカの思いなど気遣ってはくれなかった。


「ガリカ様、そんな事はどうでも良いので、さっさと宿の手続きに行きますよ」

「む、やれやれ、若い子はせっかちでいかんなぁ」



 王都フェラトーネにあるガリカ達の教会の前に突然馬車が止まると、御者台から降りてきた男から手紙を受け取ったのだ。


 その手紙は大聖堂からのもので、可及的速やかにサン・ケノアノールまで来るようにと書かれてあった。


 その後は大慌ての旅行準備と周囲への挨拶を済ませ、御者にせかされながら馬車に乗ってサン・ケノアノールまでやって来たのだ。


 馬車での道中、自分が呼ばれた理由をあれこれ考えてみても、思い当たる理由は1つしかなかった。


 やはり教会の宿敵である最悪の魔女が、女神だという報告書はまずかったようだ。


 そう思いながらも、ガリカはあの日の事を思い出していた。


 王都フェラトーネを埋め尽くす黒い虫に追い立てられて教会の屋根で覚悟を決めた時、突然最悪の魔女が上空に現れ、町全体に放った光の雨がどう見ても神の祝福にしか見えなかったのだ。


 その感動を思わず報告書にしてサン・ケノアノールの石頭共たちに送り付けてやったのだが、何も言ってこないので黙殺されたと思っていた。


 それが突然の呼び出しである。


 絶対、良い話には思えなかった。


 ガリカ達は大聖堂奥の宿坊でル・ペルテュからの招聘状を見せて部屋を割り当ててもらうと、長時間つるし上げられるだろう明日の公聴会のため、体力を温存しておくことにした。


本編作成時に没にしたストーリーをせっかくなので番外編として掲載しようと思います。

本編完結済なので更新は不定期となりますので、ご了承願います。

本編完結後のストーリーは題名にAD、本編完結前はBCで表示します。

賢明な読者の皆様ならこの遊び心が分かりますよね(ˆˆ)

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