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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第12章 魔女VS黒蝶
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12―25 もう1人の転移者3

 

 シェリー・オルコットを地下遺跡から引っ張り出すことに成功した俺は、次の行動に移った。


 上空でループを描くように回転しながらシェリーに気付かれないように、俺がより低空になるように誘導すると、突然機動を止めて滞空しつつ周囲に空間障壁を展開した。


 俺を追ってきていたシェリーは突然俺が止まった事と空間障壁を展開したのを見て、直ぐに緊急停止すると自身も空間障壁の魔法を展開していた。


「やあシェリー、さっきぶり」


 俺は出来るだけ笑顔でそういったのだが、顔の下半分しか見えないシェリーの口がへの字に曲がった。


 だが、やっと捕まえたのだ。


 逃がしたくないぞ。


 俺の前にはシェリーを狙う複数の緑色の魔法陣が現れた。


「さてシェリー、魔法の撃ち合いをしようぜ」


 シェリーは俺の言葉に、自分が誘い出された事を悟ったようだ。


 空の上では小細工も出来ないし、地面に逃れようにも俺が空間障壁を展開しているのでそれもできない。


 俺の予測が当たっていれば保護外装の魔素量はエルフ型の方が上のはずだ。


 お互いの魔力障壁を打ち破ろうと、緑色魔法での撃ち合いが続いていた。


 攻撃を行いながらじっとシェリーの表情を窺っていると、鼻と口しか見えないがその口が焦りで歪んでいるような気がしてきた。


「どうした、かなり辛そうだぞ?」

「それはミシロがつらいから、私にもそうであってほしいという願望がそう見せているだけよ」


 それはシェリーの強がりにみえた。


「そうか? つらくなったら言ってくれ。魔女の休日の事を教えてくれたら、礼としてパルラの町でプリンアラモードをご馳走するぞ」

「なっ」


 俺がそういうとシェリーの口が開いた。


 この女は隠しているつもりのようだが、プリンアラモードが大好物なのを俺は知っているのだ。


「なんで・・・」

「何で知っているのかって? 何時もいがみ合っているが、仲が良かった時もあっただろう? 俺だってあの頃の事を覚えているんだぜ。それはシェリーもだろう?」

「思いあがらないで」

「そうか?」


 そして俺はビルスキルニルの遺跡で見つけた、2人のツーショット写真を取り出した。


「ほらこの写真、捨てずに持っていてくれたんだろう?」

「あ、それを何処で・・・」


 シェリーは俺が掲げたツーショット写真を見て驚いているようだ。


「やはりシェリーの持ち物だったか。ビルスキルニルの遺跡で見つけたんだよ」

「な、な、何故それが私の物だと思うの? ミシロが大事に持っていた写真を私に見せているだけかもしれないでしょう?」

「ほう、ならこの写真は処分してもいいんだな?」


 そして俺が写真をやぶる仕草をすると、シェリーは慌てて制止してきた。


「ちょ、ちょっと人の物を勝手に処分しないでって・・・あ」


 シェリーはそこまで言ってそれが失言だった事に気付き、手を口に当てていた。


 その姿がとても愛らしかったので思わず笑みを浮かべると、シェリーはこの写真が自分の物だと知られた事が気に入らないのか、俺がその事に気付いた事に恥ずかしさを覚えたのか、怒ったように頬を膨らませていた。


 だが、そのおかげでシェリーが話を聞いてくれそうな雰囲気になったので、このチャンスにかける事にした。


「俺はハドリー・オルコットを殺してはいないぞ」

「そんな戯言信じると思っているの?」

「あの時の光景が見えるのなら、俺が使った魔法が豊穣の大地形成という赤色魔法だと分かる筈だ。あの魔法は浄化魔法だから、生きている人間には無害なんだよ」


 俺がそう指摘するとシェリーは眉根を寄せてから、何か考え込んでいるようだった。


 どうやらこちらの言葉を聞いて、もう一度能力を使って確かめてくれているらしい。


 俺は攻撃を止めてシェリーの次の言葉を待った。


 暫くするとシェリーの顔に変化があった。


「驚いたわ。確かにミシロの言う事は正しいようね」


 どうやら分かってくれたらしい。


「分かってくれて嬉しいよ。俺はハドリー・オルコットの最後を看取ったんだ。彼はとても喜んでいたよ。そして魔女の休日には気を付けろと教えてくれたんだ」


 シェリーはその場面を想像しているのか、じっと俺の事を見つめているように感じた。


「・・・そう、だったのね。ご先祖様がそう言ったのなら仕方ないわね。魔女の休日の事教えてあげるわ。魔女の休日とは、この大地から魔素が消える現象を言うのよ」


 それってビルスキルニルの遺跡のあの転移の間の環境が、大陸中に広がるという事か?


「はあ、そんな事が起こりえるのか?」

「あら、地球だって地磁気逆転で一時的に地場が弱まるのよ。この地でも似たような事象が起こっても何ら不思議じゃないでしょう」


 おい、そんな発生間隔が恐ろしく長い天体現象が、そう簡単に発生する訳ないだろうが。


「ちょっと待て、地磁気逆転って恐ろしく長い長い時間が必要だろう。そんな現象がそう都合よく発生するのか?」


 だがシェリー・オルコットは突き出した人差し指を左右に振っていた。


「だから魔法国の遺跡を探したのよ。魔法国は自分達に破滅的な影響を及ぼす魔女の休日への対策を考えていたようね。そしてこの地下にはなんていうか、そう、龍脈のようなものがあって、そこから魔素が噴き出しているようなの。魔法国の技術を使えば一時的に魔素の放出を止める事も可能みたいよ」


 あまりにもありえない事のような気がするが、ここは俺が知らない異世界だし、この保護外装を開発した魔法国の技術ならそんな事も可能なのかもしれないな。


 俺はシェリーが言った事を考えたが、それでも腑に落ちない点があった。


「そんな事をして意味があるのか?」


 いくら魔法国がおおざっぱだったとしても、自分達を破滅させるような事をするとは思えなかった。


 だが、シェリーは首を振りながら笑っていた。


「少なくとも私達のような保護外装を纏った者を無力化出来るわ。まあ、人工的に無理やり実施するから効力は持っても2日程度でしかないと思うけど、それだけあればミシロを抹殺するには十分な時間だわ」


 確かに言わんとすることは分かる。


「一度動かしたのなら、止められるんじゃないのか?」

「魔法国の遺跡がどれだけの骨とう品だと思っているの? 定期メンテナンスもしていない物を無理やり動かせばあちこちに無理がくるから、一度動かしたらもう誰にも止められないわよ」

「なら、その龍脈の塞ぐ蓋みたいなものを破壊すればいいんじゃないのか?」


 だがシェリーはまたも首を横に振った。


「龍脈を塞ぐ方法が物理的な蓋なのか、魔法技術なのか分からないでしょう? それに出口までの通路は作っていないから、そこまで辿り着く前に魔女の休日が発動してしまうわよ」


 駄目か、遺跡が駄目なら黒蝶の方はどうだ?


「それならその1番とやらを、始末してしまえばいいんじゃないのか?」

「1番は慎重な男で、その素顔を誰にも見せていないわ。仮に見知った者がいたとしても、慎重な1番なら影武者を用意していても不思議じゃないし、本物を探しているうちに魔女の休日が発動してしまうでしょうね」

「なら、俺が逃げればいいんじゃないか?」


 だがシェリーは三度首を横に振った。


「ミシロが逃げたらパルラの町でどんな惨劇が起こるか分からないわよ。ミシロは、知り合いが無残に殺されるのを黙って見過ごせるの?」

「つまり大気中の魔素が薄くなって俺が弱ってきたら、パルラに攻め込んで来るという事か?」

「ええ、丁度パルラに到着する日が魔女の休日になるように調整してね」


 既にここまでお膳立てされていたか。


「ありがとう。知っているといないとでは対応が違うからな。これならなんとか対抗する手段を考えてみるよ」

「そう、頑張ってね」


 シェリーは何故か悲しそうに微笑んだ。


「シェリーは助けてくれないのか?」

「私は・・・無理みたいね」

「まだ、わだかまりがあるのか?」

「そうじゃないの。ミシロとの戦闘で魔力を使いすぎたみたい」


 シェリーがそう言った途端シェリーがはじけ飛ぶと、地球で見たことがあるシェリー・オルコットの姿になっていた。


 上空から落下してきたシェリーの体を抱き留めると一瞬何が起こったのか分からなかったが、直ぐに保護外装がパージしたのだと気が付いた。


 拙い、ここからではビルスキルニルの遺跡まで1時間ではたどり着けない。


 なら、どうしたらシェリーを助けられる?


 考えろ、俺。


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