表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第12章 魔女VS黒蝶
358/416

12―7 遊覧旅行5

 

 俺達はやって来た4つの輝点に不意打ちを仕掛ける為通路の角から飛び出すと、期待通り4人の男は目を大きく見開いて驚いていた。


 その隙を突いてテルルとインジウムが早速男達を掴むと舷窓から放り投げていった。


 そんな男の1人が身にそぐわない宝石類を身に着けているのを見て、海に投げ込もうとしていたインジウムの手を掴んだ。


「インジィちょっと待って」

「え、はあぃ」


 そしてインジウムが通路に投げ落とした男に質問した。


「おい、お前、その宝石は何処で手に入れた?」

「この破廉恥女め、そんな裸同然の恰好をして男を誘っているのか?」


 男は俺の質問に答える気が全く無いようだ。


 仕方が無いので、テルルとインジウムに身ぐるみはがさせると、ネックレスや指輪という女性が身に着けるような宝飾品が見つかった。


 船倉に閉じ込めた女性達から奪い取った宝飾品と見ていいだろう。


「これはお前が盗んだものだ。全て回収させてもらうぞ」

「ふ、ふざけるな、それは俺の物だ」


 そして暴れる男をインジウムに海に放り投げさせた。


「全く下品な男もいたものね」

「そうですぅ、お姉さまはぁ、とおっても素敵ですよぅ」

「あ、黄色いのずるいぞ。自分だけいい子ちゃんぶって」


 また言い争いになりそうなところを手で制すると、そのまま指を上に向けた。


「これから艦橋を制圧に行くわよ」

「はい、お任せください」

「はあぃ、ぜぇんぶぅ、放り投げてやりますぅ」

「ふふ、頼もしいわね」


 その時船に大きな衝撃が襲った。


 俺がたたらを踏むと直ぐにインジウムが抱き留めてくれた。


「インジィ、ありがとう」

「えへへ」


 礼を言われたインジウムは満面の笑みを浮かべていたが、テルルの方は凄い顔でインジウムを睨んでいた。


 だが、今はテルルの機嫌を取っている暇はなかった。


 直ぐに魔力感知を発動して海獣の痕跡を探すと、遊覧船の舷側に大量の起点が現れた。


 それは西アルアラ海でフリン海国の戦闘艦と交戦していた時に現れたアンデットを大量に乗せた幽霊船を想起させたが、上階からは野蛮な罵声と沢山の足音が聞こえてきた。


 うん、アンデットと違うな。


 そこで舷窓から外を覗くとそこには木造帆船があった。


「テルル、インジウム、敵が増えたわ。これからは気合を入れて制圧するわよ」

「はあぃ、お任せくださいぃ」

「はい、問題ありません」


 +++++


 海賊船ダウラ号で一仕事終えたゴドイは、こっそりリグアの町に入ると海賊行為で手に入れたささやかなお宝を換金し、その金で何時もの酒場で気持ち良く酔っていた。


 するとナチョと名乗る男がやってきて、うまい儲け話があると話しかけてきたのだ。


 それによるとリグアで、フリン海国の水魔法推進と魔法弾を投射する装置を備えた船を建造している金持ちが居るという話だった。


 ゴドイがその話に興味を示すと、ナチョはその船が完成して金持ちが友人を集めて船遊びをするから隙を見て奪ってやろうと言ってきたのだ。


 フリン海国の外洋船は速度が速い上に凶悪な兵器を搭載しているので、見かける度に逃げ回っていたが、その船が手に入ったら今まで指をくわえて見逃していた相手を襲えるのだ。


 ゴドイはその話に乗る事にして指示されたとおり手下をメズ島に隠し、ゴドイ自身はダウラ号で海上の待ち合わせ地点で待機していた。


 その時突然の豪雨で海が荒れ何とか操船していると、目の前に見たことも無い船が現れたのだ。


 その船にマストと帆走用の帆が無いのを見て、ナチョの話が本当だったと確信したゴドイはそのままダウラ号を横づけしたのだ。


「野郎共、俺に続けぇ~」

「「「おおお~」」」


 敵船への切り込みに船長自らが先頭で飛び出すことは無いが、ナチョの話ではこの船に残っているのは船を動かす為の少数の男と女だけだと聞かされていたので、手下共に恰好をつけるため真っ先に飛び移っていた。


 そして一番良い女を探そうとしたところで、ゴドイの後ろから次々と手下共が戦利品にありつこうと駆け出していった。


 そんな手下を見て慌てたゴドイは、大音声で叫んだ。


「おい、いい女は俺の物だからな。手を出すんじゃないぞ」


 だが、既に女を求めて獣と化した部下達に俺の声が聞こえているとは思えない。


 仕方がない、ここはあいつ等より先に何としてでも極上品を手に入れてやる。


 そして良い女を求めて船内の扉を開ける時は、まるで宝箱でも開けるような高揚感があった。


「ちっ、ここもハズレか」


 そんなハズレであっても、次は当たりかもという期待で心が湧きたっていた。


 そして宝を探し当てた。


 その女は長い金髪にちょっと長い耳をしていたが、その顔はとてもゴドイ好みだった。


 しかも胸と腰の部分に布切れを身に着けたほぼ裸という、とてもそそる恰好もしているのだ。


 それは俺を、俺だけを誘惑していると思えるほどに。


 うひょぉ、どうやら今日の俺は付いているようだぜ。


 そして先ほど見つけた空き部屋に連れ込んでやろうと走り出した。


 +++++


 先ほどの強い衝撃の後、敵艦から乗り込んできた海賊達が通路からやって来ては舷窓から投げるという動作を繰り返していた。


「一体、どれだけいるのよ」


 俺が思わずそう零すと、直ぐにインジウムとテルルが反応した。


「お姉さまぁ、これが1匹見つけたら百匹は居るってやつなんですよねぇ?」

「え、ちょっと黄色いの、それは姉様が嫌う虫の事じゃないの?」

「え、どこが違うのぉ?」


 なんだか頭が悪そうな会話をしているが、そのくせ手はちゃんと動いていて襲い掛かって来る海賊たちを掴んでは舷窓から海に放り投げていた。


 そんな時背後から突然首を絞められたと思ったら、生臭い匂いと共に声が聞こえてきた。


「こいつは俺の物だ」


 そんな訳あるかぁ。


 俺が抵抗しようとすると、羽交い絞めにされたまま強引に後ろに引っ張られようとしたので、反射的に重力制御魔法で自身を重くした。


 後ろにいる誰かは、俺を簡単に攫えると思ったのだろう意外そうな声が漏れてきた。


「あれ? 動かんぞ。どこかのデブと間違ったか?」


 おい、誰がデブだ。


 それよりもいつまで人を羽交い絞めにしているんだ。


 俺が文句を言おうとしたところ、テルルに先を越されていた。


「無礼者、いつまでお姉様に抱き着いているのです」


 すると後ろから男の「ごぶっ」という声が漏れると同時に羽交い絞めにしていた腕の力が弱まったので、男の腕の中から逃れて後ろを振り返ると、そこには前が何だったのか分からない肉塊が転がっていた。


「テルル、これは?」

「害虫です」

「あ、そうですか」


 テルルとインジウムの活躍のお陰でようやく押し寄せて来る海賊共を片付けることができたので、残った艦橋の制圧に向かう事にした。


 そこで艦橋を魔力感知で精査すると、そこには反応が無かった。


 え、遊覧船は動いているのに誰も操船していないのか?


 そして遊覧船に横づけしていた海賊船の姿も、いつの間にか消えていた。


「テルル、インジウム、急いで艦橋に向かうわよ」

「「はい」」



 艦橋への扉は鍵がかかっているのかびくともしなかったが、直ぐにインジウムが扉を蹴破った。


 あ~あ、新造船なのに。


 そして艦橋の中に入るとある筈の舵輪が破壊されていて、遊覧船はバンダールシア大陸からどんどん離れていた。


「くそったれがぁ」

「まあ、姉様のそんな汚い言葉初めて聞きましたわぁ」

「お姉さまぁ、これって拙いんですかぁ?」


 俺の暴言を聞いたインジウムが少し不安そうな顔をしているので、慌てて首を横に振った。


「大丈夫よ、いざとなったら空を飛べばいいんだから。それよりも修理できる技術者が船に残っているか確かめてみましょう」

「はあぃ」


 先にオーバンが守っている倉庫に戻り、不安な気持ちで待っている女性達に海賊共を退治した事を伝え安心させると、トラバール達がいる機関部に向かった。


 機関部に入るとトラバールが俺の顔を見てきたので、サムズアップしてやった。


「皆さん、遊覧船の舵輪が壊されてしまったの。誰か、修理できる人はいませんか?」


 俺は機関部にいたシャウテンから預かっている技術者に聞いてみたのだが、皆お互いの顔を見合ってから首を横に振っていた。


 駄目か。


「お姉さまぁ、駄目でしたねぇ」

「そうねえ」


 こんな大きな船が空を飛んだらまたあちこちで噂になってしまうが、舵が直せないのだからこれは仕方がないな。


 解放された人達にこれから空を飛ぶ事を説明しても船が空を飛ぶことを理解できないのか首を傾げていたが、実際に船が浮くとあちこちで悲鳴が上がっていた。


 被害を受けた遊覧船でメズ島に向かっていると、見覚えがある帆船を見つけた。


「お姉さまぁ、あれってこの船を襲った害虫野郎の船ですよぅ」

「そうね」

「姐さん、まさか、このまま見逃す訳じゃないよな?」


 トラバールの声で振り返ると、皆がじっとこちらを見つめていた。


 そして船倉に押し込まれていた女性達の気の毒な姿を思い出すと、直ぐに頷いた。


「・・・分かったわ。トラバール、カタパルトの発射準備を」

「おう、任せてくれ」


 甲板上のトラバールが元気よく右腕を高らかに掲げたのを見て、俺は1つ頷いた。


「トラバール、カタパルト発射」


いいね、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ