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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第12章 魔女VS黒蝶
357/416

12―6 遊覧旅行4

 

 俺達が海辺で水遊びをしていると、メラスが慌てた様子でこちらに駆けてきた。


「魔女様、ちょっとよろしいでしょうか?」

「どうしたの?」

「それが、船が動いているようなのです」


 そう言われて沖合で停泊している遊覧船に目を向けると、確かに船首が徐々に沖の方を向いていた。


「船のお守はフーゴよね?」

「はい、あの野郎、一体なにをやっているんでしょうねぇ」


 艦首を沖に向けているという事は、沖に現れた何かに対応しようとカタパルトを向けているのだろうか?


 そしてしばらく様子を見ていると突然遊覧船の艦尾から水流が発生すると、沖に向かってかなりの速度で走り去ってしまった。


「え?」


 俺達が呆気に取られていると、船が居た場所に沢山の浮遊物があるのが見えた。


 その浮遊物をよく見ると、それは船に乗っている筈の水兵達だった。


「ちょっと、あれ、水兵達じゃない」

「これは大変だ。直ぐに助けに行ってきます」


 メラス達が慌てて小舟を出して海に浮かんでいる水兵達の回収作業を始めてくれた。


 救助された水兵達の体には切り傷や打撲の跡が沢山付けられており、まるで何者かに襲撃された跡のようだった。


 俺とジゼルが怪我人を治癒していると、メラスが1人の男を肩に担いてやってきた。


「フーゴの野郎を見つけましたぜ」


 メラスが俺の前に横たえたフーゴは酷く殴られたようで鼻が潰れ、目が腫れあがっていた。


 フーゴに治癒魔法をかけると、意識を取り戻したフーゴが悔しそうに拳を地面に打ち付けながら何があったのか話してくれた。


 それによると、リグアから乗り込んだ男達に船を乗っ取られたそうだ。


「ナチョ?」

「はい、盗賊団の一味です。あんな輩が船に乗っていたのに気が付きませんでした」

「それで連中は何人いたの?」

「船に潜伏していたのが4人、小舟で乗り付けてきたのが20人くらいです」


 顔を上げて海をみるとこちらに艦尾を向けた遊覧船は次第に小さくなっていき、俺達は無人島に取り残されていた。


 遊覧船が小さくなっていくのをじっと見ていると、3人の女社長達が困った顔でやって来た。


「ユニス様、船には着替えが」


 そりゃそうだ。


 水遊びのため水着しか身に着けていないのだ。


「心配しないで、船は必ず奪い返してきます。グラファイト、インジウム」


 俺がそう言うと、おいて行かれそうな雰囲気に慌てたのか周囲から声が上がった。


「姐さん、俺も行くぜ」

「ユニス様、私にも活躍する場をお与え下さい」

「ガーネット卿、私も及ばずながら力を貸しますぞ」

「姉様、一度くらい私の働きを見て下さいませ」


 そこに立っていたのはトラバールとオーバンにガスバル、それにテルルだった。


 するとインジウムがテルルに絡んでいた。


「あら、青いの、貴女にはお姉さまから受けている大事な任務があるでしょう? ここは私に任せておきなさい」

「あら、黄色いの、良かったわね。今回は私が居るから、貴女が姉様に迷惑をかけて無様な姿を見られる事もないのだから」

「なんですってぇ」


 俺は直ぐにいがみ合う2人を引き離した。


「ちょっと、2人とも止めなさい」


 しかし緊急時にこんな事をしている場合ではないのだ。


 それにトラバール達も海パン一丁の姿で武器も持っていないのだ。


「トラバールもオーバンもそれにガスバルも武器を持っていないでしょう? それでどうやって戦うというの?」

「なあに、相手は人間なら素手で充分でさぁ」


 トラバールとオーバンはそう言って力こぶを見せつけてきたが、ガスバルはちょっと分が悪いようだ。


 これは連れて行かないと後で絶対拗ねるな。


「分かったわ。トラバールとオーバンは付いてきて、ガスバルはガーチップの部下達とここで皆の護衛をお願いね。この島に連中が残ってないとは言えないのだから」


 そして大公姉弟はセレンにジゼルの護衛はグラファイトに任せて、遊覧船の奪回にトラバールとオーバンそれにテルルとインジウムを連れて行く事にした。



 上空から魔力感知に反応がある時点に向けて飛行していると、丁度スコールの中に入ったようで低い雲が垂れ込めて海上の様子を見る事は出来なかった。


 だが、敵からもこちらの姿が見えないので奇襲には丁度良い状況だった。


「姐さん、それでどうするんだ?」


 トラバールの質問に俺は真下を指さした。


「遊覧船はこの直下に居るわ。これから急降下するから、後甲板に着地したら素早く動いてね」

「おう、任せてもらおう」

「皆もお願いね」

「「「はい」」」


 全員が了解したのを確かめると、厚い雲を突き破って急降下した。



 雲を抜けると予想通り周囲は激しい雨となっており、水煙で視界もかなり悪かった。


 遊覧船は激しい雨のためか、甲板で警戒している人の姿は無かった。


 まっすぐ後甲板に向けて急降下し着地直前に重力制御魔法を調整して音も無く着地すると、魔力感知に反応がある更衣室に向かって突撃した。


 更衣室の扉を開けて中に入ると、そこでは半裸の男が下に敷いた女性にまさに乱暴をしようとしている場面だった。


「オーバン」


 俺が叫ぶと、直ぐにオーバンが半裸男にパンチを浴びせて昏倒させた。


 助けた女性は、更衣室で着替えを手伝ってくれたジュビエーヌの侍女の1人だった。


「大丈夫ですか?」

「ユニス様、私、怖かったです」


 恐怖でがたがた震える女性を安心させてから他の人達が何処に居るのか尋ねると、女性達は船倉に押し込まれているが、その他は分からないとの事だった。


 船が動いている以上ポンプジェットを動かしている人間がいるはずなので、まずは機関部を制圧してから船倉に向かう事にした。


 機関部を優先するのは、シャウテンから預かっている技術者に怪我をさせたり最悪死なせたりしたらシャウテンに合わせる顔が無くなるという理由もあったからだ。


 機関部には当然複数の反応があるので、付いてきた者に合図を送ってから扉を開けた。


 扉が開くと後ろに待機していた4人が一斉に中に乱入し、不意打ちを食らい呆気に取られている男達を制圧していった。


「姉様、処理しました」

「あ、ちょっと、私の方が早かったわよ」

「何を言っているのよ。私の方が早かったわよ」


 また言い争いが始まりそうだったテルルとインジウムを引き剥がした。


「2人とも良い働きでしたよ。この調子でお願いね」

「「はい」」


 そしてシャウテンから預かっている技術者に声をかけた。


「みなさん、怪我はしていませんか?」

「あ、はい、助けて頂いてありがとうございます」


 皆が落ち着いたところで、今後の事を話した。


「敵に気付かれないように、私が合図するまでこのまま推進機を動かしていてね」

「はい、分かりました」

「トラバール、ここの護衛をお願い」

「おう、任せてもらおう」


 そして救助した女性に案内してもらい、皆が監禁されているという倉庫に向かう事にした。


 案内された先は下層にある船倉で、扉の前には樽を積み上げられ、扉を開けるとそれらが倒れて連中に警告を発する仕掛けになっていた。


 そして扉の傍には見張りの男もいた。


 その位置は、階段を降りた途端男の目に入る奇襲するのはとても都合の悪い位置だった。


 男は俺達の姿を見た途端積み上げた樽を倒して警報を発するだろう。


 さてどうしようかと考えていると、俺の横を黄色と青色の残像が通り抜けた。


「あ」


 俺が声を上げた時には既にテルルとインジウムが2人かかりで男を殴り飛ばし、その反動で積み上げた樽がすごい音をさせながら崩れていった。


 あああ、ここまで順調だったのに。


 船内中に響き渡った警報音に反応して、魔力感知にはこちらに向かって来る4つの輝点が現れた。


 まだ距離があるので、先に倉庫の中を確かめる事にした。


 突然開いた扉に中から悲鳴が聞こえてきたが、姿を現したのが俺だと分かると直ぐに安堵の声に変わった。


 そんな人達の中から女の子が泣きながら駆けて来た。


「わぁぁぁん、お姉ちゃ~ん」

「セリアちゃん、どうして船にって、いや、怖かったでしょう。でも、もう大丈夫よ」


 こんな小さな子に怖い思いをさせるなんて許せないな。


 少し汚れたセリアの顔を綺麗にしてから周りを見回すと、そこに監禁されていた女性達は服が破け、顔には殴られたような跡があった。


「皆さん、怖い思いをしましたね。直ぐに船を奪い返してきますから、それまでの間はここで待っていてくださいね」


 そして女性達の護衛役としてオーバンを置いていくと、こちらに向かって来る4つの輝点に集中することにした。


「テルル、インジウム、これから船首に向けて制圧していくから、船を強奪したクズ共は容赦なく海に投げ捨てなさい」

「はあぃ、喜んでぇ」

「はい姉様、ゴミは速やかにお魚さんの餌にしてやります」


 そしてこちらに向かって来る4つの輝点と接触する地点に向けて移動を開始した。


 +++++


 ナチョは船の艦橋で、船の強奪に成功した事にほくそ笑んでいた。


 この船と交換で、あいつ等から暫く遊んで暮らせるだけの資金を得ることになっていたからだ。


 船を奪われた連中は誰も助けに来ない無人島で野垂れ死ぬだろうし、仮にリグアの連中が船を見つけたとしても、その時俺はこの船から離れているという寸法だった。


 くくく、この船を奪うという俺の計画は完璧じゃないか。


 その後は身なりを整えて、王都フェラトーネに戻るのもいいだろう。


 そんな事を考えていると、突然船内から問題が発生した事を知らせる轟音が響いてきた。


「おい、何かあったようだぞ」


 ナチョがゴラス海賊団の男に向かってそう声をかけた。


「だから何だ?」


 ゴドイが船の強奪のために寄越してきた手下共は、1人を除き頭が弱い奴らばかりだった。


「だからじゃねえ、お前らの船長と合流する時問題が起こっていたら、どやされるのはお前達だぞ。いいからさっさと様子を見てこい」


 ナチョがそう言うと男はムッとしていたが、舵輪を握るゴドイの航海士が頷くとしぶしぶといった感じで様子を見る為艦橋から出て行った。


 小舟で乗り付けたゴラス海賊団の手下を船に乗り込ませると、すぐさま船に乗っていた男達を皆海に投げ捨て、残っているのは船を動かすのに必要な人員と女だけにしていた。


 そんな中で騒動を起こすような奴は見逃していないはずなのに、一体なにがあったというのか?


 考えられるのは誰かがいい加減な仕事をして、見逃した奴が潜んでいるとかだろう。


 ちっ、全くめんどくさいぜ。


 だが、それもゴドイの海賊船と会合するまでだろう。


 海賊船が接触して海賊達が乗り込んできたらいい加減諦めるだろう。


 そこで外の豪雨が気になって来た。


 かなり見通しが悪いので、海賊船との接触ができなかったら一大事なのだ。


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