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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第12章 魔女VS黒蝶
354/416

12―3 遊覧旅行1

 

 リーズ服飾店の社長ベネディッタ・リーズは、パルラ店の販売主任ルーチェ・ミナーリから重大なお願いがありますと、別室に引っ張られていった。


「それで3日間の休暇が欲しいって?」

「はい、オーナー、これはパルラ店の上得意様への接待ですぅ。私偉いですよねぇ。お客様の接待なのにぃ、休みをとって仕事してくるのですからぁ」


 リーズ服飾店は、ユニス様が考案した様々な服のおかげで売り上げ好調だった。


 相手は上得意客というだけではなく、上級貴族様でもあるのだ。


 それなら私が接待しないと、相手に失礼なのではないだろうか?


 それに仕事だと言い張っているのにルーチェの顔がとても嬉しそうなのが、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまうのだ。


「ねえ、本当に接待なの?」

「え? そうですよぅ」


 そう言ったルーチェの目が一瞬泳いだ事を見逃さなかった。


「そう、ならユニス様は上得意様ですから私が接待します」

「え、あ、あの、その」


 ルーチェの明らかに狼狽した様子を見て、絶対何か隠しているのを確信した。


「怒らないから正直にいいなさい」


 するとようやく観念したのか、しぶしぶといった感じで本当の事を話してくれた。


 成程、ユニス様が皆を集めて水遊びをするのか。


 そんな面白い、もとい、あのお方の事だからまた新しい服を考案しているかもしれないから、あくまでも仕事上の付き合いとして私も同伴した方が良さそうよね。


「分かりました。それなら3日の休暇を許可しましょう」

「やったぁ~」

「ただし、私も一緒に行きますね」

「え? えぇぇぇぇ」


 ルーチェは上司同伴にちょっと渋い顔をしていたが、それでも遊びに行ける事で納得したようだ。


 そこでふっとあの2人にもこの情報を教えなかったら、後で酷い目にあわされそうだと気が付いた。


 あ、危なかったわ。ちゃんと伝えておかないとね。


 +++++


 ジュビエーヌとの間で日程調整していると、クマルヘムの白猫からバラシュが到着した事を知らせる連絡蝶が送られてきた。


 早速クマルヘムに向かい、バラシュと白猫達とドワーフ移転の第1陣について調整することになった。


 俺の方からは人数分の運搬用ゴーレムを作る事にして、クマルヘムで第1陣を宿泊させるたけの能力が無かったので、こちらにも急遽宿を作る事にした。


 バラシュが自分達で野営するから大丈夫だというのだが、女子供が一緒だと長旅の疲れを取る為にもゆっくり休める宿は必要だろう。


 そこでコの字型の建物にして、中庭で竈や野営が出来る空間を作る事にした。


 食材や薪等の必需品はクマルヘムで用意できるという事なので、手配はこれで問題無いだろう。


 一通り準備が済んだところで、黒犬に出発の塔で回収してきた変化石を見せた。


「ユニス様、これは何ですか?」

「これは変化石と言われる物で、衝撃で液化して、魔素を吸収すると固くなるのよ。例えば、攻撃対象に投げつけると液化して包み込み、相手の魔素を吸収して固まるから簡単に捕獲できそうじゃない?」


 俺がそう提案してみると、それまで怪訝そうな顔をしていた黒犬がその効果を理解したようで目が輝きだした。


「成程、私にこの素材でマジック・アイテムを作って欲しいという事ですね?」

「ええ、お願い出来る?」

「ええ、これは作るのが楽しみですね。これがあると隠密モグラも簡単に捕まえられそうです。ところで、これで何を捕まえるんですか?」


 特に目的があるわけじゃないと言おうとしたら、白猫がとんでもない事を口走った。


「ああ、そう言えば男日照だったんですよね。色男の寝込みでも襲ってかっさらうつもりですか?」

「ほほう」


 そんな訳あるかぁ。


 それにバラシュよ、なに良い事を聞いたという顔をしているんだ。


「バラシュ、何か誤解があるようですが、そんな事を決してドワーフ王に言わないでくださいね」

「え?」

「い・い・で・す・ね?」

「お、おう」


 なんだが分からないがバラシュが残念そうな顔をしているが、ここは絶対に釘を刺しておかないと、万が一にもドワーフ王から男ドワーフでもあてがわれたらたまらないからな。


 ドワーフ移転計画が大体まとめてパルラに戻って来ると、何度かやり取りをしていたジュビエーヌからようやく日程の連絡が来た。



 そして遊覧旅行当日、早朝公都アドゥーグまで迎えに行くと、そこにはジュビエーヌのほかクレメントとタスカ学校長が居た。


 クレメントは弟だし、まあ分かる。


 だが、どうしてこの老人が居るんだ?


「クレメント様お久しぶりです。そしてタスカ学校長、お見送りですか?」

「ほっほっ、ガーネット卿はいつもそう聞いてくるの。当然同行するに決まっておるだろう」


 クレメントは横を向いて頷き、タスカ学校長はそう言って楽しそうに笑っていた。


 そしてジュビエーヌは困ったような顔をしていた。


「ユニス、3人でも大丈夫かしら?」

「ええ、問題ありません」


 ジュビエーヌの困った顔を見たら駄目とは言えないよな。


「それから身の回りのお世話をする人員は何名になりますか?」

「侍女長が優秀な女官を5名選定してくれました」

「分かりました」



 ジュビエーヌ達をパルラまで案内すると、早速遊覧旅行で使う水着を選びにリーズ服飾店にやってきた。


 ジュビエーヌはハンガーにかかった水着を見て固まっていた。


「ちょ、え、ユニス、これ、私が着るの?」


 俺とジゼルはオーダー品の試着をしていたが、その困惑を含めた声に頷いた。


「ええ、せっかくの水遊びなんだから、服装もそれらしくしないとね」


 するとジュビエーヌの焦った声が聞こえてきた。


「え、ちょ、ユニス、それにジゼルさんも、なんで裸になっているのよっ」


 俺とジゼルはセパレートタイプの水着を身に着けて、お互いの恰好をチェックしあっていた。


「え、ちゃんと着ているじゃない。それに、この時期の西アルアラ海は温暖だから寒くないわよ?」

「いや、そうじゃなくて、そんな恰好をして恥ずかしくないのかって意味よ」

「ああ、これを着るのは無人島の砂浜だから誰も見ないわよ。それにジュビエーヌに用意したのはワンピースタイプだからそんなに露出しないでしょう?」


 俺がそう指摘するとジュビエーヌは俺達の恰好とハンガーにかかった水着を見比べてう~んと唸っていたが、やがて諦めたのか、悟ったのか、ようやくハンガーにかかった水着に手をかけた。


 ジュビエーヌが選んだ水着は、胸や腰の部分に沢山のフリルが付いたものだった。


 3人してお互いの恰好をチェックしてようやく納得すると、試着室から出て行った。


「ガーネット卿、やっと決まりましたか」

「女ボス、遅いです」

「おい、一体どれだけ待たせるんだ?」


 ガスバルとベルグランドにはクレメント殿下のお守を頼んでおいたのだが、2人の疲れた顔を見たら相当大変だったようだ。


「お待たせ、それじゃリグアに向かうわよ」


 リーズ服飾店を出ると、そこには今回リグアに向かう参加者が待っていた。


 まさか、本当にルーチェが3日の休みを取れるとは思っていなかったが、そしてその後ろにはあの3人の女社長達の姿もあった。


 まさかあの3人まで付いてくるとは思わなかったが、既にリーズ服飾店で水着を作ったという話だし、行く気満々なところで駄目とは言えないよな。


 結局、俺とジゼルにビルギットさん、大公姉弟、タスカ学校長、女社長達とルーチェ、護衛役のガスバルとベルグランドそれとオーバンとトラバールを入れた14人それとジュビエーヌの世話係が5名となった。


 当然、4体のオートマタも一緒だけどね。


 まあ、遊覧船はその程度なら余裕だからいいのだが、食材の方はメラスが渋い顔をしそうだなぁ。


 +++++


 ナチョはリグアの町で盗賊団の金品を換金していた時、フニベロ盗賊団がレブス砦で壊滅した事を知った。


 戻る場所を失ったナチョはお宝の護衛として付いてきた3人の生き残りとリグアの町に残り、換金した金で堕落した生活を送っていた。


 そんな生活をしていれば、手持ちの金が無くなるのも時間の問題だった。


 それでも他に金を稼ぐ手段が無くイライラしたナチョは、気晴らしをするため行きつけの酒場にやってきた。


 そこで酒をちびちび飲んでいると、酒場にやってきたメラスの手下達が隣のテーブルに座ったので、その会話が漏れ聞こえてきた。


 それによると港で建造していた豪華船が完成し、発注主がメズ島まで遊覧旅行に出かけるので食料品を手配するという内容だった。


 水遊びの為だけに豪華船を造ってしまうような金満家なら、ちょっとした資金稼ぎが出来るんじゃないかと思いついた。


 それに最近のリグアは、裏社会の人間が潜伏するに都合の良い街からどんどん様変わりしてきており居心地が悪くなっていたのだ。


 まとまった金を稼いで、別の町にいってみるのも悪くない。


 酒場を出ると早速フニベロ盗賊団の生き残り3名とともに船に潜り込む事とし、西アルアラ海で海賊行為をしている連中を探す事にした。


 くくく、これは面白くなりそうだ。


 +++++


 リグアの町では、フーゴとカルバハルが出迎えてくれた。


 歓迎してくれるのはいいのだが、なんで「歓迎、魔女様御一行様」と書かれた横断幕を掲げているんだよ。


 恥ずかしいからやめてほしかったが、フーゴとカルバハルがとても嬉しそうな顔をしているので、余計な事は言わないようにした。


「魔女様、お待ちしておりました。早速船を見ますか?」

「ええ、あ、それと人数が増えたから積み込む食材を増やしてほしいんだけど、メラスは何処にいるのかしら?」

「それなら私がメラスに伝えておきます」


 フーゴはそう言って駆け出していった。


 残ったカルバハルは俺達を桟橋に案内してくれた。


 そこには現代日本ではおなじみのコンクリート製の大型船が接岸できる桟橋が出来上がっていた。


「これはフリン海国に造ってもらいました。海底も浚渫しゅんせつされていてフリン海国の1等艦でも問題なく接岸できます。そしてこれが魔女様御用達の遊覧船です」


 カルバハルが自慢げに紹介したその船はポンプジェット推進船で、帆走用のマストが無い甲板には船首に向けてカタパルトが1基、両舷に突き出したガンデッキには計6基のハープーンガンが設置してあった。


 操船は現代の船と同じく航海用の艦橋で行うようになっていて、艦橋の後ろには娯楽室と食堂、船室その上に展望デッキ、後甲板先端は一段低くなっていて客室から出られる構造になっていた。


 そして何もない広いスペースになっている後甲板は、現代の戦闘艦ならヘリコプター発着甲板にも見えるが、俺が皆に飛行魔法をかけて飛び立つ場所なのだ。


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