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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第1章 百万ルシアの賞金首
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1-22 パルラという町

主人公がやって来た町の紹介となります。

 

 パルラという町が何処にあるかと言うと、ロヴァル公国の北西に位置するドーマー辺境伯領のヴァルツホルム大森林地帯と隣接した場所である。


 ドーマー辺境伯領の領都ダラムからは真北に位置しており、ダラムとパルラを結ぶ道路は、石畳で綺麗に整備されていた。


 ここは表向き、ヴァルツホルム大森林地帯の魔物から領地を守る軍事拠点となっていた。


 そしてそれを裏付けるように、拠点の周囲には森林地帯の木々よりも高い壁がぐるりと取り囲み、出入りできる門も南側に1つあるだけで、他は小さな勝手門が北側にあるだけだった。


 だが、中に入ると様相は一変する。


 中には、賭場、酒場、亜人等を戦わせる闘技場、娼館それに紫煙草というこの世界の麻薬を楽しむ場所と、客が宿泊するための施設が立ち並び、それを領主の私兵が守っていた。


 ここはドーマー辺境伯が政治工作や金持ちから金を巻き上げるための施設であり、飲む、打つ、買うという男の3大娯楽が揃った場所なのだ。


 当然のことながら、この町に出入り出来るのはドーマー辺境伯が会員と認めた人物だけで、その中にはロヴァル公国外の貴族や商人等も含まれていた。


 そしてこの町に遊びに来た客達が町中を移動するために使う馬車の事を考え、道は大型馬車が余裕で行き交う事が出来る程広く整備されており、道が渋滞して客がイラつく事が無いように配慮されていた。


 そして各施設にいる従業員は、プロ意識の高い高級店の従業員かドーマー辺境伯が買ってきた獣人奴隷しか居ないので、遊びに来た貴族達が街中でどんなに羽目を外してもその醜態が外に漏洩する事も無く、安心して憂さ晴らしが出来る場所となっていた。


 アルベルト・フラーキは、ドーマー辺境伯からパルラの警備関連の一切を任されていた。


 そして今彼は、各施設に異常がないか見回りをしていた。


 最初に向かったのは会員制カフェだった。


 ここは制服の胸の部分がむき出しで短いスカートという特別仕様の給仕服を着る従業員が、入店した客達に個室テーブルで特別サービスを行っていた。


 このカフェでは裏メニューもあり、注文時に裏メニューと言えば給仕の獣人をその場で抱くことも可能なのだ。


 俺は見回りついでに、お茶を一杯貰うと店長に売り上げを尋ねてから店を出た。



 2番目に向かったのは賭場だった。


 この施設は1階が競馬場となっており、スタートとゴールが1階の目の前にあり、その先に馬が走る楕円形のトラックがあった。


 ここで行われる競馬は、完全武装した騎士達がコースを走る競技や軽装で障害コースを走る競技、コースに放たれた獲物を狩る競技等があった。


 そしてコース上に的を作りそれを矢で射る流鏑馬も行われており、コース上から狙える的の距離が遠い物や動く物は高得点、近い物は低得点となっていて合計得点を競う物で、これは貴族が連れてきた騎士に参加させて楽しむ行事になっていた。


 2階は定番のカード等のテーブルゲームが並び、駒を使った対戦型の戦争ゲームなんかもあった。


 これは知り合い同士で2手に分かれて遊ぶもので、毎晩貴族達が酒や紫煙草をやりながら楽しんでいた。


 今は営業時間外なので店では店員が掃除をしており、運搬人達が酒樽や食料の木箱を運び込んでいた。


 俺は店長に売り上げを聞くと店を後にした。



 3番目に向かったのは酒場だった。


 この店では、普段はなかなか手に入らないエルダールシア大陸産の高級酒が、フリン海国経由で入ってきていた。


 その国は大陸南西、ルフラント王国の南に位置しており、エルダールシア大陸の商人達によって作られた港が、発展して国になっていた。


 そしてドワーフ達が作った酒精の強い酒も置いてあるのだ。


 バーにはカウンター席と後はボックスシートのみとなっており、知らない客達が顔を合わせる事がないように入口と出口が別に設けられていた。


 酒場は今準備中、従業員が酒樽を運び込んでいた。


 俺は店長と雑談をして店を後にした。



 4番目に向かったのは娼館だ。


 この店は獣人の雌が大半だが、奴隷商人から買った人間もかなりの数が居るのだ。


 客によっては暴力を振るわれることもあり、怪我を放置すると商品価値が下がってしまうので隣には薬屋も併設していた。


 だが、この薬屋で扱っている薬は性病用と客によってつけられた切り傷や擦り傷、打撲用の物で、高額な治癒ポーション等は置いていない。


 娼館には、時折人間と獣人の間で諍いが起こるので、呼び出されることもあるのだ。


 他にも性病で働けなくなると、その後始末もこちらに回ってくる。


 ここでは特別な性癖を持つ客にも対応しており、拷問部屋とか女達をいたぶる様々な道具を置いた部屋も存在していた。


 このような特殊性癖の客は、金払いがいいので重宝していた。


 俺がこの店の女主人と経営状況の話をしていると、部下の一人が慌てて俺の傍にやってきた。


「フラーキさん、生産所に魔物が出てかなりの被害が出ているようです」


 生産所とは、この町に隣接するヴァルツホルム大森林地帯の中に密かに作られている紫煙草の畑の事である。


 この草は名前の通り焼くと紫色の煙を出し、その煙を吸うと脳が刺激を受けとても気持ちが良い幻覚を見る事が出来た。


 この町に遊びに来る客達は、必ずこの麻薬を楽しんでいくのだ。


 この草は違法なので、こうやって密かに栽培しているのだ。


 そして魔物が出る大森林の中での栽培には大きな危険が伴うので、ここで働く従業員は全て獣人奴隷だった。


 この町で使う獣人奴隷はみなルフラント王国の奴隷商人から買っているが、今回のように森林内で魔物に襲われたり、娼館で壊れたりするので定期的に補充していた。


 そう言えば、少し前にもルフラントの奴隷商人達がやってきたが、あいつ等の目的は大森林の中に現れた人に化ける魔物だと言っていたな。


 なんでも百万ルシアの獲物だとかなんとか。


 もしかして、あいつ等が何かやらかしたんじゃないだろうな。


 アルベルトは武装を整えると、手勢を率いて生産所に向かった。



 現場についた俺はその場の光景を見て固まっていた。


 生産所では畑が踏み荒らされ、負傷した獣人が数人転がってはいるが魔物の姿はどこにも無かった。


 その殺伐とした戦闘現場に、明らかに場違いな美しい女性がいた。


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