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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第7章 アイテールの黒い霧
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7―25 掃討戦

 

「初めまして、私はユニス・アイ・ガーネットと言います。この度は、リングダール殿の要請に応じて、この国の救援に参りました」


 俺の挨拶に、ようやく我に返った法衣の男は、右手を胸に置く仕草をしながら挨拶を返してきた。


「これは失礼いたした。私はミリオン・アイテールです。避難してきた者らを助けてくれて、そして我が国に未来を与えてくれる事に感謝いたします」


 アイテールの後ろには避難してきたと思われる町の人達がひしめいていて、これから何が起こるのかとじっとこちらを見つめていた。


 そして町の状況を聞くと、上空から見た通り陥落寸前とのことだった。


「それじゃ、早速、アンデッドを掃討しましょう」


 俺がそう言うと、すかさずアイテールが聞き返して来た。


「失礼、貴女とその人形だけで、ですか?」


 アイテールの視線の先にはグラファイトが居た。


 まあ、それだけじゃ手数が足りないと思うよね。


「いえ、ちゃんと軍勢を用意しますよ」


 俺がそう言うとアイテールは、俺の肩越しに何も居ない空間を見てから視線を戻した。


 その顔には、明らかに失望の色が浮かんでいた。


「まさかとは思いますが、ここで魔力を使い切るおつもりなら、それはサン・ケノアノール解放に取っておいて頂きたいのですが」

「ご心配には及びません。まあ、見ていてください」


 そしてグラファイトから土人形を入れた袋を受け取ると、それを地面に置いて錬成を始めた。


 錬成陣の上に置いた土人形は、埋め込まれた魔宝石の魔力で戦闘用ゴーレムに変化していった。


 50体の戦闘用ゴーレムが整然と並ぶ姿は、正に軍勢と言える程の威容を放っていた。


 そしてアイテールの顔を見ると、そこには驚きの表情が浮かんでいた。


「ガーネット殿、こんなに作っては魔力をかなり消費したのでは?」

「大丈夫ですよ。このゴーレムは埋め込んである魔宝石の魔力を使っていますから」

「ほう、それで、この軍勢でサン・エルムの民を助けてくれるのですか?」

「ええ、そのつもりですよ」

「それはとても嬉しいのですが、見返りは何です? まさか無償だなんて言いませんよね?」


 まあ確かに他国や他人が見返りなしに助けてくれるなんて、そんな都合が良い事なんて無いからな。


 ここはリングダールが言った事を、確かめておくのが良さそうだな。


「リングダール殿からは、貴国が持っている歴史書を見せてもらえると聞いています」

「歴史書? 魔法書ではなく?」

「ええ、貴国にはバンダールシア大帝国時代の歴史書もあるのでしょう。とても楽しみにしているのですよ」


 アイテールは一瞬リングダールの方を見たが、直ぐに笑顔になって頷いてきた。


「分かりました。それでは禁書庫にある歴史書の閲覧を許可しましょう。禁書庫はサン・ケノアノールの奥の院の地下1階にあります。1階に鍵がありますので、後ほど場所を書いたメモを渡しましょう」


 よし、言質は取ったぞ。


「それでは掃討作戦を始めましょうか」


 小さなメガホンを取り出して、50体のゴーレムに命令した。


「1番から10番は北、11番から20番は東、21番から30番は南、31番から40番は西そして41番から50番は中央のアンデッドを掃討してきなさい」


 指示を受けたゴーレム達は10体1組になって、受け持ち地区のアンデッドを掃討に向かった。


「ゴーレムの戦闘力なら、この町の解放も時間の問題でしょう」

「それは素晴らしいですね。まさか、ガーネット殿はゴーレムの錬成も行えるのですね。それなら余計に魔法書の方に興味を示すのではないのですか?」


 普通はそうだけど、元の世界に帰るためには過去の文献が必要なんだよ。


 まあ、本当の事は言えないけどね。


「私は人種の歴史に詳しくないので、相手の事を理解できれば誤解も減るでしょう?」

「ほう、そのようなお考えなのですね」


 なんだが、複雑そうな顔をしているな。


 そんな時、13番と35番のゴーレムからの反応が消滅した。


「どうやら強敵が2体居るようですね。グラファイトは東を、私は西に行きます」

「承知しました」




 町の西側でゴーレムの反応が消えた地点に到着すると、そこにはゴーレム達の仕事の成果である骨の残骸があちこちに散らばっていた。


 そして35番の残骸と思われる、粉々になった石の山が目に付いた。


 そしてゴーレムの動力源だった高価な魔宝石がそのままになっていることから、35番を屠ったのはアンデッドで間違いなさそうだ。


 周囲には人もアンデッドの姿も無かったので、とりあえず35番の魔宝石を回収しようと残骸に近づくと、それを待っていたかのように骨の馬に乗った骨の騎士が現れた。


 骨の騎士はカタカタと歯を打ち鳴らすと、馬上槍を水平に構えた。


 鎧を纏っていない骨の騎士は、自分の肋骨の隙間に水平に構えた馬上槍の柄を挟み込みランスチャージの態勢を取っていた。


 どうやら待ち伏せされたようだ。


 35番を破壊したのは、この骨の騎士で間違いないだろう。


 ランスチャージに対抗するには、槍兵のファランクスか鉄砲等の飛び道具だ。


 俺は手に持ったスリングショットに赤色の弾を装填した。


「さあ、何時でもいいぞ」


 その言葉を合図に骨の騎士が突撃を始めると、その速度は予想よりも早かった。


 こちらが飛び道具を持っているのを気付いているのに真っすぐ突っ込んでくるとは、効果が無いと思っているのか、それともこちらの弾を避ける自信があるのか?


 だが、相手の予想通りの行動をしてやるほど、俺は優しくないのだ。


 弾かれたように一瞬で上空に舞い上がると、骨の騎士が居るあたりに狙いをつけた。


 するとそこには馬を止めてこちらを見上げる骨の騎士の姿があった。


 下あごを開いて口を開けているので、こちらの想定外の行動に戸惑っているのだろうと想像できた。


「取った」


 止まった相手を仕留めるのはとても簡単だ。その阿保面に向けて赤弾を撃ち込んだ。


 グレネードは骨の騎士の開いた口から入り爆発した。


 骨の騎士とその乗馬の骨は粉々になって砕け散り、残ったのは骸骨騎士が持っていた槍だけだった。


 +++++


 町の東側ではグラファイトが13番の残骸から魔宝石を回収していると、大きなハンマーを持ったスケルトンが現れた。


「おや、貴方ですか、恐れ多くも大姐様の大切な人形を壊した不心得者は」


 だが、そのスケルトンは当然喋れないので、手に持ったハンマーを振り回して自分の威を示していた。


「それでは、大姐様への冒涜の罪として貴方を処断しよう」


 グラファイトはウォーハンマーを振り回すスケルトンに、まるで散歩でもしているかのように歩み寄った。


 その頭に向けてスケルトンがウォーハンマーを横なぎに振り放ったが、そのハンマーはグラファイトの手で簡単に止められた。


 そしてグラファイトの鉄拳がうなると、22代のスケルトンは粉々に砕け散った。


 +++++


 町に侵入したアンデッドの掃討が終わると、ゴーレム達が戻って来た。


 それを見たアイテールが話しかけてきた。


「それで、豊穣なる大地形成の魔法は撃てそうですか?」


 おっと、ここで簡単ですなんて答えたら、後で厄介事に巻き込まれる危険があるからな。


 ここはとても大変だというふりをしないと。


「補助が無いと無理ですね」

「補助と言いますと?」

「これです」


 そういうと戻って来たゴーレムを土に戻して、残った土の中から魔宝石をつまみ上げた。


「これは魔宝石ですな。それにしても、これはまた随分と見事な代物ですね」

「これを50個使います」

「えっ、そんなにですか? それではかなりの出費ではないのですか?」


 俺は驚いているアイテールの顔を見て、にっこりと微笑んだ。


「ええ、これだけの出費をするのですから、当然私の要望はしっかり聞いてもらいますからね」

「ああ、そうでした。これを」


 そういうとアイテールは、鍵と禁書庫の場所を記した奥の院の地図を渡して来た。


「ありがとうございます」

「いえ、お気になさらず。それにしてもこれだけの魔宝石を一体どうやって集めたのですか?」


 俺はそれにはにっこりと微笑むだけで、答えなかった。


 こういった場合は、言わない方がいい事もあるからな。


「それでサン・ケノアノールを見下ろせる場所はありますか?」

「ああ、それなら丁度良い丘が町の北東側にあります。リングダール、案内して差し上げなさい」

「畏まりました」


 アイテールがそう命じるとリングダールが一歩前に進み出て、俺の方に頭を下げた。


「ガーネット卿、準備が整いましたら直ぐに出発しましょう」

「分かりました。それでは早速向かいましょうか」

「え、よろしいのですか?」

「ええ、問題ありませんよ」


ブックマーク登録ありがとうございます。

4-22の内容が別物になっていましたので修正しました。ご迷惑をおかけしました。



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