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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第5章 異色の女経営者
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5-31 仮装祭り4

 

 祭り当日の俺の予定は、祭りの開始を宣言すると午前中は無蓋馬車でのパレード、午後はファッションショーに参加することになっていた。


 食堂で朝食を済ませると、ビルギットさんとジゼルに手伝って貰って曲がりなりにも貴族当主なのでそれなりのドレス姿に着替えていた。


 普段楽な恰好をしていると、こういった格式ばった格好は何だかこう精神的に肩が凝る気がするんだよね。


 ジゼルに連れられて中央広場に行くと、既に皆集まっていた。


 彼らの前にある一段高くなった場所に上って集まった人達の顔を見回すと、祭りの雰囲気に当てられて既に顔が赤い者がぽつぽついるようだった。


 おいおい、朝から酒飲んで出来上がっているのか?


 それとも前夜祭とか言って昨晩から飲み続けているのか?


「えー、お集まり頂いた紳士淑女のみなさん、本日の祭りは種族を越えて仲良くしましょうという趣旨で実施されます。そのため種族が分からないように皆で仮装して、先入観で相手を拒否することが無いようにしてもらいます。皆仲良く祭りを楽しんでくださいね。仮装していれば店で提供する飲食や遊戯場は無料となります。それではこれでパルラ仮装祭りの開催を宣言します。日が変わるまで楽しんで下さい」

「「「おおお~」」」


 集まった人のうち仕事がある人達は、早速自分達の露店に行って開店準備を始めていた。


 店主達も祭りを楽しめるように交代制になっていた。


 俺はこの後始まるパレードの為に、再び着替えをすることになっていた。


 パレードでは俺や人間達が獣人の恰好をするので、元々獣人のジゼル達が仮装する必要は無いのだが、何故かジゼルの手にはかつらとカチューシャがあった。


「ジゼルそれは?」

「ユニスの真似」


 そう言うと手早くかつらをとカチューシャを身に付けた。


 するとそこに俺が現れた。


 いや、正確には俺が纏っている保護外装の外見にという意味だが。


 俺がその恰好に驚いていると、ジゼルがその理由を教えてくれた。


「仮装祭りってこの町のお祭りなんでしょう。だったら、私達だって仮装してもいいわよね?」


 そうだった。


 人間にばかり意識していて、獣人の事を忘れていたな。


 これは俺のミスだ。


 そしてジゼルは何処から手に入れたのか偽色眼まで持っていて、それで赤い瞳になっていた。


「そうだったわね。皆で楽しみましょう」


 そしてパレード用の馬車を止めてある空き地まで来ると既に参加者が集まっていてその中に獣耳と尻尾を付けたベルヒニア達エルフも居た。


「ベルヒニアさん、参加してくれてありがとう」

「ユニス様、私達もお手伝い出来る事がとても嬉しいです」


 そして仮装したトマーゾが同じく仮装した孫娘のファビアちゃんを連れてやって来た。


 チェチーリアさんは露店の準備があるのでパレードには参加しないが、トマーゾはパレードに参加するファビアちゃんの付き添いでついてきたようだ。


「ファビアちゃん、とってもかわいいわよ」

「ありがとー」


 俺がファビアちゃんと挨拶していると、後ろに居たトマーゾはとても恥ずかしそうな顔をしていた。


 なんだかんだ言っても、ちゃんと仮装はしてくれたようだ。


 ここはちょっと弄ってやるのが大人の対応か?


「トマーゾさんもよくお似合いですよ」

「ユニス様、心にもない事は言わないでくださいよ」

「御免、御免、でもパレードにはファビアちゃんと一緒に参加してくれるのでしょう?」

「はい、世話役が率先して参加しないと示しがつきませんからね」


 パレード用の馬車は、箱型ではなく沢山の人が乗れるように平形になっていた。


 パレードはパルラの町にある3つの環状道路の1つである第二環状道路を1周してから中央広場まで来るルートとなっていた。


 パレード中は沿道で声援を送る人達に手を振って答えながら、のんびりとパルラの町を1周した。


 町中を回っている時、バルギット帝国の領事館前を通ると窓が開いてこちらに手を振るスケコマシの顔があった。


 まったく、この世界にも投げキッスがあるとは思わなかったぜ。


 だが残念だったな。


 俺にその手の趣味はないので、落とせると思っているのなら期待外れだよ。


 パレードが中央広場まで来ると、俺達は馬車を降りて暫く自由時間となる。


 せっかくなのでジゼルを誘って、祭りを楽しむ事にした。




 そしてファッションショーをしなければならない時間になった。


 闘技場に行くと既に人が集まっていて、俺達の姿を見るのを楽しみにしているようだ。


 俺やジゼルが入って行くと皆歓声を上げて出迎えてくれたのだ。


 楽屋に行ってみるとショーを手伝うと言っていたエイヴリル・アッカー達が待っていて、その後ろにはショーで使う衣装だと言って沢山の木樽が運び込まれていた。


 俺はカフェ「プレミアム」と酒場「エルフの耳」の制服を着るだけだと思っていたのだが、どうやら町の人達に聞いて俺達に着て欲しい服を募ったようだ。


 最初に出された衣装はウジェ達が農作業に使っているツナギ服で、一緒に出るルーチェ・ミナーリはそれを見てほっとしているようだった。


 エイヴリルからは最初ステージの中央に立って皆に挨拶して、それから右手前に行きそこで1回転、次は左手前で1回転、最後に中央に戻ってそこで1回転して観客に衣装を見せるようにと指示された。


 エイヴリルは俺が渡した小型のメガホンを手にステージの袖に出ると、そこで観客達に話しかけていた。


「ご来場の皆さん、お待たせしました。これからショーを始めます。まず1番は農作業で使うツナギです」


 俺達はそこで合図を受けてステージに出ると、中央が俺、右にジゼル、左にルーチェという布陣になった。


 会場からは俺達の姿が現れると歓声が上がった。


 そしてエイヴリルの指示通りの動きをすると、観客席の一角から盛んに歓声が上がった。


 そこにはウジェ達の姿があった。


 そして彼らが点数を入れたのだ。


 その後ベイン達が作業用に来ている制服を着ると、会場でベイン達が居る当たりから歓声が上がったので、皆自分達の制服を着て貰えるのが嬉しいのだと分かった。


 そうなると、カフェや酒場では殆ど従業員が居ないので優勝することはないだろうとほっとしていた。


 プレミアムのエプロンが終わると、次はカストが酒場の制服だと言い張るバニースーツだ。


 プレミアムの評価が大したことが無かったので、点数を入れるのはその制服に関わり合いがある人間だけだという予想は当たっていたようだ。


 この分なら酒場は、あの店長しか居ないので最低点になるだろう。


 ルーチェはバニースーツを見て固まっていたが、何とか宥めすかして着てもらうと、ステージに上がった。


 すると今度は男共の上げる低い「おー」という声が聞えてきた。


 まあ、この恰好だと体の線が出てしまうからなあ。


 横目でみるルーチェは、恥ずかしいのかプルプルと小刻みに震えているようだった。


 そして演出が終わりステージ中央に戻ると採点を待つことに。


 今の所トップは、人数が多かったベイン達の作業服で32点だった。


 会場のスペースの問題でそれ程多くの人間が入れないのだから、これは仕方がないだろう。


 そして点数を見て目が点になった。


 そこには34点と表示されていたからだ。


 え、なんでこうなった?


 +++++


 会場では酒場の店主カストがビアッジョ達と集まってお互いの肩を叩いて健闘をたたえ合っていた。


「まさか勝てるとは思わなかったぜ。これもビアッジョの旦那のおかげだよ」


 カストがそう言ってビアッジョの肩を叩くと、ビアッジョはどこか遠くをみるような眼になっていた。


「俺は、商人に化けたユニス様と一緒にダラムに行った事があるんだ。その時、ユニス様は態と馬車内で短いスカートで足を組み直すんだぞ。その度に俺の視線がスカートの中に行ってしまうと、それを見てユニス様はニヤリと笑うんだ」


 それを聞いたカストはその場面を思い浮かべてみた。


 ユニス様は妖精種の御多分に漏れずとても美しいのだ。


 そしてその体付きは思わずしゃぶりつきたくなる程なのだ。


 そんな女性から誘われたら、とてもじゃないが耐えられそうになかった。


「うわっ、旦那、良く耐えられましたね? ある意味で旦那は勇者だと言えますぜ」

「だろう。俺はずっとそれに耐えなければならなかったんだ。あの苦しみに比べれば、これくらいの仕返しは十分許容範囲だと思うだろう?」


 そういうと旦那はニヤリと悪い笑顔を向けてきた。


 俺としてはそのおかげで、ユニス様のあの魅惑的な肢体を近くから鑑賞出来て、店の売り上げも大幅増になるのだから大助かりだ。


 旦那とはいい関係が築けそうだ。


 そして俺達は同志になったのだ。


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