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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第5章 異色の女経営者
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5-30 仮装祭り3

 

 第31代大公ソフィア・ララ・サン・ロヴァル様が推進した女性の社会進出政策で、公都エリアルでは女性が経営する会社が沢山設立された。


 そんな会社の1つエイヴリル・アッカーが設立したバンケット会社は、高位貴族のように使用人を沢山雇えない振興貴族や商家で実施する晩餐会や夜会等のお手伝いをする内容で、最近はようやく仕事が増えつつあった。


 だが、それを良く思わない保守勢力からの横やり等もあり、事業拡大はなかなか厳しい状況だった。


 そんなある日、公国で事業を営む女社長達の会合がエリアルで開催されることになり、私は友人のビリアナ・ワイトと一緒に参加したのだ。


 彼女は公都で香水関係の会社を経営していて、色々な香りの提供や消臭等も手掛けていた。


 魔法で洗浄は出来ると言っても、人口密度が高い地域ではどうしても生活臭に悩まされるので、それを香りで誤魔化したり消臭するのは普通に行われていた。


 私が依頼されたとある商人の接待で、女性が好む香りが必要だった事もあり、一緒に仕事をしたのだ。


 それ以来ビリアナとは友人関係を続けていた。


 そして会場にリーズ服飾店のベネデッタ・リーズが現れたのだ。


 彼女はエリアルで先帝陛下のドレスを仕立てた事から注目を集めるようになり、今では貴族達が最も贔屓する高級店になっていた。


 そして今度は現大公陛下御用達という触れ込みで、斬新な女性向け下着の販売でも人気を得て、今一番成功した社長と言われていた。


 私はそんな彼女にちょっと嫉妬していたのだ。


 その彼女が声を掛けてきたのだ。


「えっと、エイヴリル・アッカーさんとビリアナ・ワイトさんですね?」


 リーズ服飾店の女社長は、濃紺のシックなドレスで成功した大人の女性といった雰囲気を纏っていた。


 暫く世間話をしていたが、意外にも気さくな性格だというのが分かった。


 鼻持ちならない性格だったら直ぐにでも立ち去ろうと思っていたが、その心配はなさそうだった。


 すると思いがけない誘いを受ける事になった。


「ねえ、私達のような女性が住みやすい町があったら、行ってみたいと思わない?」


 公都はトップである大公陛下が女性なので、私達にとっては比較的住みやすい町なのだ。


 仕事で地方の貴族領に行くと雰囲気が古風と言うか保守的というか、仕事をする女性には冷たい雰囲気があった。


「もし、そんな町があるのなら興味はありますね」


 私がそう言うとリーズ女社長はとても嬉しそうな顔をして、パルラに行こうと誘ってきたのだ。


 聞いた噂では、そこは女エルフが統治している獣人の町で、ヴァルツホルム大森林地帯に隣接する公国一危険な場所といわれていた。


 それを知っていたので最初は犯罪者の町だと思って眉をしかめたのだ。


 だが、リーズ社長はそんな町に店舗があるというのだから更に驚きだった。


 それでもリーズ社長のお誘いを断り切れず、つい行くと言ってしまった手前、後で断る事も出来ずパルラまでついて来てしまったのだ。


 パルラの南門では強面の獣人達が通行人のチェックをしていて、声を掛けられた時は恐怖で鳥肌が立ってしまった。


「おい、お前達、客か?」

「ちょっとトラバール、もっと愛想よく接しなさいよ。皆固まっているわよ」

「ああ、これはすまなかったな」

「まったくもう。あ、御免なさいね。それでパルラにはお仕事で? それとも観光で?」


 何と言えばいいのか迷っていると、ベネデッタが横から顔を出した。


「あ、どうもリーズ服飾店のベネデッタ・リーズです。この2人は私の友達です」

「ああ、そうだったのですね。私はジゼルと言います。このまま入って良いですよ」


 ジゼルと名乗った獣人の女性は、先程の男性獣人とは違い、とても親しみやすい笑顔を向けてくれた。


 パルラの町は他の町と違っていて、門の中は整備された広い道と植え込みが広がっていた。


 そしてたまに見かける住民は、獣人ばかりではなく人の姿もあった。


 しかもあの危険な大森林と隣接しているというのに、通行人の顔に緊張感はなくとても平和そうに見えた。


「ねえ、危険な森の傍なのに、どうしてここの人達はこうも呑気なの?」

「ああ、店の娘に聞いたんだけど、ユニス様が居ると魔物が寄り付かないみたいなのよ」


 エルフ種は魔力が高いというが、そのせいだろうか?


 そして連れて行かれたリーズの店で、売られている服を見て再び固まったのだ。


 それというのも売られている服がどれもこれも大胆と言うか、露出が多いのだ。


 こんな服で外に出たら間違いなく男共に襲わるだろう。


 そしてこんな恰好で襲われたとしても、自己責任として誰も取り合ってくれないのだ。


「ちょっと、これどういう事?」

「開放的なデザインでしょう。でも、この町でしか着られないから注意してね」

「そうじゃなくて、こんな服着たら危険じゃないのかって事よ」

「誰も襲われないから心配ないわよ。この町の男達の基準はユニス様なのよ」


 ちょっと意味が分からないんですけど。


 だけどそれは直ぐに分かった。


 その後、噂のユニス様と会ったからだ。


 その容姿はとても目を引くのだ。


 公国に初めて現れた亜人の貴族は、大公陛下に取り入って貴族になったと言って他の貴族から「大公のペット」と陰口を叩かれていた。


 きっと上の者に媚びへつらい、下の者を見下す嫌な性格をしているのだろうと勝手に思っていたのだ。


 だが実際に話してみると、とても気さくで話しやすく、決してこちらを見下すような事はしなかった。


 そこでお祭りをやると言うので、試しに色々提案してみるとユニス様は目を輝かせて受け入れてくれた。


 エリアルでは、同じ人間相手でも前例がないとか客が受け入れないとか言われて、提案しても殆ど受け入れられることは無かったというのにだ。


 ベネデッタ、ユニス様を紹介してくれて本当にありがとう。


 間もなくエリアルでは貴族達の社交シーズンがやって来る。


 国内の貴族達が一斉にエリアルにやって来て、あちこちの館で社交が行われるのだ。


 私もユニス様にお手伝いさせてもらえるなら、喜んで協力させてもらいますね。


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