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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第5章 異色の女経営者
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5-16 見学旅行の道中

 

 見学旅行当日、エリアル魔法学校では、行き先別に分かれた学生達がそれぞれの目的地に向けた馬車が用意されていた。


 アレッシア・ロザートは、パルラに向かう馬車に乗り込んだ。


 馭者台には護衛の2人が座るので、剣技科の2人と魔法科の2人が乗る護衛馬車と、政治・行政科1人と商業科の生徒2人が乗る馬車に分かれる事になった。


 剣技科と魔法科は見学旅行の道中での護衛実習が目的なので、魔物が出たら護衛達と一緒に戦う事になる。


 私達商業科と政治・行政科の学生はパルラに到着してから、その地の行政や商取引を見学してレポートを提出する事が目的なので、道中は唯のお客さん、悪い意味で言えば荷物だ。


 大多数の学生が好む行き先は、先輩達が過去に訪問して既にレポートをまとめてある町だ。


 そうすれば過去のレポートを写し・・・こほん、参考にして書けるからだ。


 その意味で言えばパルラという初物に向かう私達は、いわば冒険者とも言えた。



 エリアル魔法学校を出発した2台の馬車は、北門を抜けるとエリアル北街道を真っ直ぐ北上して行った。


 道中は魔物の襲撃も無く順調で、スハイムを越え、既にピコの町が見えていた。


 エリアルから伸びる4つの街道は馬車で移動する事を想定して造られているので、終点のダラムまで野宿しないで済むように町が配置されていた。


 だが、これは学校行事なので、必ず一度は実習として野営しなければならなかった。


 そこで相談した結果、パルラで野営する可能性があるので、帰り道で再度検討することになった。


 ピコの町に入ると、早速町で最上級という宿に入った。


 そして宿の食堂で夕食を食べていると、政治・行政科のウルバーニが不満そうな顔をしていた。


「エリアルを離れて北に進むほど、食事がまずくなるな」


 それは口には出さないが、アレッシアも思っていた事だ。


 エリアル北街道を進むほど、宿屋で出される食事の質が落ちてくるのだ。


 この分ではパルラという聞いた事も無い町に着いたら、どんな物を出されるか不安だった。


 きっと、予想もつかないような未開な食事が出されるのでしょうね。


「この分じゃあ、パルラではどんなゲテモノを食わされるか分からないぞ。なあ、手前のダラムで食料を買い込んでおいた方が良いとは思わないか?」


 ウルバーニが言ったその提案に笑いながら乗ってきたのは、剣技科の貴族学生だった。


「そうだな。逆に俺達が、人間様の文化的な食事と言う物を教えてやった方がいいんじゃないか?」


 これは良い方向に議論が向かっているわね。


 私の目的はダラムの町で、出回っている商品の流通経路等を調べることなのだ。


 ここは賛成しておこう。


「私は賛成よ。出来ればダラムの商業ギルドにも寄ってみたいわ」


 私が賛成すると、他の学生達もそれに倣った。


「よし、ではパルラに滞在する3日分の食糧をダラムの町で調達しよう。そしてパルラの町でちょっとした野営を楽しもうぜ」



 そして私達はダラムの町に到着した。


 ここは権勢を誇ったドーマー辺境伯の領都だった町で、今は王家の直轄地になっていた。


 行政官のベニート・モンダルトを表敬訪問し、それから町に買い物に向かった。


 ダラムの町は至る所に戦いの痕跡があり、それを修復している最中だった。


 露店の店主に聞いてみると、ロヴァル騒動の際、大公軍の巨大ゴーレムが道を進んでいったせいだと言っていた。


 露店を回って気付いたのは、魔素水も高級ミード酒も売っていないという事だ。


 ここで生産していたら普通はあちこちで売っているはずなのだが、そんな感じが全くしなかった。


 おかしい。


 これはどういう事なの?


 まさか、全量エリアルに持ち込んでいるという事だろうか?


 これはますます商業ギルドで情報を得る必要があるわね。


「ねえ、私は商業ギルドに行ってくるわ」


 すると他のメンバーは食料を調達するというので、夕食まで自由時間になった。


 ダラムの商業ギルドは直ぐに分かったが、ギルド長は不在だった。


 ギルド職員に聞いてみたが、のらりくらりとはぐらかされてしまい、商品に関する情報はまるで得られなかった。


 何の収穫も無いまま宿に戻って来ると、他の学生達は色々な食料を調達してきていたようだ。


「ロザート、どうだ、これだけあればパルラに3日間居ても足りるだろう」


 そう言ったテーブルの上には、山盛りの食材が並べられていた。


「それで、これ、誰が料理するの?」


 アレッシアがそう質問すると、男子学生達は期待を込めた目で私を見ているのに気が付いた。


 ああ、そうですか。


 私に作れって事ね。


 全く、もう。


 私にはあの町で商取引に関するレポートを作成するという仕事があるのよ。


 まあいいわ、ここからパルラまでは8リーグの距離、馬車で4時間もあれば到着するのだ。


 今日はゆっくり寝て、体力を回復しておきましょう。


 +++++


 俺は休止中の賭場に来ていた。


 なんでここに来たかと言うと、魔素水浴場は女子供には人気なのだが、獣人男性には今一つと言った感じなのだ。


 そこでもう一つ位、娯楽を増やしておいた方が良さそうだと思ったからだ。


 ここの1階は競馬場になっていた。


 アマディの説明では、この楕円形のコースでは、競馬、障害物レース、流鏑馬みたいなものが実施されていたようだ。


 コースはちょっと整備すれば直ぐにでも使えそうだが、馬は逃げ出すときに持ち出されたようで1頭も残ってなかった。


 どうせならゴーレム馬に古代戦車でも引かせて、戦車レースっていうのも面白いか。


 まあ、これは後で考える事にして2階に上がった。


 2階はカードやテーブルゲームをする台が並んでいるが、慌てて出て行ったため、あちこちで台や椅子、遊技台の駒等が転がっていた。


 遊技場の奥にはバーカウンターがあり、後ろの台には所狭しと様々な種類の酒樽が置いてあった。その隣には紫煙草を売るカウンターもあった。


 そう言えば、ここの空気には、まだあの甘ったるい匂いが残っているな。


 かなり広い空間だが、今後の利用方法があまり思い浮かばなかった。


 俺はカジノで遊んだことが無いのでルーレットの仕組みがよく分からないし、スロットマシンを再現することも無理そうだ。


 それにここにいる連中は、頭を使う遊びよりも体を動かす方を好むだろう。


 そこで彼らに金を使わせる方法は無いかと考えているのだ。


 酒が飲めて遊べる・・・あ、プールバーというアメリカ文化があるじゃないか。


 浴場が日本風なら、こっちはアメリカ風にするのも面白いか。


 もともとカジノと言えばアメリカだしね。


 床もしっかりしているし、後はビリヤード台を作って設置するだけというのも手間いらずで良さそうだ。


 それに遊ぶのも簡単だ。


 キューで玉を打って、ポケットに入れればいいだけだ。


 まあ、実際には打ち方にも色々あるんだけどね。


 いい案が浮かんだと喜んでいると、オーバンが手紙を持ってやって来た。


「ユニス様、エリアル魔法学園の学校長から手紙が来ております」


 そう言って手紙を差し出してきた。


 封筒の裏面には、エリアル魔法学校学校長フェデリーコ・タスカと署名があった。


 封筒を開き中の手紙を取り出して読むと、そこには見学旅行の日程と参加者の名前が記載されていた。


 男子学生5名、女子学生2名、それに護衛役はジュビエーヌを護衛していたハッカルとツィツィだった。


 学生の受け入れ宿は、流麗な詩亭になった。


 ジルド・ガンドルフィが町に残っている3つの宿の従業員をかき集めて、準備を整えてくれているのだ。


 幸いな事に、七色の孔雀亭の料理人が残っていたので食べ物は問題なさそうだ。


 それじゃ、ジルドに9部屋用意してもらうとするか。


 食事はお任せでいいよね?


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