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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第5章 異色の女経営者
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5-13 浴場

 

 この町に住む人に集合住宅を造り、隣接する森林地帯に作った畑で食料を生産し、衣類はリーズ服飾店に供給して貰っている。


 そのおかげで町の人達の衣食住は満たされていた。


 そしてカフェと酒場での実地調査によって分かった事は、この町には娯楽が少ないという事だ。


 元々この町は娯楽の町だったので貴族や豪商達が遊ぶ施設はあるのだが、それを庶民に解放しても楽しめるかどうか分からないんだよね。


 最初は家族で楽しめる娯楽が良いだろう。


 庶民の娯楽と言えば、日本でも古代ローマ帝国でも共通しているのは浴場だ。


 だが、この魔法がある世界では生活魔法で体を清められるので、風呂に入るという習慣が無かった。


「ねえ、ジゼル」

「なあに?」

「浴場って分かる?」

「よくじょう?」


 そう言って小首を傾げた姿は頭の上には、クエスチョンマークが浮かんでいるようだ。


 やっぱり習慣が無いというのは致命的だな。


「えっと小さな池にお湯を入れて裸で入るような感じかな」

「はあ?」


 どうやら全くイメージが出来ていないようだ。


 他にイメージをして貰うにはどうしたら良いか?


 池が駄目なら、あ、そうだ。五右衛門風呂というのがあったな。


「えっと、大きな釜にお湯を入れて、その中に裸になって入るのよ」


 するとジゼルは目を見開いて驚いていた。


「そこに私が入るの?」

「ええ、そうよ」


 するとみるみるうちに顔が青くなり、震え出していた。


 ジゼルの頭の上にある獣耳もプルプル震えていることから、相当嫌なようだ。


 そういえば猫は水を嫌うというし、狐獣人も同じなのかもしれないな。


「ユ、ユニス」

「なに?」

「わ、わわ、私を煮て食べても、お、美味しくないわよ?」


 はあ? なんでそうなる。


「食べないわよ。それになんで煮るという発想になるの?」

「だ、だって、だって、スープを作るみたいに私を鍋に入れて煮るんでしょう?」


 これは駄目だ。


 一々誤解を解かないといけないとか、ありえないな。


 あ、人間種はどうなんだ? ちょっと聞いてみるか。


 そこで娼館の中で人間を探してみると、丁度良く、彩花宝飾店の店員だったマウラ・ピンツァがこちらに歩いて来る姿を見つけた。


「マウラさん、ちょっといいですか?」

「あ、これはユニス様、なんでしょうか?」


 そこでジゼルにしたのと同じ説明を繰り返した。


 するとマウラも顔を真っ青にしてプルプル震えていた。


 あ、これはもう、結果は見えたな。


「ユ、ユニス様、私を茹でて食べるのですか?」



 全く、この世界の人間は風呂を何だと思ってるんだ。


 煮るとか茹でるとか料理道具じゃないっつうの。


 他に庶民向け娯楽を考えながら町中を歩いていると、輸送用ゴーレムのホルスタインが居るのを見かけた。


 魔素水泉から魔素水を運んできたようだ。


 うん、魔素水?


 そう言えばこの世界の人間は、食べ物から魔素を補給しているんだったな。


 あ、風呂といえば、牛乳風呂とかワイン風呂なんてのもあったじゃないか。


 魔素水の風呂があってもいいんじゃないか?


 きっとこの世界の人間なら、皮膚からでも魔素を吸収できるだろう。


 それなら一々説明しなくても、分かってもらえるんじゃないか?


 お、これは良い考えだ。早速実行しよう。


 場所は何処がいいかな?


 そして目についたのが、俺が破壊したドーマー辺境伯の館だった。


 パルラの町を占拠した時以来、この場所は廃墟になっていた。


 どうせ誰も使わないし、町中に廃墟があるのは景観的にも良くないよな。


 早速輸送用ゴーレム達に大森林地帯から建築資材を運んでもらうと、更地にしたドーマー辺境伯館跡に建てる事にした。


 材料があれば簡単に建てられる錬成術は非常に便利である。


 出来上がった建物は、コンクリート製の2階建てだ。


 1階には下駄箱付きの玄関に脱衣所、温度が違う浴槽を男女別で3つずつ、それにドリンクコーナーを設置した。


 ドリンクは大森林地帯で採取した木の実の果汁と、薄めた魔素水それに白ビールだ。


 2階には休憩と娯楽スペースを設置した。


 そして娯楽スペースには、卓球台とエアホッケー台を設置した。


 よし、これからは魔素水浴場と呼ぼう。


 ピンポン玉は固くて反発力のある陸亀の卵の殻を錬成術で再生して作ったし、ラケットのラバーの部分は大森林地帯で見つけたあのツタで錬成した。


 これなら2階で遊んで汗を掻いたら、また1階で風呂に入って貰えるだろう。


 そして北門を抜けて外に出ると、魔素水を運んできたホルスタイン達を迎えに出た。


 見える場所には農作業をしているウジェ達犬獣人と、アゴストさん達人間種の方も居た。


 これは丁度良いな。


「これはユニス様、こんな所に何用でございますか?」

「魔素水の利用範囲を広げるのです。せっかくだから貴方達も協力してください。一緒に来て貰えますね?」

「「「はい、喜んで」」」

「あの、私も、ですか?」


 ウジェ達が皆協力してくれると言ったが、トマーゾ・アゴストは渋っていた。その視線の先には孫娘のファビアが居た。


 まあ、説明を聞いてもらうだけなら問題ないだろう。


「ええ、ファビアちゃんも一緒で良いですよ」


 そして男達を連れて魔素水浴場にやって来た。


 下駄箱の使い方や男女別な事、そして営業を開始したら料金がかかる事を説明しながら、男湯に入って行った。


 そして浴槽にお湯を張り、そこに魔素水を入れた。


 ウジェが持っていた濃度計の値は1を示していた。


「ウジェさん、ちょっと入ってみてくれませんか?」

「え? ここで、ですか?」

「ええ、快適な魔素濃度を確かめなくてはなりません。協力してください」

「えっと、裸になるのですか?」


 そう言ったウジェはなんだがもじもじしていた。


「別に問題ないでしょう?」

「ユニス様、失礼ですが、ウジェ殿はユニス様の前で裸になるのが恥ずかしいようですよ」


 そう言ったのはトマーゾだった。


 あ、そうか、俺の外見は一応女だったな。


「えっと、足だけでいいですよ」

「分かりました」


 そう言うとウジェは、足湯の要領で風呂の中に足を入れた。


「お、これは・・・」

「どう? 気持ちいい?」

「う~ん、どうですかねえ? 温かいとは思いますが・・・」


 それじゃ濃度を変えてみるか。


 濃度計が2になるまで魔素水を追加投入した。


「これでどう?」

「う~ん、あまり変わらないような・・・」


 するとそれを見ていたファビアが「私もやる」と元気な声で宣言した。


 それからは色々実験をして、その結果、子供は濃度1、大人は濃度3が丁度良いようだ。


 それ以上濃くすると魔素酔いを起こすのだ。


 実験結果を元に3つの浴槽は、それぞれ濃度を1から3に設定した。


 その後、ドリンクコーナーで冷たい飲み物で休憩した後、2階に上がった。


 2階では、卓球とエアホッケーの遊び方を教えてウジェ達に暫くの間、遊んでもらった。


 だが、ここで背が低くて遊べないファビアが、頬を膨らませてとても不満そうな顔をしていた。


 拙い、小さな子供を想定していなかったな。


 そこで何かないかと考えていると、ぱっと閃くものがあった。


 大急ぎで森林地帯に戻ると、そこで土を材料にしてレ〇ブロックを一袋分作った。


 それを2階の休憩室に持ち込みファビアの前で広げていった。


「これはこうやってくっつけて色々な形を作れるのよ」


 そう言ってブロックを組み立てて簡単な家を作った。


 ファビアはそれを見て目を輝かせると、早速自分で遊び始めた。


 その光景を後ろから見ていたトマーゾもとても嬉しそうだ。


「ユニス様、ありがとうございます。これはファビアには良い遊び道具になりますね」

「ええ、貴方もファビアちゃんを連れて気軽に遊びに来てね」

「そうさせて貰います」



 農業部門に人達に一定の評価を得た事に気を良くしたので、再び娼館の女性達の説得を試みる事にした。


 だが、ジゼルは俺の顔を見るなり脱兎のごとく逃げ出した。


 それはまさに飼い猫が、運搬用のケージを見て動物病院に連れて行かれることを察知して逃げる行動そっくりだった。


「何で逃げるのよ。待ちなさいってば」

「い、嫌ぁ~。食べないでよぉ~」


 娼館の通路で追いかけっこをしているところに出くわしたのはブルコだった。


「ちょっと、あんたたち、この騒ぎは一体何なのさね」

「ブルコさん、ジゼルを捕まえて」


 そしてブルコの協力もあってようやくジゼルを捕まえる事が出来たが、激しく暴れるのを押さえつけるまで、叩かれたり、蹴られたりと大変だった。


「ちょっと落ち着いてよ」

「だって、ユニス、悪い顔してるもん」


 あ、魔眼で裏の顔を見られたか。


「大丈夫だから。何もしないから、ね」

「ねって、ユニス、やっぱり悪い顔をしてるわ」


 俺とジゼルの追っかけっこの結果、騒ぎを聞きつけた全員が集まって来たので、全員連れて浴場に向かう事にした。


 もちろん、ジゼルやマウラ・ピンツァには絶対に煮たり、茹でたりしないと誓ってあった。


 浴場に到着すると、まずは抵抗が少ない足だけで入ってもらう事にした。


 すると最初はとても嫌がっていたが、魔素水の効能が次第に身に染みてくるととても気持ちよさそうな表情に変わってきた。


「どう、これが魔素水浴よ。決して煮たり、茹でたりしないから安心でしょう?」

「何よ、これ、そうならちゃんと言ってくれればいいじゃない」


 ジゼルは恐怖から安心に変わると、何故か文句を言ってきた。


 全く自由気ままな所は猫と同じだな。


 その後、ウジェ達と同じルートで2階まで案内が終わると、皆興味を示してくれた。


 それはブルコも一緒で、その場で浴場の責任者がブルコに決定していた。


 そして足湯も追加することが決まっていた。


 まあ、やる気がある人に任せるのが一番だからね。


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