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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第5章 異色の女経営者
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5-1 封鎖解除

 

 戦後処理の会議は、集まった貴族達がジュビエーヌを大公と認めた事でようやく終了となった。


 これでようやく、ジュビエーヌを家に送り届けるというミッションが終わったのだ。


 だが、ジゼルの魔眼で見た貴族達は、皆面従腹背といった連中ばかりなのだ。


 身を守ってくれる近衛騎士が居ないジュビエーヌを、1人にしておくのは危険だった。


 そこでセレンとテルルを置いて行くと言ったら、とても喜んでくれた。


「ジュビエーヌ、オートマタは魔宝石の魔力で動いているの。交換時期が来たら自分から申告して来るから魔宝石を交換してやってね」

「え、どうやって交換するの?」


 そこで俺はセレンを呼ぶと、魔宝石の交換方法を実践して見せる事にした。


「セレン、ちょっとこっちに来て」

「ああ、いいぜ、姉貴」


 どうやら見た目が男っぽいセレンは、喋り方も男っぽいようだ。


「ちょっと、どうしてセレンだけなの。私もやります。いいですよね、姉様」


 そう言うと、セレンを押しのけてテルルが俺の前にやってきた。


 う~ん、この2人はどうやら対抗意識が強いようだ。


 こういう場合は、片方だけ贔屓してはだめなのだ。


「それじゃ、2人とも口を開いて、舌を出して」


「こうですか?」

「えぇっ、恥ずかしいです」


 そう言いながら、2人が出した舌には魔宝石が嵌められていた。


 その魔法石を外すと瞳から光が消え、警告メッセージが流れた。


「警告、魔宝石が外されました。このまま30分が経過すると機密保持のため自爆します。速やかに魔宝石を取り付けてください。繰り返します。この」


 警告メッセージが続く中、新しい魔宝石を取り付けるとメッセージは消えて2人の瞳に光が戻っていた。


「ああ、戻って来たぜ、姉貴」

「姉様、川向うでおばあちゃんが手を振って呼んでいました」


 おい、お前に家族は居ないだろう。


 それに、そのおかしな言い回しをどこで覚えたんだ?


 それにしても自爆ってなんだ?


 そんな機能付けた覚えはないんだが・・・。


「ね、ねえ、ユニス。交換は貴女がやってくれないかしら?」


 ジュビエーヌはとても不安そうな顔でそう言ってきた。


 確かに、交換でもたつくと自爆に巻き込まれて一巻の終わりになってしまう。


「・・・そうね。考えとく」

「ええ、きっとよ?」


 不安を抱くジュビエーヌに、連絡蝶が使えるマジック・アイテムを渡して何かあったら直ぐ連絡できるようにすると、パルラに戻る事にした。


 エリアルの北門から外に出ると、そこにはトラバール達と頼もしいゴーレム達が待っていた。


 そして楽をして帰るため50体の戦闘用ゴーレムに手を繋がせると、先頭になったゴーレムにサソリもどきを掴まらせた。


 それは尻尾の無いサソリもどきに、長い尻尾が出来たような感じになっていた。


 準備が整ったので全個体を重力制御魔法で軽くして、そのまま上空に舞い上がった。


 帰りはこのままパルラまで飛んでいけるので、数時間でたどり着けそうだ。



 パルラに戻って来ると、まずは状況の確認だ。


 封鎖線は、道を封鎖していた兵士達が居なくなったので実質解除されているので、目聡い人達は既に出て行ってしまっただろう。


 それでもドーマー辺境伯に雇われていた人の中には給料が未払いの人も居るだろうから、代わりに払ってやろうと思っているのだ。


 尤もその金を奪ったのは俺なんだけどね。


「ただいま」

「おかえり」


 パルラの娼館に戻って来た時、つい癖で言ってしまった言葉に返事があって驚いていると、そこにはブルコが待っていた。


「えっと、そこで何をしているのですか?」

「あんな物騒な物が空から降りてくれば注目の的さね。それで辺境伯はどうなったんだい?」

「今回の騒動の首謀者としてエリアルの地下牢に入ってますよ」

「そうかい。それじゃ、私も捕まるのかい?」


 そうか、ブルコはドーマー辺境伯に雇われていた幹部の1人だ。


 主人の悪事に加担していたと思われても仕方が無いだろう。


 だが獣人に偏見が無く、娼婦の女性達をちゃんと人として扱っていたこの人物には好感が持てるのだ。


「なんでそうなるのです? 貴女は既に私の共犯者ですよ」

「そうなのかい? 知らなかったさね」

「まあ、この町に居る限り、私が身の安全を保障しますよ」

「分かったさね。今日から私はお前さんの共犯者さ。それで、娼館はどうするんだい?私としてはお前さんが娼館で働いてくれると大助かりなんだがねえ」


 これは口癖か、それともただの冗談? まさか本気ではないよな?


「それ本気で言ってる?」

「冗談さね。もう娼館は店じまいなんだろう? 私に出来る事でもあるのかい?」

「う~ん、それはこれから考えるよ」

「そうかい、それじゃ、ここで働いてる女性達はどうするんだい?」

「これから会って希望を聞いてみるよ。残って欲しいけど、無理やり引き留めはしないさ」

「そうかい。それじゃ私も付いて行くよ」


 そしてブルコに頼んでまず先に人間の元娼婦達に集まってもらったが、皆不安そうな顔をしていた。


「皆さんの、そのう、雇用主であるドーマー辺境伯は罪人として捕まりました。貴女達は自由の身です。家に帰ってもいいのですよ」


 俺は皆が喜んでくれると思っていたが、集まった女性達はより一層不安そうな顔になり互いに顔を見合わせていた。


 すると、その内の1人が恐る恐るといった感じで質問してきた。


「あのう・・・私達は、ここから放り出される、ですか?」


 そう言った女性の顔はとても不安そうだった。


 え、なんで? 自由になると言われたのに何故、不安そうなんだ?


 そこで助けを求めるため、後ろに居るブルコの顔を見た。


「その娘達は、親に売られたんだ。今更帰る場所なんでありはしないのさ。良いからここに置いておやり」


 ブルコにそう言われたので、元娼婦の女性達にこの町で私に雇われるかと聞いたら、全員首を縦に振ってきた。


 そしてようやく笑顔になったのだ。


 さて、それじゃ後は獣人の元娼婦と闘技場に居た女性達だ。


 今度はまとめ役になっているビルギットさんに皆を集めて貰い、ジゼルと一緒に会うことにした。


 集まったのは娼館の獣人の他に、闘技場で保護した女性達も居た。


「貴女達を奴隷にしていたドーマー辺境伯は犯罪者として捕まりました。この町にいる獣人達は全員私の物になります。よろしいですね?」


 俺がそう言うと、獣人達は何も言わずに頷いていた。


 元々獣人達に会う前にジゼルに相談したところ、ここに居る獣人達は生まれた時から支配されていたので、支配者が代わったと言った方が受け入れやすいと言われたのでそうしたのだ。


 どうやらこれが正解の様で、隣にいるジゼルも嬉しそうに頷いていた。


 問題はこれからだ。


 これだけの人数に、適正な仕事を与えなければならないのだ。


 責任重大である。


 そう考えると、胃のあたりがキュッと締まるような気がしてきた。



 次は人間達が避難している七色の孔雀亭だ。


 そこでビアッジョ・アマディを呼んだ。


 彼はカジノの会計係をしていたので、彼らに渡す退職金の相場について相談できるだろう。


「ドーマー辺境伯に雇われていた人達で、この町から出て行きたいと希望する人達に未払いの給料を払ってあげたいんだけど」

「それは皆喜ぶでしょう。ところで、残りたいと言えばユニス様に雇って貰えるのですか?」

「残ってもらえるのは嬉しいけど。希望通りの仕事に就けるとは限らないよ」

「ええ、今まで通りに行かない事は皆理解していると思います。それに私も出来ればここで雇って貰えると助かります」


 詳しく聞いてみると、今回のロヴァル騒動で他の町も大変な状況になっていて帰っても仕事が無いんだそうだ。


「他の貴族や裕福な商人がこの町に遊びに来るとは思えないので、カジノや闘技場を再開できるとは限らないけど、残ってもらえるのは嬉しいですよ」


 最後は、パルラの町に出店しているドーマー辺境伯と雇用関係がない店の従業員達だ。


 外に出られるようになった事を教えて上げなければいけないからね。


 俺がこの町を占拠した時、逃げ遅れたのはリーズ服飾店と彩花宝飾店の従業員だが、彩花宝飾店の方は娼館に避難していたマウラ・ピンツァなので既に話してある。


 残りはリーズ服飾店だ。


 店に行ってルーチェ・ミナーリを呼び出すと、早速要件を話してみた。


 するとリーズ服飾店の社長が店の状態を確かめるためこの町にやって来るので、それを待っているそうだ。


 社長が来るというのなら直接会ってみたい事と言うと、社長には伝えておきますとのことだった。


 パルラには封鎖で閉じ込められた従業員達と後で逃げ込んできた人達を加えると、おおよそ5百人程度という事になった。


 この人達の生活を向上させ、あおいちゃんの為の発掘費用、ひいては俺が日本に帰る手段を得るための資金を稼がないといけないのだ。


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