4-26 公城地下牢
4-25話とタイトルが被るので修正しました。
離宮は無人だったが管理されているようで破損も無く綺麗な状態だった。
あおいちゃんが住んでいた場所を興味深げに眺めていると、ハッカルがバンテ流通会社と連絡が取れたと言ってきた。
それによるとエリアルでは公城アドゥーグの門は全て閉じられており、離宮から平民街に来るには警備が厳重な城門を通らないと無理だと言ってきたそうだ。
そして公太女殿下を支持する人達は皆城内の地下牢に閉じ込められているらしい。
あれ? という事は当初の計画を練り直さないといけないという事か。
「ハッカル、ツィツィ、貴方達城内の地下牢が何処にあるか知ってる?」
「そんな訳ないだろう」
「えっと、殿下達が出てきた場所なら分かりますが、地下牢は分かりません」
「出てきた場所?」
「私達の依頼が城から逃げ出して来た公女を離宮の秘密通路から逃がすことだったのです。その待ち合わせ場所が誰も知らない城の出口だったのです」
「するとあの城にも秘密通路があるのですね?」
「ええ、そうだと思います」
念のため、その事実を確かめるため連絡蝶でジュビエーヌに連絡すると、事実であることが分かった。
ついでにシュレンドルフ侯爵にも連絡を入れると後数日で到着するというので、エリアル側に見えないように南門に回るように依頼しておいた。
「それでは2手に別れましょう。地下牢に助けに行くのは私とジゼル、バンテ流通会社に行って協力して南門を開けるのはオーバンと貴方達です。オーバン、門は突破出来る?」
「問題ありません」
「おい、ちょっと待ってくれ、あんたら2人だけで大丈夫なのか?」
「ジゼルの魔眼もあるし、ゴーレムも造るから問題ないわよ」
そして2人に案内されて、ジュビエーヌ達と落ち合ったという場所まで来た。
そこには蔦のような植物が絡み合った古い石垣のようなものがあったが、よく見ると石の扉があるのが分かった。
「ここね。それじゃ私達はここから城に潜入するから、貴方達は南門の方をお願いね」
「分かりました。それではユニス様、ご無事で」
「ええ、オーバンも無理はしないでね」
3人が森の中に消えると早速3体の土人形を作り、2体はテクニカルショーツの中に仕舞い、1体は錬成術で戦闘用ゴーレムにすると陽動のため城の正門に向かわせた。
そして壁の中の扉を探ると小さな突起物があったのでそれを押してみると「ガタン」という音がして僅かに扉が開いた。
その隙間に指を入れて引っ張ると扉が開いた。
中には明かりは無く真っ暗だったが、暗視魔法で見るとそこには上に向かう階段があった。
早速中に入ろうとするとジゼルに肩を掴まれた。
何だろうと後ろを振り向くとジゼルがそのまま俺の前に出た。
「ユニスは接近戦が苦手なんだから後ろからついて来て、敵が出て来たら魔法で支援してね」
ああ、そう言う事ですか。はい、分かりました。
階段を上る度に目の前で左右に揺れるジゼルのモフモフした尻尾を眺めていると掴みたくなる衝動に駆られるが、その結果が分かるだけに何とか堪えていた。
するといつの間にかジゼルの足が止まり後ろを振り向いた。
思わずジゼルの魔眼で俺が考えている事が分かってしまったのかと焦ったが、ジゼルが言った言葉でそれが勘違いだと分かりほっとした。
「壁に辿り着いたわよ」
「ど、どこかに扉を開けるスイッチのような物は無い?」
「何、焦ってるの?」
「い、いや、何でもないでしゅ」
あ、噛んだ。
ジゼルは少しだけ疑わしそうな目で見ていたが、直ぐに周りをキョロキョロと眺めると、何かを押し込んだ。
すると「ガチャ」という音と共に目の前の壁が無くなった。
暗視魔法で見えるのは、誰も居ない荒らされた部屋だった。
転がった椅子や割れた花瓶の破片を避けながら通路に繋がる扉を目指して慎重に歩いて行くと扉に耳を当てて廊下側の音を探ったが何も聞こえなかった。
そこで扉を僅かに開き様子を窺ってみるとそこは無人の通路があるだけだった。
「誰も居ないわね」
俺もジゼルの後ろから扉の隙間から通路を見たが、そこに動く気配は無かった。
それどころか明かりも無く全く使われていないような感じだった。
扉を開けて通路に出るとそのまま音を立てないように移動し、下に降りる階段を探した。
この城は円形をしているようで通路も真っ直ぐではなく緩やかにカーブしていて見通しが良くなかった。
暫く進んでいくとようやく下に行ける階段があった。
3階は全く使われていなかったが、2階はどうなのだろうとそっと下を覗いたが、人の気配は無かった。
罠ではないかとも思ったが、ここに居ても仕方がないので警戒しながら下りる事にした。
2階の廊下では、突然扉が開いて人と鉢合わせするという事もあるので魔力感知を使ってみる事にした。
すると幾つかの部屋に反応が現れたが、それが敵かどうかまでは分からなかった。
いきなり兵士の控室を開ける訳にも行かないので、反応が1つだけの部屋をそっと開けてみると、そこにはベッドメーキングをしているメイドの姿があった。
ジゼルを見ると頷いたので、後ろから近付くと口を塞いで羽交い絞めにして低い声で囁いた。
「静かに。騒ぐと殺す」
するとメイドがビクッと体が動くのが分かった。
だが、直ぐに後頭部に軽い衝撃を感じだ。
「ちょっと、ユニス。ふざけないで」
はい、すみません。
「公太女殿下の命で地下牢の人達を救いにいたの。案内して貰える?」
俺がそう声を掛けると、それまで震えていたメイドの体がぴたりと止まった。
そこでそっと口を塞いでいた手をどけてみるとメイドはこちらを振り向きながら、こちらを値踏みしてきた。
「貴女は公女殿下の部下なの?」
その瞳はこちらを疑っているようだったので、ジュビエーヌが書いた檄文を見せると目を見開いていた。
「これは・・・分かりました。私が案内しましょう。ですが、1階はその、沢山の兵士が居るので見つからずに移動するのが難しいかと」
「ああ、それなら問題無いと思いますよ」
そう言ってからメイドに案内してもらい1階に下りる階段の傍までやってくると、下から人が騒ぐ声と廊下を走る足音が聞えてきた。
「何かあったのでしょうか?」
メイドが困惑顔で首を傾げていたので、原因を教えてあげた。
「ええ、私のゴーレムが入口で暴れているのです。その隙に地下牢に潜り込みましょう」
暫く様子を窺っていると足音が消えたので、その隙に1階に下りて行った。
1階は流石に人が居るので、誰かが通る度に身を隠しながらの移動なのでかなり時間がかかっていた。
そして地下に降りる階段が見えたところで、突然傍の扉が開き兵士が出てきたのだ。
「何者だ」
素早く動いたのはジゼルだった。
私の肩に手を突くとそのまま兵士の顔面に蹴りを入れたのだ。
その兵士が出てきた部屋の中に吹き飛ばされると、そのまま扉を閉めて何事も無かったかのように再び走り出していた。
あれ? ジゼルってこんなにワイルドだったっけ?
案内していたメイドさんも目を丸くしていたが、そのまま地下に繋がる階段を目指して走り出していた。
そして目の前に地下に降りる階段が現れた。
「この先が地下牢になります」
「案内ありがとう。後は私達だけで大丈夫です」
そう言ってメイドさんと別れると、ジゼルと2人で先に進んだ。
薄暗い廊下を足音を忍ばせて歩いていると廊下の先に人の気配があった。
そして見えてきた光景は壁に付けられた鎖の括り付けられたボロボロの衣服を纏った人達とその人達に鞭を振るう男の姿だった。
ぴしっと鞭が飛ぶと、壁に鎖でつながれた被害者の肉を打った鈍い音が聞えた。
「逃げ出した公女は、今頃は捕まっているか暴漢にでも襲われてこの世に居ないだろう。そんな奴のため反乱を起こすなど馬鹿のやることだ」
そう言った後、鞭を打った相手の項垂れた頭を掴むと無理やり上を向かせた。
「聞いているのか?」
「公女殿下は・・・必ず、帰って・・・来ます」
「そんな事は有り得ない。だが、仮にそうであったとしてもお前は公女殿下の顔を再び見る事はないだろう」
「さあて、それはどうかなあ」
そう言って再び鞭を振るおうとした男は後ろか突然話しかけられて驚いて振り返った。
「何者だ?」
「貴方達の注目の的となっている大公軍よ」
その答えに男は固まり、無理やり上を向かされていた被害者は泣きそうな顔でこちらを見つめていた。
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