表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第4章 ロヴァル騒動
101/417

4-23 攻城用ゴーレム

 

 大公軍の眼前には、最初の関門となるダラムの城壁が見えてきた。


 ダラムは城門を固く閉じて城壁の上には守備兵が並び戦闘態勢を整えているようだが、主力はエリアルに居るはずなので、ここに居る守備兵は殆どが徴兵された新兵だろうと思われた。


 彼我の戦力差を見れば普通なら降伏しそうなのだが、彼らの主人が反乱を起こしていることからどうやら徹底抗戦を決意しているようだ。


 これでは降伏勧告も無駄に思えるが、一応はやってみる事にした。


 アメデオを呼び、最初の任務として降伏勧告を行わせた。


 内容は「2時間以内に城門を開け、大公軍に降伏せよ」と至ってシンプルな内容にしておいた。


 そして時間が出来たので食事を取る事にした。


 まず、偵察用ゴーレムを周囲に散開させ敵の奇襲に備えると、戦闘用ゴーレムを我々の周りに配置して何かあれば直ぐに対応できるようにした。


 それからサソリもどきの傍に給仕用ゴーレムと運搬用ゴーレムを寄せると、食事の準備を始めた。


 チェチーリアさんは給仕用ゴーレムの中で既に下ごしらえをしていたようで、直ぐにでも調理が始められるようだったが、アメデオ達の分も追加で作ってもらう事にした。


 食事の準備には農民兵にも手伝って貰ったので、それ程大変ではないようだった。


 作ったのは野戦食なので根菜を沢山入れた芋煮だ。


 食事を取りながら城壁の方を見ると、守備兵がこちらを見ているようだが仕掛けて来る気配は無かった。


 まあ、仕掛けて来ても簡単に撃退出来るけどね。


 食事を終えるとジュビエーヌに話しかけた。


「公太女殿下、これからダラムの町を攻撃しますが、このサソリもどきは攻城用ゴーレムなので戦いの最前線になります。戦闘用ゴーレムの護衛を付けますので外で待機なさいますか?」

「ユニスはこのゴーレムで戦うのですか?」

「はい、私はここから指揮をしますので」

「なら、私も一緒に居ます」


 ジュビエーヌのその発言に護衛の2人と弟が異議を唱えているが、どうやら決意は固いようだ。


 ジュビエーヌは異議を唱える護衛達に「何を言っているのです、ここ以外に安全な場所が何処にあるのですか?」と言っていた。



 ダラムの城壁の前には、さそりもどきが鎮座していた。


 そして半数の戦闘用ゴーレムが左右に展開して城壁の上からの攻撃に備え、残り半数はサソリもどきが破壊した壁から中に入るため後ろに控えていた。


「そろそろ約束の2時間になるわね」


 俺がそう言うとそれを合図にしたのか、アメデオの部下の1人が乗った騎馬が城門に近づいて行った。


 その光景は、サソリもどきの目を通して操縦室内に映し出されていた。


 目の前にある城壁の上には兵士が並んでいるが、そこには魔法兵も居なければ弓兵もあまりいないようだった。


 それでも城壁の上に設置してあるバリスタは、戦闘用ゴーレムを貫く力があるので脅威だった。


 そして城門の扉はサソリもどきでも簡単に潜れそうなほど大きかった。


 返答を聞きに行っていた騎馬が戻ってくると、こちらに首を振って拒否してきたことを伝えてきた。


 やれやれ、それでは行きますか。


「前進」


 俺がそう命じると、サソリもどきが一瞬ガクンと揺れたが直ぐに前進を開始した。


 8本の足が未整地でも振動の少ない動きを実現してくれているので、普通に操縦すればとても快適な乗り物なのだ。


 操縦手席では、トラバールがどこで覚えたのか鼻歌を歌いながら軽快に操縦していた。


 サソリもどきの後ろからは50体の戦闘用ゴーレムが続き、破壊した城門から素早く中に入り町を制圧する予定だった。


 サソリもどきが城門に近づくと、城壁上に動きがありバリスタがこちらに指向した。


 車体から「ガン」、「ガン」という嫌な音が聞こえてくるが、装甲が厚いのでバリスタの矢でも簡単に弾いていた。


 その後も数度バリスタで攻撃されたが、それを全て防ぐとアームが届く距離まで近づいた。


「オーバン、準備」

「畏まりました」


 オーバンが返事をするとサソリもどきの2本の太いアームが持ち上がった。


 それは、昆虫が外敵を威嚇するような感じだった。


「トラバール、一旦停止」

「おう」

「オーバン、やっちゃって」

「承知しました」


 サソリもどきが停止しオーバンがマニピュレーターを操作すると、持ち上がった2本の前腕が勢いよく城門に突き刺ささった。


 オーバンの操作は絶妙で数度突き刺すと扉はズタズタになっていた。


 そして扉の残骸を両腕のハサミで掴みサソリもどきが後退しながら引っこ抜いた。


 ダラムの城門が開いたので、そこから50体の戦闘用ゴーレムが次々と雪崩れ込んで行く。


 戦闘用ゴーレムの胸には公国を示す赤い蝶が描かれているので、何も知らない市民なら抵抗しないだろう。


 戦闘用ゴーレムに続き町中に侵入すると、町はひっそりとしていた。


 どうやら市民は家の中に閉じ籠っているようだ。


 市街戦を覚悟していたが、その心配は全く無く町の中心街に向けて進んでいった。


 ドーマー辺境伯の館は町の中心地の大きな敷地の中にあり、町の外周を取り囲む城壁程ではないがそこも堅牢な城壁が取り囲んでいた。


 だが、サソリもどきの敵では無かった。


 城壁を簡単に破壊すると、後ろから付いてきた戦闘用ゴーレムが次々と中に侵入していった。


 ドーマー辺境伯の館は、門を固く閉じて抵抗の構えを見せていた。


 ここにはパルラにやって来た暗殺者の集団がいるはずであり、彼ら戦闘のプロが潜む館に入って行くのは危険と思われた。


 そこでサソリもどきで館を解体する事にした。


 館に近づくとオーバンに命じて、サソリもどきのアームで館の屋根や外壁を掴み次々と解体していった。


 館にサソリもどきのアームが突き刺さり、外壁等を引き剥がす度に「ドーン」とか「バリバリ」とか凄い音と振動が発生するので、その度に館から着の身着のままの使用人達が逃げ出していった。


 更に解体が進んでいくと流石にこれ以上は隠れられないと思ったのか武器を手にした男達が外に出てきた。


 すかさず戦闘用ゴーレムが動き出し、武器を持った男達との間で戦闘になった。


 こちらはそれを横目で見ながら、更に館を解体していった。


 そして城にように大きな館は瓦礫の山になり、戦闘用ゴーレムも敵兵の掃討が終わっていた。


 俺は席を立ちサロンの人達に戦闘が終了した事を伝えると、そのままハッチを開けて外に出た。


 そこはまさに解体現場そのままで、周囲は瓦礫だらけになっていた。


 俺はそこで腰を屈めると、かつては壮麗な館の一部だった欠片を拾った。


「兵どもが夢の後」


 俺が独り言を言うと、目の隅に動くものが映った。


 俺がそちらに目を向けると、酷薄そうな男の目と口角がつり上がった顔が見えた。


 次いで目の前にはナイフの切っ先が迫り、それは目を狙っていた。


 どんなに固い甲殻を持った生き物でも目は弱点なのだ。


 魔力障壁の魔法範囲が目まで届いているのか、その防御力がどれくらいなのか不安が込み上げてきて、一瞬目を閉じてしまった。


 その隙をつかれて背後を取られると、そのまま地面に押し倒された。


 うつ伏せの状態で男に圧し掛かられ、左腕で首を絞め上げられていた。


 そして脇腹にナイフを突き刺された。


 そのナイフが俺の体に突き刺さらない事から、魔力障壁の強度が何となく分かってきた。


 だが、男は勝利を確信しているようだった。


「戦いは最後の最後まで分からないのですよ。お前さえ殺してしまえばこちらの勝ちだというのに、不用意に一人で出てくるとはとんだうっかりさんですね」


 何とかしようと抵抗しているのだが、種族的に接近戦が苦手なうえ、上に乗られた状態では如何ともし難かった。


 しかも体を密着されているので魔法を撃つことも出来なかった。


 その間も男のナイフが背中を何度も突き刺して来るので、いつかは魔力障壁が貫通してしまうのではないかと言う恐怖が込み上げてきた。


「ふふふ、何時まで持ちますかね。そう言えば魔力の高い肉を好む連中が居ますから、貴女の亡骸は切り刻んで高級肉として売って差し上げましょう。安心して死んでくださいね」


 うげっ、こいつ等食人もするのか。


 その瞬間俺の目の隅にまた動くものが映った。


「遠慮しておきます。それに貴方の負けですよ」

「はあ? 何を・・・ぐあっ」


 そこに現れたのはオーバンだった。


 こちらの異変に気が付いて駆けつけてくれたようだ。


 オーバンが振るった一撃は男の無防備な背中に突き刺さったのか、仰向けに倒れていた。


 見上げるとオーバンが心配そうな顔で右手を差し出して来たので、その手を掴み立たせてもらった。


 その時、瓦礫だらけの足場によろめいてオーバンに抱き着いてしまった。


「おっと、オーバン御免ね」

「いえ、役得ですから問題ありません」

「役得?」


 そこにやって来たジゼルが俺達を見ると大声を上げていた。


「あー、オーバン、そんなにユニスの胸の感触がいいのかしら?」


 俺はその声を聞いて下を見るとオーバンの掌が俺の着ぐるみの胸を包んでいるのが見えた。


「オーバン、もしかして役得と言ったのは」


 すると顔を真っ赤にして横を向いていた。


「いや、その・・・失礼しました」


 まあ、着ぐるみを触られたくらいだから目くじらを立てる事も無いか、それにジゼルが言ったから俺からは何も言うまい。


 助けて貰ったしね。


ブックマーク登録ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ