旅立ち準備・4
私を新たな領主として認め、和解し、これからのヒースクリューネを共に再生してくれるパートナーになってくれるのか?
そう聞いたら彼女たちは他の仲間たちに相談せず、すぐに頷いてくれた。
これには驚いた。
当時、私は7歳だよ?
即決してくれるなんて思わなかったよ。
一応用意しておいた和解証書などにお互いサインをして、控えを渡して会談は終了した。
あまりにアッサリと終わってしまったので、私についてきた侍従カインや法王宮職員たちも拍子抜けした表情を見せてしまったほどだ。
話し合いが失敗に終わるとは思わなかったけれど、長引くだろうな……とは考えていたからね。スピード解決したんだから贅沢を言ってはいけないか。
それより長老の話は貴重だった。
この土地が様々な薬草類を極上に育て上げると知ったことだ
余分な魔素さえ取り除けば、今は絶滅してしまった種類のものも再び実るだろう。
ここの魔素は人々に恩恵を与えるもの。
今は100年に渡る放置がたたって、不毛の地になってしまっただけ。
そして鑑定した時に出ていた別系統の魔素という言葉。
合わせたら巨大で凶悪なダンジョンが生まれるって出ていた。
そんなものをこの土地で誕生させるわけにはいかない。
別系統の魔素が何なのかは分からないけれど、この土地の魔素は凝縮され過ぎただけの良質系魔素だ。
だったら基本的には取り込んでも問題ないはず。
そう考えた私は、魔素溜まりの中和は魔素の発散が基本対処だというのに、魔素を取り込むことにした。
素早くヒースクリューネ内に『聖魔法』を巡らせ、この土地に巣食う魔素を薬草類を極上に育て上げる分以外は全て私の中に……という条件付けをして取り込んだ。
『聖魔法』って便利~って思いながら、直径15cmほどの球体に練り上げる。
魔法はイメージが大切だ。
凝縮、凝縮、凝縮。
ひたすらグリグリと練り込む。
やがて完成した球体を鑑定したら
《ヒースクリューネに蔓延した超強大な魔素溜まりの圧縮玉。圧縮率に比例して魔素の濃度がレベルMAXに移行。作り手であるレンフィールド以外は命の危険あり。表に出すだけで凶器となるのでレンフィールドの内、もしくはインベントリに収納することを推奨。但しインベントリ収納の場合は収納してある他のものが変質、もしくは破壊されることもある》
………これって内側一択じゃないか。
仕方ない。
球体、改め、圧縮玉をお腹あたりに埋め込む。
私の魔力で練ってあるから抵抗なく入っていくし、中に入れても違和感はない。
よし、余分な魔素の除去完了。
これでこの土地は極上の薬草類を育て上げる環境に生まれ変わった。
でも疲れたから、後のことはまた明日。
そう考えて自分の天幕に戻ろうと振り返ったら、ヤバいことになっていた。
長老をはじめとする先住民たちが、膝をついて私を拝んでいたのだ。
「レンフィールド殿下に我々の全てを捧げます」
先住民たちが、血の忠誠にも匹敵するくらいの誓いを私に立てたのを感じた。
長老が言うには、話し合いの結果を仲間に伝えたら、皆で新たな領主である私に一刻も早く挨拶をしよう……ということになった。そこで私の元に向かったところ、魔素を抽出して凝縮させ、自らの体内に収める様子を見てしまった。
あっという間に魔素溜まりが消え失せ、先住民たちだからこそ感じる極上の空気?空間?に涙が止まらなかったそうだ。
自然と膝をついて拝んでいた……と言われては、そうか。としか答えられなかった。
「私に忠実なところは良いんだけれどね……」
思い出しながら、また飲み物を口にする。
ヒースクリューネが薬草類の宝庫なのに薬草の都ではなく、若草の都と呼ばれるのは私が原因だ。
再び極上の薬草を生み出すようになり、人々が薬草の都と呼び始めた時に私が呟いてしまったのだ。
この地はまだ再生の途中。
薬草の都と呼ぶには、まだまだだと思っている。
私はようやく若草が芽吹いてきた。
そう感じている。
って……。
いやいや。
中二病っぽいセリフって、1度は言ってみたいじゃない?
前世でアラフィフまでオタク人生をやっていた記憶持ちとしてはさ!
それで……先住民の皆は私が言うのだから、若草の都だと言い出した。
ヒースクリューネの薬草類を統括しているのは長老だからね。取引先の商人たちどころか貴族相手にも譲らず、若草の都と呼ばないのなら薬草は売らない。まで言い出しちゃって。
取引先の相手も言い出したのが私だからね~。
若草の都、素晴らしいですな。ってわけですよ。
「あ、そうだよね」
私が法王国を去ったら、嬉々として法王家の人間がヒースクリューネ領を奪い合うね。
ペッドギアもダンジョン都市に生まれ変わったから狙ってくる。
他の直轄地も私が手を加えて豊かにした土地ばかりだ。
連中が喜ぶだけだわ。
やっぱり出奔しなくて正解、かな。
何しろペッドギアの王宮跡地がダンジョンになったって報告を受けた時の宰相たちの表情は傑作だった。
私は知っていたから、少し驚いた様子を見せただけ。
だって、ダンジョンを造り出したのは私だからね。
移動魔法を自在に扱えるようになって何度か王宮跡に行ったら、地下牢とは別の部屋に通じる道を見つけた。
螺旋階段の底にあった豪華で冷たい部屋。
クールテュール王家の闇が詰まった部屋。
淀んだ魔素溜まりが気になって鑑定したら
《クールテュール地方を250年に渡って治めていたマホガニー王家が、数多くの人々の命を玩んだ場所。闇に閉ざされた人々の負の感情が魔素溜まりとなった。このまま放置を続ければ十年以内に凶悪なダンジョンが誕生します。レンフィールドの体内にあるヒースクリューネで取り込んだ圧縮玉とは別系統の魔素。混ぜれば巨大で凶悪なダンジョンとなります》
と出た。
そうなれば、混ぜるな、危険!をやってみたくなるでしょう。




