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旅立ち準備・3

 

「思い出したら、あの時のムカつきが……」


 宰相(ジジイ)ども、私が子供だと思ってナメてたよね。

 私だって不良債権ばかり押し付けられても、泣き寝入りしなかったけれど!

 ペッドギアに続いてヒースクリューネも押し付けられた時、絶対にどちらの領地も栄えさせて、お前たちが地団駄を踏むのを見てやるって誓ったからね。

 それでヒースクリューネも現地視察することにしたんだよ。

 やっぱりアレスティラ様には、ものスゴ~く心配されて止められたけれど……。

「アレスティラ様の跡を継ぐに相応しいのは私だと、ヒースクリューネの先住民たちにも認めてもらいたいのです。彼らもグリース法王国の民ですから」って言って許可を貰った。


 行ってみて驚いたね。

 ヒースクリューネは本当に殆どが魔素溜まりの土地で、先住民たちの生活範囲しか人の出入りができなかったんだもん。

 魔素とは簡単に言えば魔力の源。

 但し、善い類いのものと、そうでないものがある。

 そんな分類も概念も、この世界にはない。

 魔素は魔素。

 それだけだ。

 私だってヒースクリューネに行って魔素を鑑定した時に知ったのだ。

 どうにかできないかな~?って思いながら魔素溜まりを眺めていて、とりあえず魔素の詳細な情報が欲しいから、隠し持っている鑑定スキルを使ったんだよね。

 そうしたら

 《超強大な魔素群。100年以上に及ぶ土地の浄化を怠った末に生まれたダンジョンの素。このまま放置しておけば数年以内に巨大ダンジョンが誕生します。別系統の魔素と混合すれば、さらに凶悪なダンジョンとなるでしょう》

 って判明した。

 混乱したよ。

 ダンジョンが誕生するのは自然現象の1つです。

 諸説ありますが詳しいことは分かりません。

 って言うのがこの世界の認識で、私もそう習っていたからね。

 新しい発見じゃないか!って思ったけれど、冷静に考えれば公表すると面倒なことになる。

 私は本当のステータスを隠しているから、鑑定スキルなんて持っていないことになっているのだ。

 それに数年以内にダンジョンができると分かったら、要らない土地だと言って押し付けたくせに、絶対に取り上げられる。

 ダンジョンはお金になるからね。

 さらにダンジョン発生方法を知ったら、彼らは悪用するに決まっている。

 だから誰にも言わないと決めた。

 申し訳ないが、アレスティラ様にもだ。

 アレスティラ様を信じていないのではない。法王宮の職員が宮殿に詰所を貰って待機しているように、宮殿の職員、つまり宰相(ジジイ)の手先も法王宮内に待機しているのだ。どこから話が漏れるか分からないなら、話さないのが一番だ。


 私は新たな領主として先住民たちから改めて話を聞いた。

 このヒースクリューネがどんな土地だったのかを含めて……。

 先住民たちは憎い法王家の人間とはいっても、まだ7歳の子供である私に罵声を浴びせるわけにもいかず、比較的丁寧に話してくれた。


 大昔から色々な種類の薬草が育ったこと。

 他所から取り寄せた種や苗木でも土地に馴染むのが早く、そしてその薬草類は取り寄せ先の土地で採取されたものより効能が高いこと。

 必然的に高値で取引されるようになったこと。

 それによって領主一族は裕福になり、段々と贅沢と怠惰(たいだ)を覚えたこと。

 しかし先住民たちをはじめとする領民には恩恵はなく、それどころか薬草の収穫量を増やせと命じ、幾つかの種類は早摘みが過ぎて絶滅したこと。

 領主一族が怒って、その薬草類を担当していた領民を一家ごと処罰したこと。

 収穫量が減るにしたがって収入も減っているのに、領主一族は贅沢をやめなかったこと。

 年に1度の魔物の駆除が2年に1度、3年に1度、5年に1度、10年に1度…と間隔をあけるようになり、ついにはしなくなったこと。

 それらにあてるはずだった経費を領主一族が使い込んでいたこと。

 それが100年近くも続いて、ついには領地の殆どが魔素溜まりになってしまったこと。


 話してくれた先住民たちの長老女性の拳が震えている。

 悔しいのだと思った。

 この土地は先住民たちがひっそり暮らしていた場所で、それこそ大昔に法王国に吸収されたのだが、自分たちの土地……という想いが強いのだろう。

 長老の話は知っていた部分と知らない部分があった。

 逃げ出してきた領主一族が自分たちの非を隠す為に黙っていたからだ。

 下手なことを言って大騒ぎになると、法王家に連なる人間の場合は法王による裁判が開かれる。

 アレスティラ様の前では嘘は通用しない。

 だから領主一族が言ったのは、経過ではなく結論だけだった。

 ヒースクリューネが魔素溜まりに侵され、殆どの領民は他領に移ったが先住民たちは土地に固執し離れない。

 自分たちも領主として最後の領民一人が移住するまで持ちこたえたかったが、これ以上は生命を脅かされる。

 仕方なくヒースクリューネを放棄し、都まで戻ってきた。

 ヒースクリューネの代わりとなる領地か、これから暮らしていくお金が欲しいとも言っていたけれど、そのあたりは領地運営に失敗しておいて何を言っているんだ?って、私だけじゃなく宰相(ジジイ)たちも思ったみたいで領主一族は投獄された。

 でもムダ飯代もバカにならないので私がヒースクリューネを引き継ぎ、先住民であるあなた方と和解し、この土地の再生を開始したら領主一族は100年に及ぶ罪を血で(あがな)うことになる。

 そのことを隠さず長老に告げると、彼女はとても驚いた。

 彼女だけでなく同席していた彼女の息子たちもだ。

 きっと、遠縁とは言っても法王家の血筋に連なる人間が処罰されるなんて思わなかったんだろうなぁ……。

 でも領主一族って今回のことがバレるまでは分家の中でも羽振りが良かったから、何度か王女の嫁ぎ先にもなっていたんだよね。

 だから初代領主は何百年も前に分かれた遠縁とも呼べないほどの存在だけど、直近でいえば2代前の領主夫人が降嫁した王女だった。つまり領主だった男は王女の孫。宰相(ジジイ)の従兄弟の息子だそうだ。法王家のメンツを保つ為にも処罰は厳しいものになるんだよ。

 まぁ法王家と関係ない領主だったら、もっと早く処罰されるんだけれど。

 そう付け足したら長老たちが青ざめたので、それ以上は黙った。

 マズイ、マズイ。

 長老とはいっても庶民のご婦人だ。

 貴族社会の常識は、恐ろしいものに感じるに決まっていたね。

 私はニッコリ笑って話を切り換えた。





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