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法王猊下と私・4

久しぶりの更新です。

BLっぽい内容なのでご注意ください。


 法王宮に戻った私たちは、そのままアレスティラ様の私室に入った。


「申し訳ありませんでした」


 ぺこりと頭を下げる。

 周囲には近衛騎士たちや侍従もいるが関係ない。

 大切な人を嫌な気分にさせてしまったのだから。


「きみが謝ることはないよ」


 優しいアレスティラ様。

 下げたままの頭を撫でてくれる。


「顔を上げて」


 そう言われて顔を上げると、もっと頭を撫でられた。

 髪の毛がクシャクシャになる。


「はい、座ろう」


 素直に一緒に座る。

 アレスティラ様は私の手をとって絡めると口元に引き寄せた。


 え?


「私のほうこそ、すまなかった。

 本当は彼らに言い返したかったのだろう?

 それなのに我慢できなくて、間に入ってしまった」


 ア、アレスティラ様……。

 優しいなぁ。


「それから、事後承諾となってしまうが……」

「何でしょうか?」

「私と婚姻を結んでもらうことになった」

「え?」


 えーっ!?

 婚姻?

 な、何で?

 アレスティラ様と?


「な、何故ですか?」


 心のままに騒ぐことはなかったが、頭の中は大混乱だ。

 何で?

 いったい、どうなったらそうなるの!?


「きみが大切だからだよ」

「は?」


 大切だから私と婚姻?

 だから何で?


「パーティーで、きみは一人で世界を旅したい。って言ったでしょう?」

「言いました」

「側近候補たちのことを交渉材料にしようとしたみたいだけど、それくらいでは宰相からは逃げられないよ。逆に出奔の意思ありってことにされて私のように外に出してもらえなくなる。

 もちろん、手段を選ばないなら別だろうけれど……。この国は大陸を二分するほどの強国だ。追っ手から逃れるには別大陸に逃げるしかない。

 きみは2度とこの国に帰ってこないつもりなの?」


 バレていた。

 さすがアレスティラ様。


「だから私と婚姻を結んで、法王宮の奥に閉じ込めてしまおうと思うんだ」

「意味が分かりません……」


 本当に意味が分からない。


「私がきみを大切に思っているのは彼らもよく知っている。先ほどこちらに戻る時も多くの者に私たちの関係を匂わせることができた。これなら私たちの婚約が発表されても驚かれないだろう」

「アレスティラ様?」


 驚かれないって……。

 私はエリザベスと婚約関係にあったんですよ?

 二股野郎になるじゃないですか。

 私が!

 それも法王アレスティラ様を天秤にかけた男になるんですよ……。

 やめてください。


 じっと見つめていると、私の指がアレスティラ様に口付けられる。


「心配しなくても大丈夫だよ」


 ぎゃーっ!

 カッコいい……じゃないよ。

 何が大丈夫なんですか?

 素直に訊くしかない。


「宰相と、何を話してきたのですか?」


 すごく気になる。


「話というか……。

 宰相が用意した側近候補たちに入れ知恵をし、レンフィールドの立場を危うくする者が法王家にいるようだ。本当にレンフィールドが見聞を広める為と言って国外に出てしまったら、どうするのだ?

 まさか本気でヴィリジアンに次期法王が務まるとでも思っているのか?

 彼女の努力次第だが、予想値では広大なこの国の全土を支配下に置くほどの『聖魔法』の力などない。せいぜい半分だ。その事実は宰相に伝えてあるはずだ。

 だからレンフィールドを国に留め、傷ついた心を守るためには私の配偶者として傍に置いておくことが一番だ。

 何しろ次期法王の立場はこの国において私に次ぐものなのに、理解していない者が多すぎる。

 ここは私の配偶者とすることで更に盤石(ばんじゃく)な立場を与えることが法王であり、養父としての責務だろう。

 そう言って異論は認めないと付け加えた」

「は?」


 ヴィリジアンの魔力予想値って、そんなに低いの?

 もちろん、国土の半分を支配下に置ける魔力は十分強大だけど……。

 それじゃ私の代わりになれない。

 彼女の代になったら国が荒れる。


「それから側近候補ジョシュア·オーリー、アーサー·コックス、ルイス·ハーネットの3名は全て解任させること。私の侍従を回すから新たな候補は不要だということ。

 ハーネット公爵令嬢エリザベスとの婚約は、令嬢の資質に多大な欠陥が発覚したが矯正不可。よって破棄とすること。令嬢に瑕疵があったことから本来発生する法王家からの慰謝料は無し。しかし令嬢の今後を考え、公爵家に慰謝料は請求しないこと。表向きは異母弟ルイスの重大な不敬に責任を感じ、自ら婚約者の資格を返上したと発表すること。

 その健気な心にレンフィールドは感銘し、他の婚約者を不要とする意思を固め、(あかし)として法王の私と婚姻することにしたと合わせて発表すること。

 これによってレンフィールドは法王である私の配偶者としての立場も得る。

 国民から見れば聖女出現による国の乱れがおさまり、次代は間違いなくレンフィールドとなることが分かる。彼らから国の将来を不安視する気持ちを取り除くのも法王の仕事だからね。

 そして混乱の元である聖女サラ·ウチダだが、全くの進歩が見当たらないことから後見のオーリー侯爵家の教育方針に問題があったとみなし、ペナルティとしてこの3年間に支払った聖女の教育費を3倍にして国庫とレンフィールドに返納すること。

 それからきみの実父(ラザラス)に、レンフィールドは私の養子でこの先は配偶者となる。いい加減、立場を(わきま)えろ。と言った。

 あとは……宰相も含めて私の許可がない者は今後、法王宮への立ち入りを禁止する。

 このくらいだよ?」

「……」


 このくらいだよ?

 じゃ、ないです……。

 私の考えていたプランより恐ろしい。

 特に教育費の3倍返し。

 白金貨1800枚だよ。

 日本円で1800億円!

 侯爵家に返せるあてなんてない……。

 元々、オーリー侯爵家は法王家の跡継ぎになれなかった王子が(おこ)した家柄。領地はいい場所だが狭い。だから税収だけでは法王家ゆかりの侯爵家のメンツを保つのは難しく、毎年国から支給される歳費で賄っている。

 サラの教育費と銘打って大金を請求してきたのを満額支給していたのは事情を知っていたからだ。

 それを3倍にして返済しろってなったら、爵位と領地を法王家に返上して恩赦をもらえば何とかってレベルだ。

 今夜のパーティーでの騒動から数時間でここまで情報を集め、思考を巡らせ、宰相に認めさせる。

 やっぱりアレスティラ様は凄い。


「……きわどい内容もあるみたいですが、よく宰相が了承しましたね」


 特にアレスティラ様の許可がない者は法王宮に入れないって所。

 私との婚姻より納得しないだろうに。


「受け入れないなら死を罰にした『聖魔法』を宰相たちに使うって言ったからね」

「え……」

「それとも、私もレンフィールドと一緒に旅に出ようかな。とか、言ってみた」

「言ってみたって……」

「きみが大切だからって言ったでしょう」


 また頭を撫でられる。


「私は再婚になるから、婚姻の儀式は簡略化しようと思ったけれど、そこは宰相も譲らなくてね」

「……そうですか」

「3年後に、それは盛大な儀式と祝宴を催すそうだよ」

「はぁ……」

「周辺国だけでなくファーガス王国の王家にも特使を送って招待するって言ってたね。法王と次期法王の婚姻によって更に盤石となったグリース法王国を見せつけたいらしいよ」


 一人旅の予定が……。

 バカ3人やサラと離れられるのは嬉しいけれど……。

 違う首輪を嵌められたような気がする。


「それでね。レンフィールドは3年後の婚姻の儀式まで、この法王宮で様々なことを改めて勉強するから私と限られた者しか会えないことになる」

「アレスティラ様……」


 軟禁。

 いや、監禁ですか?

 法王宮でお勉強って今さら?


「まだ分からないかな?」


 微笑むアレスティラ様は尊いですが、頭の中が機能していません。


「3年……外の世界を見ておいで」

「は?」

「移動系の魔法って、たくさんの魔力と緻密な操作術が必要らしいけれど、レンフィールドなら使えるようになるよね?」


 何を言い出しているのだろう。

 婚姻を結ぶとか、法王宮でお勉強の日々とか言っているのに、外の世界を見ておいでって……。

 移動魔法。

 使えますよ、テンプレ通りに行ったことのある場所しかダメなんだけど。


 ───って……


「アレスティラ様!」


 思わずアレスティラ様に抱きつく。


「旅に出てもいいってことですよね?」

「うん。でも移動魔法を修得してからね。

 きみは私との婚姻に備えて、改めて法王宮の奥で勉強していることになるから。表立って外に出せないんだ」

「そんなの大丈夫です。移動魔法は使えますから」


 そう言うと、アレスティラ様が私の両肩を掴んで離し、真っ直ぐに見つめる。


 あれ?

 少し怖い感じがするんだけど。


「レンフィールド。移動魔法をいつ修得したのか、教えてくれるかな?

 あえて気付かないふりをしてきた部分もあるけれど、これからは色々なことをできるだけ話してほしい。きみを一人で外に出すことには変わりないから心配なんだ。

 もちろん全てなんて言わないよ? 私だって、どうしても言えないことがあるしね」

「それは、私を守ってくれる為……ですよね?」

「それ以外に何があるの」


 カッコよすぎる。


「でも、アレスティラ様に迷惑をかけてしまいます」

「きみが何処かに行ってしまうほうが困るよ」


 もー。


「大好きです、アレスティラ様!」


 再び抱きついた。


「私も愛してるよ、レンフィールド」


 優しく抱き締め返してくれる。


 この人が味方で本当に良かった。

 移動魔法を使って旅に出て、時々法王宮に戻ってアレスティラ様に近況報告をすればいいってことだよね。

 アリバイ工作は請け負ってくれるってことだし。

 あれ、でも……。

 近衛騎士たちや侍従は協力してくれるのかな?

 彼らも室内にいるのに話しちゃったけど。


 確かめようと顔を上げたら、当たり前だけど目の前にアレスティラ様の顔があった。


「あ……」


 キス、されちゃった。


「約束だよ? きみを守る為にも、ある程度の情報共有は必須だからね」

「はい……」


 約束のキスですか?

 何ですか、その手慣れた感じは?

 私にはないスキルを連発しないでください。


「今夜はもう遅いし、詳しい話は明日にしようか」


 微笑むアレスティラ様が普段より5割増しで眩しいです。





メイン·タイトルを少し変更しました。

見切り発車の弊害。

タイトルと内容が噛み合わなくなってきたので…。


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