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あっ、これ最強だわ  作者: 白銀次
第二章 イクシルベニア侯爵領
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狂愛

 物語の中で色々伏線を張ってきたけどその場その場で思いついた伏線を張ってたからほとんどの伏線がどこにあるのかすらも忘れてしまった今日この頃です。(今度全部読み返そ)


 では、本編どうぞ。(亀投稿でごめんなさい。今日はちょっと長いのでお許しを)

 「しかし、まさか()()()()を習得できるとはな...『聖騎士』と『暗黒騎士』という例があったから想定内ではあったが本当にできるとは思わなんだ。女限定のジョブまで取得できるようだしな」


 「『歌姫』か...」


 二人は塾考の末、綾人のステータスを完成させたが、その結果にレイストですらも驚きを隠せないでいた。


 「『歌姫』は本来、主神への信仰心が強い女の中でも選ばれたものしか取得できないユニークジョブだ。発現したものはほとんどの場合協会で聖女として祭り上げられるだろう」


 ユニークジョブというのは、極稀にしか現れないジョブのことを指し、その一つ一つが強力な力を持っている。さらに、進化などはなく、ジョブを取得することができた時点でそこそこ力を扱える状態なのが特徴だ。


 「しかし、他にもユニークジョブは取得できたのによかったのか?」


 「ああ、確かにユニークジョブは強いが使い方の難しいものが多かったし、取ろうと思えばまだポイントは残ってるから問題ない。今は使いやすいノーマルのジョブと『歌姫』だけでいいだろう」


 「『歌姫』もかなり特殊ではあるがな」


 「確かにそうだが、やっぱり()()()ジョブは必須だろう」


 俺のゲーマー脳がそうささやいている。間違いない。前の世界ではあんなゲームやこんなゲームを...ってあれ?俺なんのゲームやってたっけ?...そもそもゲームしてたっけ?...まあいいか。


 「そうか、まあ主殿が満足しているのならよかろう。ところで、主殿少しジャンプしてみぬか?」


 「...え、カツアゲ?しかもそんな古い...」


 「そのかつあげとやらが何かは知らぬが、早くジャンプしてみるがいい」


 「いいけど...」


 レイストのよくわからない提案にわざわざ断る理由もないので綾人はのった。いつもどおりに軽くジャンプをしてみる。


 ぴょん   ごんっ   どさっ


 「へ?へ?へ?」


 綾人は何が起こったか分からず目を白黒させている。それを見てレイストは


 「クックックッ」


 と、笑いをこぼしていた。


 「レイ、今何が起きた」


 綾人をこうなることを分かっていたのであろうレイストに恨みがましい目を向ける。


 「何簡単な話だ。主殿が力を制御できていないだけだよ」


 「力の制御?」


 「ああ、今までも超速レベルアップによって能力が飛躍的に上昇したことはあっただろうが、それはそう意識するまでもなく体が順応し、無意識に能力の制御ができていたのだろう。だか今回は能力のふり幅が尋常ではなかったからな、通常の人間の状態からジョブによるステータス補正で身体能力は当然その他の知覚能力なども格段に上昇しておる。その変化に体が追い付けず、結果今のは普通にジャンプしただけのつもりだっただろうが跳躍しすぎて天井に頭をぶつけたというわけだ」


 「なるほどな、そういうことか...」


 綾人は理解できたうえで、軽く床を蹴ってステップを踏む。   ごんっ


 「っつ。一歩踏み出す程度のつもりなのに壁までたどり着くなんて...」


 「まあ、ちょっと体を動かせば感覚はすぐにつかめるさ」


 「ならいいんだが...仕事が始まるまでまだ少し時間があるからそれまで草原で体動かすか」


 「うむ、それがいいと思うぞ、そのまま仕事をすれば屋敷のものを破壊しまくるだろうからな」


 レイストはクククと笑いながらそう言った。




 外は夜の帳が完全に降り、光源は月明りのみとなっている。その月明りが窓から少し差し込んでいる部屋で床から黒い影がぬっと出てくる。


 よくよく見てみればそれは人の形をしており、暗い部屋の中僅かな月明りが照らす部屋でも分かるほどの美貌の持ち主だった。


 「さて」


 美貌の持ち主であるレイストは目の前のベッドで無防備に寝ている銀髪の美少年に目を向ける。その銀髪も僅かな月明りでキラキラと輝く美しいものだった。


 今()()()()状態にある美少年はまさしく無防備であるといえよう。


 「...()()()()()()()()


 レイストは月明りを音に変えたかのような綺麗な声で物騒なことを呟く。


 市川綾人...最初は面白半分だった。魔王となり、日々退屈していた妾は突然召喚され、そしてその召喚者が面白そうな者だったから暇つぶしになるだろうと主従契約を結んだ。ひどい扱いを受けることはないだろうと確信するまで相手を観察してからだったからその選択に後悔はしなかった。この者の成長を見つつ、この者の周りで起こるであろう面白いイベントを見ようという気楽な考えだった。


 だが、この者の成長スピードは異常なまでに早かった。たしかにレベルが自動で上がるスキルを持っているし必要経験値が十分の一になる称号も持っていた。だが、それにしても早すぎたのだ。スキルと称号を加味しても説明がつかないほどレベルアップが早い。その原因を探るために妾は全力で()()()()()した。すると、なんということか魔力や経験値がこの者に向かって能動的に集まってきていたのだ。その光景を見た瞬間原因にたどり着くのは容易かった。


 ()だ。こんなことができるのは奴しかいない。世界に存在する生物の中から個人を選び執着し、優遇することが可能な存在。奴に思い至ったとき一つの疑問が晴れた最近奴はバカのようになったのだ。この世界に存在する生物の中で最強である妾は奴とコンタクトを取れる立場にあるのだが、奴はもっと物静かで冷静沈着な頭のキレる者であった。だが、それが最近まるでバカのようになったのだ。冷静沈着など欠片もない。会話の内容もバカっぽい。最初は突然どうしたのかと慌てたものだ。だが、今ならそうなってしまった理由が分かる。


 個人を選び執着し、優遇することが可能と言ったが、あくまで可能なだけなのだ。それを行うにはそれなりの代償が必要となる。奴が代償にしたもの。それは今の奴の状態が物語っているだろう。


 話が脱線しすぎた。今はこの者が危険な存在となる可能性が大いにあるから始末をしようかしまいか、という話だ。妾の実力を越されるのにそう時間はかからないだろう。妾の実力を越された後、この者が魔族に牙をむかないという保証はない。


 「あの、レイスト様...?」


 「...ミカゲ」


 「その、物騒なお言葉が聞こえてまいりましたので...」


 影から出てきたミカゲは不安気に瞳を揺らしてレイストを見つめる。


 ミカゲにとっては闇から自分を救い出してくれた恩人か。


 三ヶ月自分が鍛えてきたミカゲの不安気な瞳にレイストは少し戸惑ってしまった。


 なんだ、この感情は?主殿から丸投げされたような形で鍛え始めたが、この三ヶ月の間に愛着がわいてしまったとでも言うのか、この心は。


 「アヤト様を殺されるのですか?」


 変わらず不安気な瞳を揺らしながらミカゲは問いかける。


 「主殿を殺す...」


 口に出して初めて、今の自分の言葉に自分が激しい拒否感を抱いたことに気づいた。


 「クク、ククク、そうか、そうだったか...」


 自分の感情に気づき、思わず笑いがこぼれだした。


 「妾の心はいつからこんなにも脆弱になってしまったのだろうなぁ」


 その言葉はたかだか三ヶ月程度で他人に愛着をもった自分の心を卑下するものであったが、そこから負の感情は見られなかった。


 「レイスト様?」


 突然笑い出したレイストにミカゲは少し驚いているようだ。


 「いや、なんでもない。殺さんよ」


 その言葉を聞いて、ミカゲの瞳から不安気な色が消えた。


 「可愛い弟子にそんな顔をされてはなぁ」


 それに、仮にここで主殿を殺してしまえば、必ずや奴がなんらかの面倒なアクションを起こすだろう。主殿には『溺愛』されていると言ったが、主殿のためにならいかなる犠牲もいとわないだろう。この域はもう、『狂愛』だ。しかし、なぜ奴は主殿にそんなにも固執しているのだろうか、たかが一人の人間であるはずの主殿に。


 「あの()()は何を考えているのだろうなぁ」


 レイストの突然の訳の分からない呟きにミカゲは首をかしげるが、レイストは気にしない。


 綾人の持っていた女神に愛されたものの証である『転生者』の称号を思い出しながら、部屋を微かに照らす光の光源を窓から見上げるのだった。

 ブックマークや評価、感想をしていただけるとモチベに繋がります。してやってもいいだろうという方はぜひお願いします。


 ミカゲ「そういえば、主従契約を交わしているレイスト様ではアヤト様に危害を加えることができないのではないですか?」


レイスト「ああ、それはだな、主殿には言っていないし言うつもりもないが、リセットされたことによって主殿の『テイマー』が消滅したから主従契約も一緒に吹き飛んだのだ」


 ミカゲ「なるほど、それはなかなか面倒な仕様ですね」


レイスト「うむ、魔族の中で『テイマー』を生業としていたものがリセットするのを見たことがあるのだが、大量の主従関係を結んでいたモンスターたちが逃げ出して随分と悲惨なことになっていた」


 ミカゲ「それは、お気の毒に...」

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