美男子=美少女は成立する
今日散髪に行ってきたのですが、切っている途中でマスクの中に自分の髪の毛が入ってきて、でも店内で外すわけにもいかないから散髪が終わるまで気持ち悪さに必死に耐えていた今日この頃です。こういう時にマスクがちょっと不便と感じますね。
では、本編どうぞ。
「アヤトくんってさ、女装したら可愛くなりそうじゃない?」
「は?」
またまた休日、自室で一緒にゴロゴロしていたルナの突然の言葉に綾人は間の抜けた声を上げる。
「だから、アヤトくんって女装したら可愛くなりそうじゃない?」
「いや、別に聞き取れなかったわけじゃなくてだな...。突然どうした?」
「突然そう思っただけだよ。あ、そうだ私の服着てみてよ」
「いや、待て待て待て突拍子もなさすぎるって」
「え~いいじゃん!見たいんだも~ん」
ルナが擦りつきながら言ってくる。だがしかし、そんな可愛い姿でねだられればいつもなら即落ちしているところだが、今回は流石に男の矜持というものがある。
「流石にダメだ。俺にもプライドというものがある」
「ええ~、そっか~...」
綾人が頑として言い張るのでルナが無理かなと思いつつ引き下がろうとすると、
「別によいではないか、着ている物が男物になるか女物になるかだけの違いであろう?」
お気楽魔王が思わぬ援護射撃をしてきた。だが綾人も当然その程度ではひるまない。
「レイ...年がら年中そんな肌色の多い恰好をしているお前にはわからないだろ」
「主殿、よくもまあそんなデリカシーのないことを平然と言えるものだな」
「デリカシーの欠片もない奴に何か気遣う必要でもあるのか?」
「ほお、そうかそういうことを言ってしまうのか主殿、こうなったら...む」
何か言いかけたレイストが突然口をつぐんだ。綾人は一瞬不思議に思ったが、すぐに理由が分かった。
「はやく」
「分かっておる」
主語のない綾人の命令口調に従い、レイストは影に潜った。と、同時に綾人の部屋のドアがノックされる。
「アヤト入ってもよろしいでしょうか」
「ああ、お嬢構わないぞ」
声から予想できた通り、綾人の部屋に入ってきたのはベルだった。
「何か用か?」
「いえ、その通りかかったら面白そうな話をされていたので...。というかルナ以外にも誰かいませんでしたか?声がしたような気がしたのですが」
「気のせいだろう、見てのとおりこの部屋には俺とルナしかいないぞ」
「確かにそのようですが...。あなたの能力は計り知れませんからね。どこに何を隠していても私はおかしくないと思っていますよ」
「買いかぶりすぎじゃないか?」
綾人が鋭すぎるベルに内心冷や冷やしていると、
「ベル様もアヤトくんの女装に興味あるから入ってきたんですよね!」
ルナが飛び込んできた思わぬ最強の味方に目を輝かせてそう話を振った。
「え、ええ興味があるというか...。そうね興味がありますね」
少しだけ恥ずかしそうにしたベルだったが、少し詰まった後すぐに欲望に忠実になった返答をした。
おい、いつもの理性はどこに行ったよお嬢。帰ってきて~お嬢の理性~。
綾人にとってベルは最大の障壁と言えるだろう。女装するかしないかで大仰な表現かもしれないが、男のプライドがかかっているのだ。
だが、はっきり言って勝敗は決まっていた。欲望に忠実になったベルが何をするかなんて火を見るよりも明らかだろう。
「アヤト、見せてくれないかしら?」
綾人は思った、ああ、これは命令だなと。
綾人はベルの従者になった時から、けじめとしてベルがもし命令をした場合は絶対に遂行しようと決めていた。だから命令されれば従うしかないのだ。
だがしかし、今回は自分の名誉に関わる。なので、綾人は命令拒否ではなく、こんな提案、というか行動をした。
「...流石に女装をするのは抵抗があるんだだからこれで許してくれないか?」
そう言って綾人が指をパチンと鳴らすと、
「これは...」
「わぁ~」
目の前で起こっている光景にベルが思わず目を見張り、特に驚いてはいないようだがルナがうれしそうな声を上げる。
「どうだ?」
そう言った綾人は髪が伸びていた。顔の輪郭や、顔のパーツが変わったわけではない。だが、そこには髪を肩ほどまでに伸ばした銀髪の美少女が立っていたのだ。
着ている服は男物だが、美少女が着ればボーイッシュという表現ができるほどに映える。その紅と碧のオッドアイは艶やかに煌めいているように見え、その瞳は同姓ですらも惑わせそうだ。だが、勘違いをしてはいけない、これは髪が伸びただけの綾人なのだ。オッドアイの銀髪美少女ではなくオッドアイの銀髪美男子である。
「ほ、ホントにアヤトなのですか?」
「なんだ?髪が伸びただけで俺はずっと目の前にいただろう?」
「確かにそうですが...」
「アヤトくんすご~い!色も変えたりできるの?」
「ああ、できるぞ」
綾人がそういうと見る見るうちに煌めく銀髪はすべてを飲み込む漆黒へと変貌していく。
「ほら、どうだ?」
「すごいすご~い!」
語彙力を失ったルナが小さい子のように凄い凄いとはしゃいでいるが、ベルはずっと信じられないものを見ているような目をしている。
「アヤト、それどうやって髪の長さや色を変えているのですか?私が知らないだけでそういうスキルが?いえ、でも一般的に知りえるものはすべて網羅しているはずですし...」
「スキル事態はお嬢だって知ってるものだ。ただ、ちょっと違う考え方で使ってるだけだ」
「違う考え方?」
「まあ、いずれ話すさ、今話すと長くなる」
「そうですか...全くあなたは堂々と主に隠し事があると言いますね。もうちょっと従者としての自覚を持ってくれないかしら」
「心外だな、命令されればそれは必ず遂行するつもりだぞ。今だって命令されたからこんなことしてるんだ」
綾人はそういいながら自分の伸びた髪を手に取り見つめる。
「では、命令すればすべての秘密を話してくれるのですか?」
「命令の限度をちゃんと考えられると思って俺はお嬢の従者になったんだがね」
「...分かっています。無理強いするつもりはありません。ましてや命令を使ってだなんて絶対に」
「助かるよ。やっぱりお嬢を選んで正解だったみたいだ」
「あら、私があなたを選んだのですよ?」
「はは、確かにそうだな。...で、これで満足か?」
綾人は髪を青くしたり赤くしたり、しながら聞く。
「...少し要望を言ってもいいでしょうか?」
「...仰せのままに」
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