聡明お嬢
夏至は過ぎましたけどやっぱり一日二日じゃ日の上がっている時間は大して変わらないですね~。暗いほうが好きだし、暑いより寒いほうがいいので早く夏が過ぎ去ってほしい今日この頃です。とは言ってもまだ7月にすらなってないですが。
では、本編どうぞ。
深夜、暗い部屋の中に黒く光る不思議な魔方陣が出現する。しばらくすると、銀髪で紅と碧の目を持った美少年がその上に現れた。
「ふう」
銀髪の美少年、綾人は小さいながらも疲労のこもったため息を吐いた。
「戻ったか主殿」
「レイか」
綾人が振り向くと絶世の美女、現魔王でもあるレイストが立っていた。
「ずいぶんと疲れているようだな」
「...嫌なものを見たからな」
綾人が苦い顔をしながら言う。
「そうか、まあ普通の人の子であれば首を突っ込む世界でもなかろうからな。もう寝てはどうだ?明日も勉学があるのだろう?」
「ああ、そうだな。そうする」
そう言って綾人がベッドに向かおうとすると、ドアから風が入ってきたのか、廊下の少し冷たい風が部屋に侵入してくる。
ドアに目を向けると、そこには部屋をのぞき込むルナの姿があった。
「アヤトくん?」
「どうした?ルナ」
突然訪れて突然疑問形で名前を呼んできたルナに驚きつつ、冷静に返答する。
「その、なんでか分からないけど、大丈夫かなって...」
「!...ルナにはかなわないなぁ」
ルナは勘だけで綾人に何かあったかもしれないと思ったのだろう。だが、
「大丈夫だ。心配することは何もない」
そう、ルナにやさしく微笑む。
「なら、よかった!」
満面の笑みで言うルナをなでなでしたいと思う衝動は仕方のないことだ。というわけでその衝動を実行に移すことにした。
自らの身体能力をフルに使って、ドアから顔をのぞかせていただけのルナに接近し、お姫様抱っこをして、ベッドに運んで寝かせる。
「あれ?」
綾人の行動はルナの認知できる速度を超えていて、突然視界が天井に移っていたルナの頭には疑問符がいっぱいだ。
「まったく、寝たほうがいいと言うたのに...」
レイストは何かを察して素早く影に潜った。
「ルナ」
いつの間にかルナの隣に寝ころんでいた綾人は、優しく名前を呼びながらルナを抱きしめ、サラサラな白髪の流れる頭をなでなでし始めた。
「んふふ♪」
最初は状況を理解できていなかったルナだが、綾人に抱きしめられ、頭をなでられていることを理解した瞬間気持ちよさそうに目を細め、うれしげな声を出し始めた。
そんな二人の世界はしばらく続いた後、二人共寝落ちして幕を閉じた。
「ねえ、アヤト」
「ん?なんだ?」
綾人は今ルナと一緒にベルのお茶に呼ばれて、一緒にお茶を飲んでいた。今はほかの侍女は下がっているので敬語を使っていない。
「ずっと頭を悩まされ続けていたこの街の裏ギルドが壊滅したらしいんです。なんでも警備隊の詰め所の前に突然100人ほどの気絶し、拘束された人間が現れたんですって」
綾人は少しぎくりとしたが、慌てず冷静に返答する。
「へえ、よくそれが裏ギルドの者たちだってわかったな」
「何人か裏ギルドの者として捜査を進められていた者たちも含まれていたのです。騎士団との抗争に参加していた人物もいて、最終的には目覚めた人に尋問をして確定しました」
「ふ~ん、まあ何はともあれ捕まったんならよかったんじゃないか?」
「確かにそうですが、今は裏ギルドの連中のことじゃなくて誰がやったのかっていうのが最大の問題になっているのです。人間たちと一緒に裏ギルドのアジトを示した地図が落ちていたのだけれど、そのアジトに行ってみると裏ギルドを掃討できなかった最大の問題点であるSランク級の人間が首を刎ねられて...お茶をしているときに言うことではなかったですね。とにかくSランク級ですらとても簡単に倒されていたそうです」
「Sランク級が...」
綾人は少し悩んだふりをしてみる。が、なぜかベルからはジト目が向けられていた。
「なんだよ?」
「いえ、一体だれがやったのでしょう?」
これは、気づいてるな。全く聡明すぎるのも考え物だな。小学生が至る発想じゃないだろ。
「さあ、俺に聞かれてもな」
白々しくとぼける綾人だが、確信しているのかベルからは冷たい視線をプレゼントされた。
「おいひー」
こちらの話はそっちのけでお茶菓子を頬張っていたルナがうれしそうな声を上げた。
「まあ、いいです。そういえば、そろそろ入学が近づいてきましたね。一応進捗は聞いているけれど勉強のほうは順調かしら?」
「進捗を聞いているならわかるだろ。とても順調だ。先生が言うには予定よりはるかに早く進んでいるらしい」
「そう、やはりあなたを選んで正解でしたね」
「そう言ってもらえて光栄だよ」
「...アヤト、貴族は皆が皆私のように平民を同等に扱っているわけではありません。平民であるあなたのことを蔑むものは少なからずいるでしょう。私と同じ貴族科に入るものは勿論、あなたが通う騎士科の中にも次男や三男で家督が継げないので上級貴族に取り立てられ、従者として働いている者もいます。ですが、あなたは絶対に蔑まれるべき対象ではありません。それは努々忘れぬようお願いします」
「分かっているさ。それにお願いなんてするな。お嬢は俺の主だろ?」
「ふふ、そうですね。では、命令ですよ?アヤト」
「確かに承った」
「ルナ、あなたもですよ」
「ふぁい?」
恐らく話は聞いていなかったのだろう。口いっぱいにお茶菓子を詰めたルナがのんきに首をかしげたのを見て、二人の顔に自然と笑みが浮かんだ。
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レイスト「もうそろそろ学園編か?」
綾人 「多分そうだろうな」
ミカゲ「私は一体どんな立ち位置になるのでしょう?」
綾人 「さあな?俺的にはお前がまだ腹に一物抱えてそうなのが気になるぜ」
ミカゲ「そう、ですか...」




