到着
今綾人とルナは馬上でいちゃついている。
リルクの街を発ってから早五日、リルクからイクシルベニア侯爵領までは一週間ほどかかり、何個か宿場町を経由して侯爵領に向かっていた。
馬上にいるのは綾人が御者をしているからである。この体は覚えが早くフィリアに「必要だから」と言われ、御者の仕方を教えてもらったら直に出来るようになった。
今は森の中に敷いてある街道を通っている。と、『索敵』に反応があった。今までも途中何度か魔物に襲われたが、どうやら今回は違うようだ。こちらに敵意を向けた人間のようである。直に馬車の中にいるフィリアと歩いて行動している周りの護衛達に声を掛ける。
「前方に敵がいる!恐らく盗賊だ!木の陰に隠れている!」
直に馬車からフィリアが出てくる。
「敵の正確な位置は分かるか」
「右に五、左に三だ俺が合図をしたら一斉に構えてくれ」
全員が頷く。魔物の時も同じようなことをしているので綾人の『索敵』は信用されている。
「気付いていない振りをしろ、襲ってきたらカウンターだ」
盗賊たちとの距離がだんだん詰まってくる。
「3、2、1、構えろ!」
綾人がそう叫んだ瞬間に木の陰から盗賊たちが飛び出してきた。護衛達は一斉に抜剣し構え、綾人も馬から飛び降りる。腰の剣に魔法を付与しながら抜剣する。
「ルナ!目を閉じておけ!『剛剣』『鋭敏』『軽量化』」
魔法剣への付与魔法は『剣士』と『魔法師』のジョブを持っていれば発動できるらしい。
馬から飛び降りるというタイムラグがあったが、圧倒的なステータスで綾人が一番最初に切り込む。右の五人の内三人を即座に斬り伏せる。因みにこれが初の人との殺し合いだが綾人は全く躊躇せず盗賊の上下を両断する。
他二人も即座に他の護衛が斬り伏せる。左側もフィリアとその他の護衛達が斬り伏せていた。死んでいるのは綾人が斬った三人だけだ。
「綾人は人を殺すことに慣れているのか?」
フィリアが怪訝そうな顔で綾人に聞く。当然だ。自分より年下のはずの子供が躊躇なく人を殺しているのだ。
「いいや、人を殺すのはこれが初めてだが?」
綾人が何でもなさそうに言う。
「なっ!初めてにしては躊躇が無さ過ぎじゃないか?私は初めて人を殺したとき吐いてしまったぞ?」
周りの護衛達も頷いている。しかし、綾人は馬に乗り直しながら、
「相手はこちらを殺しに来ている。ならば殺されても仕方ない。そう割り切っているだけだ」
「綾人、お前何歳だ?」
「12歳」
ってステータスウィンドウに書いてあった。
「...まあいいか」
何がいいのかは知らないが、納得(?)したようなので馬に乗り、ルナに声を掛ける。
「ルナ、まだ目開けちゃだめだぞ」
目の前の光景は十代には中々ショッキングな光景だ。ルナにはなるべく見せたくなかった。
「はーい」
ルナは素直に返事をする。血の匂いはするから目の前で何が起こっているのかは分かっているのだろう。
その後盗賊たちを片して。再び出発した。
・・・・・・・・・・・・
段々と大きな街が見えてくる。宿場町とは比べ物にならない程の規模の街だ。馬車の中からベルが顔を出す。
「あれが私の両親が治めている領地です!」
「お嬢様!危ないのでおやめください!」
馬車の中から侍女とフィリアの制止の声が聞こえる。ベルは久しぶりの帰省にテンションが上がっているのだろう。
「あれかー...でかいな侯爵領」
「そうだねー。リルクの二倍くらいあるんじゃない?」
綾人とベルの会話は実にほのぼのとした雰囲気だ。
「あの街で俺達の新生活が始まるんだぞ」
綾人は前に座らせてているルナをぎゅっと抱きしめる。
「もーアヤトくん、遊びに来たんじゃないんだよ?」
「分かってるって」
笑いながら馬を操り、イクシルベニア侯爵領に向け着々と進んでいった。
・・・・・・・・・・・・
「近くで見るともっとでかいなー」
街門の前までくるとさらにその大きさが分かった。街を囲む外壁もかなりの大きさだ。門は大量の人が出入りしており。獣人やドワーフなどの亜人もちょこちょこいる。
門の入り口は二つあり、左は大量の人が並んでいるが右にあるもう一つの入り口はスカスカだった。それもそのはず右の入り口は貴族用の入り口だからだ。格差社会、そんな言葉が頭に浮かぶ。
門に近付いていくとこちらの馬車に気付いた衛兵が声を上げた。
「ベル様が帰ってこられたぞー!」
衛兵が声を上げたことにより平民用の入り口の列もざわざわし始めた。
右の入り口に近付くと数人の衛兵が出てきて馬車に向かって一斉に、
「「「「「お帰りなさいませ」」」」」
と頭を下げた。そして、ベルが馬車から顔を出し、
「お出迎え有難うございます。職務に戻ってもらって結構ですよ」
ベルがニコニコしながら言うので数人の衛兵達がベルに見とれていた。
綾人がその光景を苦笑いしながら見ていると、馬車の中からこえが掛かった。
「アヤト、一度馬車を止めろ。領主邸までは私が御者をする」
綾人は領主邸の場所を知らないのでフィリアが御者をするようだ。
「分かった」
綾人はそう言ってフィリアに御者を譲り、フィリアにより再び動き出した馬車は領主邸に向かい始めた。




