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第42話 トト〇

 衝撃の事実が発覚してしまった。 

 帰りに買ったメロンがあまり美味しくなかったのだ。甘味成分が足りない。少し甘いきゅうりという感じである。何ということだ。道理でメロンがあまり高くなかったはずである。迷宮産の植物の種が金貨1枚だったのに比べて銭貨2枚という安さだった時に気付くべきだった。甘いメロンが食べたいが、一朝一夕で作れるものではない。これはもう迷宮産の植物とやらに期待するしかない。

 俺は帰ってから早速教えられたようにマンドラゴラを切って、畝1列に飢えた。その後1列づつに、トウモロコシ、ニンジン、アスフォデルス、マレニアを植えていった。

 あとは水だが、俺は水魔法が使えない。しかし、家の中には水の出る装置が台所やお風呂などにいくつかある。俺はそれを大きな桶に入れて収納魔法に収めた。

 それを菜園の前に出して、風魔法に乗せてスプリンクラーのように水をまいた。

「あとは魔力だな………」

 光、風、闇の魔力、どれがいいだろうか。よく分からないので、ひとまず菜園を前から三分割して、前半を光の魔力、中間を風の魔力、後半を闇の魔力をふりまくことにする。

マンドラゴラと迷宮産の種、ついでに俺の植えたサツマイモと人参、トウモロコシにも魔力を降り注ぐ。先生が植えた1列には魔力をふりかけないように注意した。迷宮産以外に魔力を撒くとどうなるかわからないからな。

 全ての作業がひと段落して菜園の前に立った。

「あとは待つだけか………」

「いや、音楽を聞かせると良いぞ」

「おわぁ!!」声のした後ろを振り返ると、俺の後ろにはサタン様がおどろおどろしい椅子に腰かけていらっしゃる。

「いきなりで、驚きました。音楽ですか?」

「うむ、音楽は植物の成長を促すからな。是非これで一曲奏でるのだ」

 収納魔法に入れておいたギターを俺に手渡してきた。やはり、収納魔法で入れたものはサタン様は自由に使用可能のようである。それにしても音楽か。植物に聞かせるのはいいと聞いたこともある気がする。クラシックを聞かせた植物とロックを聞かせた植物はそれぞれで成長の度合いに差がつくとかなんとか。しかし、科学的な根拠があるのかどうかは分からない。もしかすると、サタン様がただ音楽が聴きたいがために現れたという可能性もある。闇の魔力を使っているし、ここはいう事を聞くことにしよう。

 クラシックな曲が植物にはいいと聞いたことがあるが、ギターでそんな曲を俺には弾くことができない。

 仕方ないので、知っている曲を演奏することにする。

 俺が選んだ曲は、どこか懐かしく、ゆっくりした曲調で、奏でているととなりに大きな動物や人を運ぶ猫がやってきそうなあの曲である。少女も「トウモコロシ」という不穏なワードを残すくらいに印象に残っていたので、植えたトウモロコシを見てこの曲が頭に浮かんでしまったのかもしれない。 


 ♪~♪~♪


 「善き哉、善き哉。カリュキリア地方の田園風景が俺様の脳裏を横切ったわ。植物たちも大きく成長することだろう」俺の演奏が終わると、サタン様は両手を叩いて拍手をする。「俺様の闇の魔力と、お主のメロディーで立派な【トウモ殺し】を作ろうではないか。フハハハハ」

 サタン様が言うとトウモコロシが毒性の植物のように聞こえるが大丈夫であろうか。 

「サタン様、あれはトウモコロシではなくトウモロコシですよ」

「そうなのか? お主の頭の中で【トウモコロシ】と響いておったからな。まぁよい、これからは毎日植物たちに聞かせてやるとよい」

「毎日?」

「そうだ、毎日だ」

 サタン様が毎日聞きたいだけではとは言い返せない雰囲気があるので、俺は承諾する。一曲でいいっぽいので、それほどの労力でもない。ギターを弾くのは楽しいしな。俺は水やりと魔力やり、それに音楽を奏でることを日課にすることにした。


 それから早朝に、日替わりでいろいろなメロディーが庭から流れるようになるのであった。

 


ポイント、いいね、ありがとうございます。投稿の原動力になります。

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