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第37話 昆虫食

 このファンタジーな世界にも四季のようなものがある。今はすっかりと、太陽の日差しが燦燦と照り付ける夏の季節になっている。王族である俺の家には魔道具による冷暖房設備が完備されており、家の中にいれば外界の熱気から遮断され極楽な生活を送ることができる。

 しかし、俺は今、暑い気温の中部屋の外に出てきていた。それも、来たことのない森の中だった。森の中は背の高い木々が林立しており、太陽の日差しが直接届くのを防いでおり、いくらか王都の街中の気温よりはましになっていた。

 何故、こんな森に来ているかと言われれば、エドガエル君と昆虫採集に来ているのだ。あれから、エドガエル君は昆虫採集にはまった模様で何度か一緒に前の場所で昆虫採集を行っていたのだが、今回はエドガエル君の案内で来たことない王都の近くの森へとやって来ていた。この森には訓練の一環で親と一緒に来たことがあるらしい。森で修行するなんて、エルフっぽい感じがする。その時に前の場所では見た事がなかった蝶を発見したらしい。

 目をキラキラさせながら一緒に行こうと誘われたので、暑いから嫌だと断ることができなかったのだ。

「この辺で見つけた」

 案内が終わった場所は、森がちょうど無くなって少し叢になっており、目の前には切り立った崖があった。崖の上を見上げると、その上にも木々があるのが見える。崖の左右を見渡すとかなりの距離が続いており、探せば洞窟なんかがありそうな雰囲気が感じられる。

 今日は洞窟を探すのがメインではないので、俺は早速【ブラックホール】のから虫取りの網と虫かごを取り出して、一つをエドガエル君に渡す。

「ありがとう」

 エドガエル君は相変わらずエルフ語でしか喋らない。ラズエルデ先生によれば、エルフの寿命は長いから、そのうち覚えるの精神で言語を学ぶから、よっぽどの事がない限り他言語の習得はかなり遅いものとなるらしい。

 俺のエルフ語の勉強にもなるから、エドガエル君とは常にエルフ語で喋るようになってしまっている。

「じゃあ、捕まえようか」

「うん」

 パッと見たところ、前の場所にはいなかったような蝶がたしかに飛んでいる。エドガエル君は蝶を追いかけて走り出した。しかし、木の無い場所なので、俺にとってはかなり暑い。俺は木のある森の中に入って、蝶以外の昆虫を捕まえることにした。木に止まっている蝉が今日のターゲットだ。

 俺はゆっくりと蝉の止まっている木に近づき、網を振り上げる。逃げようとするが、その軌道を予測していたので、丁度蝉を網の中へと捕獲することに成功する。

 やってみると意外に楽しくなってきてしまって、気付いたら虫かごの中は大量の蝉で溢れていた。俺は一度エドガエル君と合流しようと、崖のある場所へと戻ってみると、エドガエル君の虫かごも蝶で溢れていた。

「どこ行ってたの?」

「森の中で蝉を捕まえてたんだ」

「蝉? 本当だ!! お腹が減っていたの?」

「食べないよ? 蝉って食べれるの? 蝶と一緒で捕まえて標本を作ろうかなって」

 エドガエル君の目は大きく見開かれた。

「蝉でも標本って作れるのかぁ。僕も捕まえようかなぁ。蝉って食べ物だと思っていたよ」

 おおう。エドガエル君は蝉を食べているのか。エルフなら当たり前なんだろうか。エビの味がするって聞いた事もあるけど、それならエビを食べた方がいいからな。無理に蝉を食べようという気にはならない。エルフの食生活を否定する気はないのでここはスルーだ。

「昆虫なら何でも標本にできるよ。もしかしたら、小さな魔物なんかも標本にできるかもしれない。大きな魔物なんかも、骨の標本とかなら作れるかもしれないよ」

「そうなんだ。いろいろ集めてみたいなぁ」

 凄く昆虫採集の沼にはまってしまっているようである。

「ひとまず虫かごがいっぱいになったから、あっちで、標本を作ろう」

 俺は岩の陰になっているところを指さす。

「そうだね」

 俺達は大きな岩の陰に入った。

「ちょっと待ってね。【ウィンドカッター】」

 地面の草を刈り取って、作業ができる場所を作る。もうこのくらいの魔法ではエドガエル君は手を振って喜んだりはしなくなってしまった。ちょっと切ない気もする。

 俺は【ブラックホール】の中から針と展翅版と標本ケースを取り出した。俺はエドガエル君にそれを渡す。

「ありがとう」

 颯爽と標本づくりに取り掛かる。俺も折角なので、セミの標本造りにとりかかる。セミは蝶より簡単で

、殺してピンで刺せば標本が出来上がる。色などを綺麗にしたいなら、死んで固くなったものをお湯につけてから標本にした方がいいはずだが、そこまで凝ったものにするつもりはない。

 俺達は篭の中のものを全部標本にし終わったところで、お互いに標本を見せ合った。

「すごい綺麗にできてるね」

 エドガエル君の作った蝶の標本は色とりどりの蝶が並んでいる。対して俺の蝉の標本はあまり綺麗ではない。綺麗にできている事を褒めるとエドガエル君は嬉しそうにしていた。

「蝉も標本にするとそんな風になるんだね。僕も蝉の標本を作ろうかな」

「そうだね。いろいろな昆虫の標本を作るといいよ」

 集めだすと止まらなくなってしまうのが、コレクター心理というものだ。気分はリアルポケモ○というところだろう。俺達が岩陰でそんなことを話していると、がさがさと言う音と共に森の茂みが揺れた。

 エドガエル君は剣の柄に手をかけて、戦闘態勢をとる。俺は虫籠や標本セットを収納魔法で闇の空間に収める。

 音のする方を見ると、そこから皮の鎧を着こんだ冒険者風の女性が現れた。

 


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