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第31話 生着替え

「お主の考えは画期的ではあったが、そのことをどうやって証明すればいいかが難題じゃな。エルフは個体数も少ない上に子供ができにくい種族じゃからなぁ。エルフ同士からダークエルフが生まれたという忌み子の話も、1000年以上も前の話じゃからのぅ。妹は少し元気になった感じはしたんじゃが、やはり、まだ信じ切ってない様子じゃったわい。確たる証拠があればのぅ。お主はどうやってあんな事が思いついたんじゃ?」

 後日ラズエルデ先生の授業の時に尋ねてきた。俺は考えついたのではなくて、前世の知識で知っていただけではある。

「閃いたというか、なんというか……証明する方法はありますよ」

「それは本当か?どうすればいいのじゃ?」

「世代交代の早い植物で実験をするんですよ。いろいろな特徴を持つ植物同士をかけ合わせて根気よくやれば証明はできると思いますよ。具体的には………」

 俺はメンデルのエンドウ豆の実験を説明した。

「ふむ。ふむ。なるほどのぅ。しかし、私はあれから、それに関する文献を探してみたんじゃが、どこにもそういった類の研究はされたことがないようだったんだが。エルフの古代図書館にもなかったぞ。何故そのようなことを知っておるんじゃ?」

「それは閃いたとしか、いいようがないっていうか」

「思考実験だけで、そこまでの域に辿りつくとは流石は王族の血ということか。前は王妃が浮気してできた子供なんて言ってすまなかったのぅ。お主が、そこまで出生について熟考しておったとは、私の方が愚かだったというわけだ。それでお主はその研究はしないのか?研究が成功すれば地位やお金が手に入るんじゃないのか?」

「いや、特にする気はないですけど」

 結果はだいたいわかっているのに時間をかけて研究する気にはならない。地位も王族という最高の地位にいるわけだし、お金も特に困っているわけではない。使いきれないお金を持っている状態である。

「それじゃあ、こちらで研究してもいいのか?」

「別にいいですよ」

「おお、そうか妹に言えば、植物の実験をするかもしれん。ちょっとずつでもいいから引き籠りを治していきたいからのぅ」

「そういうことなら、研究をすすめてください。俺にも予想できない何か面白い発見もあるかもしれませんし」

 俺は表面的な知識しか知らないからな。長く研究すれば、俺の知らなかったこともいろいろ分かるかもしれない。俺はそんな面倒くさい研究はしたくはないけれどな。

「そうか。お主の家庭教師を引き受けて最初に会った時にはミスをしたと思ったが、こうしてみるとこちらも学ぶことが多い。お主との出会いは本当に僥倖じゃったのぅ」

「あっ、そういえば。この前は闇魔法の具体的なものを聞き忘れてたんですけど、どんな魔法があるんですかね」

「妹の方が詳しいのじゃが、妹はまだエルフ語しか喋れないからのぅ。私が詳しく聞いてこよう。妹が使っているのを見たことがあるものだと、着替えなんかを闇魔法でやっておったのぅ。多分収納魔法の派生じゃと思うんじゃが、鎧換装という闇魔法じゃ。収納していた服に瞬時に着替えて、着ている服を闇魔法【ブラックホール】の中に納めるのじゃ」

「おー、そんな事も闇魔法でできるんですね」

 前世のアニメで見たことがあるような気がする。俺は早速クローゼットにある衣服を闇魔法【ブラックホール】の中に入れる。そして着替えをイメージして、【鎧換装】と唱える。

 すると先ほど収めた衣服に瞬時に着替えることに成功した。

 なんて便利な魔法なんだ。これは素晴らしい魔法である。俺が喜んでいると、ラズエルデ先生が驚愕していた。

「はっ? 何故もう【鎧換装】が使えるんじゃ? おかしいのじゃ。一度聞いて使えるようになるなんて聞いたことないのじゃ」

 サタンの力を借りているから、俺の場合イメージさえしっかりできていれば使うことができるんだよね。前世のアニメで見たことあるし。確かそんなことを光の妖精リンネが言ってた気がする。

「まぁ、魔法は得意なんで……」

「得意にしてもほどがあるのじゃ………これが王族の血というやつか。王族の血恐るべしじゃ。版図を急激に拡大しておるのも頷けるのじゃ」

 ラズエルデ先生にとってはすべて王族の血ということで自己解決しているようである。ここは否定しないでおこう。

 その後、前とは違ってラズエルデ先生はエルフ語の授業をしっかりした後、帰っていった。早速遺伝の研究について妹と話し合うそうである。


そして翌日。

「早く起きてください。朝食のお時間ですよ」

 マーレが俺を起こしにくる。

「あともう少しだけ………」

 俺は布団の中から気怠い声をあげる。

「着替えをしなくてはならないんですから、食事の時間に間に合いませんよ」

「大丈夫だから」

「大丈夫じゃないですよ。もう絶対に遅れてしまいますぅ。ジークフリート様のせいで私まで怒られてしまいますぅ」

「わかった。分かったから」

 俺はしぶしぶ布団から出る。

「やっと出てきてくれましたか。それでは着替えを……ってクローゼットに衣服がありませんよ。どうなっているんです? えっ????!!!!」

 マーレがクローゼットからこちらの方に向き直ると俺の着替えはもう終わっている。

「あれ? さっきまで寝間着姿ですよね。いつの間に着替えたんですか?」

「ふふふ。昨日までの俺とは全然違うんだ。普通に着替えるなんて、もう時代遅れなんだよ、マーレ。見てて。そら」

 俺は【鎧換装】を使ってまた別の衣服に着替える。

「えっ? えっ?」

「ふふふ。魔法で瞬時に着替えができるようになったんだ。だから、これからはぎりぎりのぎりぎりまで起こさないでも大丈夫だから」

「えっ?? あっ? はい。わかりました………って、えええ、そんな魔法聞いたことないですよ。羨ましいです。どうやったら使えるんですか?私も是非使えるようになりたいです」

 おお、この魔法の素晴らしさに一度で気付くとは流石はマーレだ。なかなか見所がありおる。

「残念ながらマーレには使えないかな。先生が言うには普通の人には使えないらしいよ」

 残念ながらこれは闇魔法だからね。人間には扱うことができないらしいのだ。ふははははは。

「ぬぐぐぐ。これが格差社会というやつですか………」

 マーレの怨嗟の心の声が外に漏れ出していた。

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