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第25話 冒険

 今日は剣術稽古の日である。

 当分の間は剣術になれるために、柔軟体操、走り込み、素振りの後に、新人同士ペアで打ち合いをするというメニューを継続するようである。

 俺の我儘ボディーは走り込みの時点で悲鳴をあげており、素振りも上手くはできない。ここから実践さながらの打ち合いなんてもっての他である。ペアでの打ち合いはできるだけ、楽にやりすごしたい。

 やはりここは決まった動作をするのが一番いいだろう。

 「この前みたいに俺の真似を交互にしてほしいんだけど」

 エドガエル君に尋ねると「真似、交互」と呟いてこくりと頷いた。

 エドガエル君の真似の仕方はかなりレベルが高いので、今日はいくつかアレンジを入れてみた。

 左右に一度ずつ剣を重ねた後、下段の足への薙ぎ払いを入れてみる。この前は胴への水平斬りだったが、少し変えてみた。エドガエル君はなんなく対応して、少し上へジャンプして躱す。

 その後は俺に同じように左右に剣を合わせて、下段攻撃を繰り出す。俺はジャンプでは躱さずに後ろに飛びのいて躱す。攻撃が分かっていれば躱すのはたやすい。

 そうして交互に何度か打ち合ったあと、俺の体力が切れてきたので休憩を入れることにした。

 周りを見ると、相変わらず、回復魔法を使ってもらっている子達がちらほらいた。

 かなり危ない訓練だな。回復魔法をかけてもらえると言っても痛いことには変わらないからな。できれば、この練習方法でずっと乗り切りたいところである。

 休憩をしていると大分回復してきたので、横でぼーっと立っているエドガエル君に話しかけることにした。

 『虫を見に行きませんか?』

 俺はエドガエル君に習ったばかりのエルフ語で話してみた。すると、きょとんとした顔した後にエドガエル君は口を開いた。

 『○▼□×○▼□×○エルフ▼□×○▼□×』

 早すぎて何を言ってるか分からん。一つ言えるのは、『見ろ、あれを、人がまるでムシケラのようだ』とは言ってない事だけは分かる。あの教本役にたってないぞ。あと途中でエルフという言葉がでていた気がする。

 それにしてもエドガエル君、めちゃくちゃ喋るな。

 笑顔でまだ何かを話している。しかし、俺にはそのすべてが聞き取れていないんだ。こんなに反応するとは思わなかった。

『ストップ!! ストップ!! ゆっくり、話して』

『何で、エルフ○▼□×○▼わかるの?』

 ゆっくりとならある程度理解することができる。

『今、勉強中』

『○▼□×○▼○▼□×○▼僕もヒト○▼□×○▼勉強中なんだ。一緒○▼□×○』

 なんとなくわかる箇所から類推すると、エドガエル君もヒトの言葉を勉強中という事だろう。そこで俺は気づいてしまった。なんかいつもと逆の会話内容であることを。エドガエル君が話して、俺が単語で答える。もしかするとエドガエル君、人族の言葉あんまり分かってないんじゃないだろうか。

『○▼□×○▼□×○虫を○▼□×○行く?』

 これは本当に虫を見に行く約束をしている感じだろうか? ギャグのつもりだったんだけど、嬉しそうだし、一緒に行くことにするか。いつも俺の剣術に合わせてもらってるし、ここは交友を深めておこう。剣術稽古の日とその次の2日間は勉強もしなくてよくなったので、遊びに行くことはできるだろう。

『明後日、大丈夫?』

『明後日○▼□×○大丈夫だよ』

 俺は待ち合わせ場所と時間を指定することにした。明日にしなかったのは、ちょっとした用意をしていこうと思ったからである。

『明後日、昼すぎに、東門近くにある串焼き屋【牛牛亭】の近くで』

 たまにここの串焼きを買うために、俺は抜け出しているのだ。

『分かった。○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼行くよ」

 早すぎて聞き取れないが、おおよそ了解ということだろう事は分かる。

 

 そして2日後。

 待ち合わせ場所につくと、すでにエドガエル君は到着していた。 

『ごめん、ごめん。待った?』

『今、来たところ』

 俺達は教本に書いてあった定例分を交わした。エドガエル君を見ると、腰のあたりに剣をさしている。鉄製の剣である。この世界は物騒だし、そんなものか。気にしないことにしよう。

 対して俺は虫取り網2つと肩にかけた紐の先には虫かごを携えている。この日のために魔法で作って、用意してきたのだ。どうせなら、子供らしく虫取りをしようと思ったのだ。エドガエル君の装備とは雲泥の差である。まあ、俺には魔法があるしね。

『それは?』

 エドガエル君も興味をもってくれたようだ。

『着いてからのお楽しみで』

『わかった』

 エドガエル君はこくりと頷く。

『それで、どこで虫○▼□×○▼○▼□×○▼』

『門の外だね』

 俺は木材を手に入れるために門の外へとよく出ているから、虫がいる場所は知っているのだ。王都の中は、あんまりいないからな。

『どうやって○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼出るの?」

『大丈夫、俺に任せて』

 俺はエドガエル君と俺にインビジブルの魔法をかけた。

『これで大丈夫。門番、気付かれない』

 エドガエル君は首を傾げた。詠唱もせずに魔法をかけたので何が起こっているかわからないのだ。実際は周りから俺達の姿は見えなくなっている。

『大丈夫だから、行ってみよう』

 エドガエル君は頷いて俺についてくる。門番に気付かれることなくスルーパスで東門を俺達はくぐった。

『すごい。すごい。どうして?○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼』

 エドガエル君は、かなり興奮している。

『【インビジブル】って魔法さ。皆から見えなくなってるんだ』

『魔法?○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼○▼□×○▼凄い!!』

 手をぶんぶんと振って喜んでくれている。

『さあ、行こう!!』

『うん』

 俺達の冒険が今始まったのだ。





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