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第19話 再会

 はい、6歳になりました。


 エリィ姉さんは王立学園の寮へと旅立たれ、俺の気ままなスローライフがとうとう終わりをつげることになってしまった。


 毎日6時間にも及ぶ家庭教師とメイドによる授業が始まってしまったのだ。そして、今日は週に一度あるという剣術稽古の日である。俺は以前にヨハン兄さんと一緒にいったことのある王宮の宮殿近くにある修練場へと足を運んだ。体育館のような設備の中に入ると以前よりたくさんの子供たちがいた。入口のところで名前を伝えると、隅の方に案内された。その場所には数人の子供がおり、俺が近づくと視線をこちらへとむけた後、中心の方で剣を振るっている子供たちの方へと視線を戻した。

 その中に以前に会った解説野郎であるミカエル=ハイゼンベルクの姿があった。ミカエルの周りには3人の子供が固まって中心の方を見ながら会話をしている。

 早くもグループのようなものができていることに驚きつつも、隅にいる皆と同じように中心で打ち合いをしている子供たちを見学する。


 しばらくすると、教官らしき男の一人が大声をあげた。

「全員やめて、整列!!」

 中心で打ち合いをしていた子供たちは教官の前にすぐに集まり、整列をした。


「よーし、そちらの君達、こちらへ来るんだ!!」

 俺達の方を見て叫んだ。

 それに反応して、ミカエルのグループは駆け足でそちらへ向かっていった。遅れるようにして、何人かがゆっくり走り始める。俺はというと、えっさ、ほいっさと、我儘ボディを揺らしながら走っているのだが、歩いて近づいている子と同じスピードで中心の方へと向かう。


「きびきび走れ!!」

 怒声が飛ぶと、俺と並走して歩いてた子供はぴゅーッと走り去り、俺を置き去りにしていった。


 俺は到着すると、肩で息しながら、呼吸を整えた。この2年で俺の体は大分丸みを帯びてしまった。これも料理開発をして一日5食は当たり前、そして優雅にゴロゴロ生活も至極当然にして、甘味をおやつとして食するのは言うまでもない生活。これで太らない方がおかしいのだ。俺の我儘ボディは我儘し放題の状態である。

 そんな俺の状態を見て教官は苦い顔をして一瞥した。


「今日から新しく訓練に参加する者達だ。こちらから、第五王妃の長男であるミカエル=ハイゼンベルク」

「よろしくお願いします」

「そしてこちらが、西方第三軍の将軍の息子であるバーミアン」

「よろしくお願いします」

 教官は到着した子供順に全員に聞こえるように紹介を始めだした。自己紹介を聞いているとどうやら王族以外にも軍の幹部の子供達も訓練に参加している模様である。肩書が全員将軍の息子で、一兵卒の子供は参加していないようである。そして、俺の前の子の紹介がなされた。俺と同じ速度で最初歩いていた子である。よく見ると非常に整った顔つきをしている上に、耳が少し長い。これはファンタジーで有名なエルフという種族であろうか。

「王族特務ニ番隊将軍の息子エドガエル」

「………」

 紹介されたエドガエルは無言でお辞儀をした。特に無言である事に御咎めはない模様。

「そして最後に、第一王妃の次男であるジークフリート=ハイゼンベルク」

「よろしくお願いします」

 目立ってしまうのも良くないので、皆と同じように挨拶をしておく。しかし、それに反して、俺の自己紹介が終わると前で整列していた子供達がざわざわとしだす。ん? 何か俺やっちゃったのかと思ってよく聞いてみると、「まさか、あの?」「第一王妃ってことは、ヨハネス様の?」「あの王子の弟ってことは、やばいやつなんじゃ」「いや、しかし俺でも勝てそうじゃないか」「そんな事あるかよ。あの才能の塊であるヨハネス様の弟様だぞ」「しかし、全然似てないぞ」と兄に対する評価と俺が全然に似ていないことに関する事で皆をざわつかせていたようである。


「静かにしろ!!」

 教官が注意をすると、全員一斉に静かになった。

「これからこの8人も訓練に参加する事になる。分からないことがあれば教え合い、共に切磋琢磨し剣の腕を磨き、王国に貢献できるように研鑽に励むのだ!!」


「はい!!」

 目の前の子供たちは規律の取れた返事をする。


「今日はお前たちは見学だ。よく見て、どんなことをするか覚えておくんだ」

 

 そして、俺たちは隅の方へと誘導され、見学することになった。


「あそこで剣を振っているのは、先の大戦で活躍した東方一番隊将軍の息子のガネーシャだ。なんでも、もう魔法剣を使いこなすことができるらしいぞ」

「ミカエル様!!あちらを見て下さい。あの剣筋は水神流のものですよ。流れるような剣筋がまるで流水のようですよ」


 ミカエルと、その周りの3人は見学しながら特訓している子供達の剣筋についていろいろ述べている。俺は相変わらずの解説野郎っぷりに内心でほくそ笑んだ。

 そして、他を見渡すと残りの3人の内、2人も何かを話しながら見学しているようであった。それを見て俺は重要な事に気づいてしまった。

 早くも俺は、はみってしまっていることに!! このままではぼっちになってしまう。特訓風景を見ていると、2人でペアになって柔軟体操をしていたりする。これはやばい。

 ということで、同じく1人でぼーっとしている残りの1人に少しずつ近づいていくことにした。

 その一人はエルフのような少年であるエドガエル君だ。エルフかどうかはわからないけれど。

 俺は隣へと立つとぼっち回避のためにエドガエル君に話しかけることにした。


「いや~。結構しんどうそうだね。やっていけるか心配だな~」

 俺の声に反応して、こちらの方を見たエドガエル君は首をかしげる。

「あっ。俺はジークフリート。よろしく」

 握手をするために右手を差し出す。

「………エドガエル」

 エドガエル君も右手を差し出してくれたので、その手を握る。

「剣を使うなんてしたことないからさ。すごく不安なんだよね。エド君はどうなの?」

「………」

 エドガエル君は無言でまたも首をコテンと横に倒した。

「俺が王族って事で緊張してるの? 気にしなくていいよ。俺のことはジークって呼んでよ!!」

「………」

 またもや首をかしげるエド君。うう、会話のキャッチボールが全然できない。逃げ出したい………いや、しかし逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ。ボッチが待っている。

「その耳って、あれかな? もしかしてエルフ族だったりする?」

「………」

 エド君はやはり無言で首をかしげるだけだった。

 どうやら俺はファーストコンタクトを誤ったようだった………



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