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第113話 アーク・マーノコ①

 ここは天使と悪魔が住まう世界。2つの種族はお互いが干渉しあわないように、生活を営んでいた。

 悪魔は強大な闇の力を、天使は神聖な光の力を使って文明を発達させていた。


 天使は空を支配する。

 幾億の翼が雲を覆い、光ある場所こそが彼らの住処であった。

 高くそびえたつ塔は空の彼方に連なり、歌声は風となって世界全体に響き渡る。


 一方、悪魔は大地を支配する。

 大地は裂け、赤黒い炎が裂けめから噴出し、影の要塞が無数に立ち並ぶ。

 悪魔達は本能のままに生活し、混沌が世界を満たしていた。


 そんな要塞の一つで、大きな産声とともに一人の女の子が誕生した。

 その子は一言で言い表すなら異質そのものであった。

 まず見た目、悪魔にあるはずの角がなく、瞳の色は深淵の闇より黒い。悪魔の目は普通赤く染まっていなければならない。その暗黒を彷彿させる目は悪魔の世界では不吉の象徴であり、世界を滅ぼす前触れだとされていた。

 ひとたび泣き叫ぶと。要塞には無数の落雷が落ち、空腹を訴えると周りに毒煙をまき散らし、便意をもよおすと、体から炎が噴出した。

 誰もその女の子に近づくことができないのである。育てようとするものを排除するという、その矛盾。その女の子は親の愛情を知ることなく【忌み子】として森へとすてられることになった。


 森の魔物に喰われてしまうだろうと思われていたその女の子は、その無意識の力によって生き延びることに成功する。

 弱い魔物は食料になり、強い魔物は(かしず)いた。

 そして十数年女の子は森ですくすくと成長した。

 意識はあるが、言語を話すことはできない。狼少女ならぬ魔物少女であった。


 そして、犯してはならないこの世界の不文律を少女は破ってしまう。

 魔物を従えて、天使の領域へと移動を始めたのだ。


 異変を察知した先鋭隊の天使は魔物を統率する悪魔と対峙した。


 「止まれ!! これより先は天使の住まう場所!! お前のような闇の魔力を持つものが犯していい場所ではない!」


 「???」


 魔物を引き連れた少女は当然、その天使が何を言っているのか分からない。


 「それ以上、邪悪な魔物を引き連れてこちら側へと入ってくるなら始末しなくてはならない!!」


 「???」


 『もしかして、友達になろうとしているのかも。何て言ってるか分からないけど。ジローには親友のタローがいる。でも私にはいない。初めての友達!!』


 少女は喋れはしないけど感情はあった。常々フェンリルのジローとタローが仲良くじゃれあっているのを見て、羨ましいと思っていた。


 少女は天使の方に歩みをすすめる。


 魔物たちも少女の後ろから歩みをすすめる。


 天使は身構え、臨戦態勢に入る。


 「言葉を介さぬか! ならば仕方がない! 【聖光魔滅天神矛】」


 天使の後ろに複数の魔方陣が浮かび上がる。


 その光景に魔物たちも少女も歩みを止めて、立ち止まる。

 

 その刹那、魔方陣からは光の巨大な槍が無数に射出された。


 少女の力は成長と共に制御されるようになっていたが、身の危険を感じた時オートで対抗する力が噴出した。

 そのエネルギーは天使がはなった光の魔力にも勝るとも劣らない力だった。


 「この………ア……ク……マ……の子が!!!」


 天使はその少女の力に戦慄し、少女を指さしながら咆哮した。

 

 絶え絶えな咆哮と共に尋常ではない力を持った光魔法がさらに少女を襲う。少女の無意識の闇の力がそれに対抗すべくさらに奔流する。

 尋常ではない二つの力。光と闇。聖と邪。正と負。相反する強大な二つの力が対消滅する。あたりには凄まじいエネルギーの奔流が吹き荒れる。

 ただ後ろにいただけの強大な魔物たちは巻き込まれるようにいろいろな方向に吹き飛ばされる。

 そして、まだ幼い少女はその凄まじいエネルギーの奔流に耐えるための術がなかった。


 そこで少女の命運は尽きるはずだった。 


 しかし、その時、奇跡が起きた。


 二つの相反するエネルギーの対消滅により、次元の扉が開かれたのだ。本来なら召喚されることによってか、強大な力を持つものの能力でしか渡ることができない異界へとつなぐ穴である。


 少女はその異界へと続く穴を潜った。


 いや正確には違う。潜れはしなかった。肉体は。強大なエネルギーの奔流は、気付けば少女の身体を消滅させてしまっていたのだ。それなら何が異界の穴を潜ったのか。


 それは少女の意識。まだ死にたくないという意思。愛情を知らない無垢の魂。


 少女の能力だったのか、運が良かったのか、異界の門を潜ったのは少女の霊体だった。


 『ここは………どこ? さっきのやつは? 何故攻撃してきたの? 出力を誤ったの? 私のことを見て、アーク・マーノコって言って発音してた。もしかして私の名前? タローにもジローにもある私がつけたもの。皆は私のことを王と呼んでたけど、それは名前じゃあないわよね』


 そして異界にて10年。


 こちらの言葉を覚えるとともに、人の暮らしぶりを学ぶ。


 そしてまた10年。


 自分と同じような境遇のものを探す。迷宮。古城。似た境遇のものは、昔いた世界を思い出させるおどろおどろしい雰囲気を出すところによくいた。


 そして10年。


 探し出した自分と似ているアンデットやリッチは私とはどこかが違うことが判明する。

 私は闇の魔力を供給すると実体化することができることが分かった。


 そして追加で10年。


 自分探しの旅に出る。いろいろな文献を漁った。資料を探るのにこの体は好都合だった。古代図書館。帝国図書館。王立図書館。世界樹の図書館。それはもういろいろと文献を漁った。


 そして、自分の魂の残量を知る。自分はこの世に未練があり成仏できていないのだということを知った。


 そして、何年たったのか。


 私はデビルハンターとかいう組織に追われていた………

 

 

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