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アンジュ・ス・バートル  作者: Jyona3
ー第2章ー カースス王国編
42/55

どうしてこうなった

 少し残酷な表現ありです。

 


 …………



 とりあえず、次の菓子を頬張る。



 …………




 もう一つ頬張る。

 手が止まらない。




 ーーーうまいな。これ! どこで買えるんだ?




 …………




「ちょっと! あなた! よく、この状況で無視できますわね?! 話を聞きなさい! びっくりですわ!」




 お姫様は目を見開き、私を始めて見る“生き物”のように、見て驚いてる。



「あ、ごめん。……で、にゃんだっけ?」



 ……ゴホン。


 お姫様は咳払いをし、また“あの目”になる。そして、またまた笑みを深め口を開く。



「フフフ。で……セ・もっちー。貴方は一体、何者なのかしら」



 そう、今のやり取りがなかったかのように。

 そう、先程とまったく同じように。



 ーーーおぉ! すごいな! これが女優! ……いや、お姫様か。やりおる!



 私は謎の関心をしつつ、お菓子を頬張りながら



「何者か? って言われてもにゃー。ただのサエウムにょ娘だよ」



 と、言い終わり、次の菓子に手を出そうとした瞬間、お姫様が残りの菓子の乗った皿を掠め取る。



「いい加減、お菓子は辞めていただけません?! 今、シリアスな所ですのよ! わかってますの? もっとシリアスにして下さいませ!」



 と謎のお叱りを受けた私。



 ーーーいやいや。シリアスって言われてやるものなの? 確かに私も雰囲気作りは大事と言ってるが、他人に強要した事は一度もない! ……はずだ。しかし、本当に最近の子はすぐキレるな。ワカモノコワイ




 大人の私は、とりあえずお姫様の言うシリアスに付き合ってあげることにした。



 下を向き深呼吸し、ゆっくりと顔を上げる。


 この動きは、私なりの“スイッチ”だと思ってもらって結構だ!



「……何物でしゅって? もうお忘れになったにょ? グフフ! 私はにぇ……サエウムの娘。しょう。サエウムの娘ですにょよ! グフフ、ッフフフフ、ッハハハハハハ!」



 椅子の上に立ち上がり、口の横に手を当て高笑いをする。言った後のドヤ顔も忘れない。



 ーーー決まったぜ!



 …………




「何か違う気がしますし、なぜ、口調まで変わられているのか、わかりませんけど。……ま、まあ、いいでしょう」



 どうやらお姫様は“私なりのシリアス”を渋々だが、納得してくれたようだ。



 ゴホン。またお姫様は咳払いをして、あの目になると、




「お惚けになられるのですか? フフフ。もう、わかっておりますのよ。……クレア」




 クレアがお姫様の言葉に頷くと、部屋の奥へと向かう。




「先程、城をコソコソと嗅ぎ回っているネズミを捕まえましたの」




 お姫様がとても楽しそうに、自慢気に言う。




 ーーーえ? 何? ネズミ見してくれるの? 懐かしいなぁ。子供の頃、拾った虫とかよく親に見してたな。……って、子供か! もう姫様、結構いい歳だろ! それやっていいの5歳までだぜ! 大人になれよ!




 私が特技を発動していると。


 クレアが布袋を引きずってきたかと思えば、お姫様の横に投げ捨てる様に乱暴に置く。




「ッ! デカッ!」




 普通のネズミだと思っていた私は、あまりの大きさに声に出して驚いてしまった。

 そう、袋は大の大人が余裕で入りそうな大きさだったのだ。


 そして、活きがいいのか、ウネウネと布袋が激しく動いてる。今にも破いて出てきそうだ。




「これを見ても、惚けた事が言えるかしらね……フフフ」




 お姫様が布袋の口に手を当て、括られている紐をゆっくりと解いていく。



「ちょ、まって!」



 必死に止めようと叫ぶ。


 こんな大きさのネズミを見れば、『ネズミショック』が起こる事が容易に想像できるからだ。



 だが、私の制止の声は届かない。



 まさに今、袋が開くと思った瞬間、両手で目を隠し自らの視界を遮った。



 ふと思ったが、この世界に来てから私の制止の声が誰かに届いた記憶が一度もない。


 悲しい現実である。



 視界を遮っていると、お姫様が大きな声で話しかけてくる。




「何をしてらっしゃるの? しっかりとみて下さい!」


「無理無理無理!」


「もう! いいから、早く見て下さい!」


「無理無理無理無理無理!」


「ものは試しに、ね。見て下さいまし。」


「無理無理無理無理無理無理無理!」



…………



「……さっさと見ろよ! この糞チビ餓鬼が!」


「……えっ?」




 今、言ったの誰だ? と驚きのあまり思わず視界を遮っていた手を下ろす。



 私の目の前に先程までいた、とても可愛らしくて潮らしいお姫様はどこにもいなかった。



 そこにいたのは、額に浮き出るほど青筋を立て腕を組み、相当イライラしているのか片足を地面に何度も叩きつけているお姫様の姿をした、もう、別人だ。



 私は先程までとの変わりように、目を見開き口を開け固まってしまった。




「何、間抜けな顔してんのよ! ってか、見るのは私じゃなくて、こっち」




 お姫様が指差した方を見れば、そこには見たことのある人物が転がっていた。




「……F!」


「ん、んんん、んん!」




 そう、そこにいたのはエフだった。



 太いロープで動けないように体を縛られ、猿轡をしているためか何を言っているのか全くわからない。




「フフフ。やっぱり仲間じゃないの。何が目的か早く言いなさい! さもないと……このネズミちゃんが、どうなっても知らないわよ」




 お姫様が、エフの体をヒールで踏み付ける。



「っんん!」



 相当痛いのか、エフが苦痛の声を上げる。



 ーーーうわ! 痛そう! これが本当の“ヒールキック”か! ……って違う! なんだこれ? 今、どういう状況?




 私の頭の中はプチパニックを起こしていた。




「聞こえなかったの? 早く言いなさいって言ってるのが聞こえないの?!」


「っんん!」




 お姫様が再度、エフを踏み付ける。




「わ、わかった! わかった! 話しゅから!」




 …………




 私は、意を決してお姫様に本当の事を話すことにした。



「Fは、忍者ゴッコ仲間なにょ! 城の探索がしたくて来たにょ! 勝手に城に入ったことは、謝りゅから勘弁してやってよ」



 ペコッと頭を下げる。



 …………



「……ふざけてるの! 私を舐めてるの? そんな嘘で誤魔化せると思ってんのか?! この糞餓鬼が!」


「っんん!」




 エフがまた踏まれた。


 お姫様は、全く信じてくれていないようで顔を真っ赤にして怒りをあらわにしている。



 …………



「いやいや! てか、“キャラ”変わりしゅぎ! お姫様どこいったーーー! 帰ってこーーーい!」




 私は更にパニックを起こし、思った事を大声で窓に向かって叫んでいた。



 すると、



 フフフフフフ。



 お姫様が静かに笑っている。




「フフフ……やっぱり、クレアの言う通り、只者じゃないようね!」



 言ってる意味が全くわからない。




「フッ。私を誰だと思ってりゅ!」




 だが、仁王立ちポーズでドヤ顔し、とりあえず“それっぽく”合わせてみる。


 只者じゃないと言われて、すぐ調子に乗れるのが私だ!




「フフフ。私が姫ではないと、いつわかったの?」


「フッ。初めからだ!」



 ーーーえっ、そーなの?



「フフフ。気づいた人間は、今まで誰もいなかったわ。どうして、わかったの?」


「フッ。それで、隠してるちゅもりか?」



 ーーーいや、わかってませんでした。




「フフフ。プラエクを一撃で倒したというのも、強ち嘘じゃなさそうね」


「フッ。あんにゃ雑魚、蚊の方が、よっぽど私を手こずらせりゅぜ!」



 ーーーうん。それは間違ってない。



「フフフ。私の正体を見ても、そんな強気でいられるかしら」


「フッ。お前にゃぞ。左手一本で十分だ。……ちにゃみに私は右利きだ!」



 ーーーいや。見せなくて結構です。こいつも変身すんのか?




 思ってる事を表に出さずに、自分なりに格好つけてやり取りしていると




「主人よ。なぜ、そんな悪者みたいな喋り方だ? ……まあいいが、あれは魔族だぞ。いや……魔族と人間、半々だな」




 今まで髪に隠れていたフッ君が、いつのまにか肩に移動している。



 ーーーな、なんだと。……私が、悪者みたいだと。



 ずれた所で、私が打ち拉がれていると。




「フフフ。なかなか、賢いペットを持ってるじゃない。私は魔族! そう、この人間の姫の体を乗っ取ってるのよ!」




 お姫様の姿をした女が、ドレスを一気に脱ぎ捨てる。




 そこには、頭に小さな二本の角と背中から小さな黒い羽を生やし、尻から黒くて先っぽが尖った三角の形をした尻尾が伸びている女が立っていた。




「お、お前! ……ッ!」




 私は、驚きのあまり言葉に詰まる。




「フフフ。さすがに、この姿には驚いたようね」



「……にゃんて服、着てりゅんだ!」



「……え? そっち?」




 そう、私が驚いたのは女の服装だ。


 いや、服ではない、真っ黒な細い布で大事な部分だけを隠した、もう、紐だ。ただの紐だ。


 ただの紐を身につけてるだけだ。




 テレビや漫画などでは、見たことがあったが現実で実際に見ると、生々しすぎるというか何というか、これを実際に着て恥ずかしくないのかと思うほどだ。


 というか、見てるこっちが恥ずかしい。

 顔が熱くなる。




「フフフ。餓鬼にはまだ早かったかしら! 私は、リリス・アウダース。サキュバスよ!」




 ーーーぽい! サキュバスっぽい!




「フフフ。貴方は私には、絶対に勝てない」




 リリスが、何故か自信満々の顔で笑っている。


 


「ん? にゃんで?」


「フフフ。わからないかしら? こっちには人質がいるのよ。この体はね。本当に姫の物。まだ生きてるわ。フフフ。私を殺そうとすれば、このお姫様が死ぬって事よ! わかったかしら? さぁ、殺れるものなら、殺ってみなさい!」




 ………………





「…………せい!」




 とりあえず、リリスに一瞬で詰め寄り、腹めがけて正拳突きを繰り出す。


 宣言通り、左腕で。




 リリスの体に、ポッカリと穴が空く。




「グハァ! ……な、なんで」




 リリスは口から血を吐き腹の穴を触り、先程までの自信に満ち溢れた顔と打って変わって信じられないと言った顔でこちらを見ている。



 ーーーうん。やっぱ、弱いな。



 私は、冷静に手に着いた血を振り払う。



 ゆっくりと崩れ落ちるリリス。




 するとリリスが、全身から禍々しく黒いオーラの様なものを激しく放出し、体から黒い塊が剥がれるように出て、人型の形を成す。



 そこに現れたのは、角、羽、尻尾はそのままで、銀髪の腰まで伸びた長い髪に同じ服装……同じ紐をつけた、垂れた目に真っ赤な瞳をした妖艶な美人だった。



 二十歳過ぎくらいだろうか、お姫様と違って大人っぽく、服……紐も似合っており色気が凄い。





「あ、貴方、私の話を聞いていたの? 本当に人間なの? 一国の姫をなんの躊躇もなく殺すなんて!」


「……やはり主人は、悪」


「んんん! んん、んんんんん!」





 リリスは自分で殺れと言ったのに、驚いている様子だ。

 フッ君は何か納得している様子で、

 エフは何か言ってるが全くわからない。




「フッ。私を甘くみりゅなよ」




 とりあえず、格好つけておく。



 何故、攻撃できたかと言えば、お姫様には後で、復活魔法リザレクションをかければいいからだ。


 簡単なことだ。




 固まっていたリリスが突然、我に帰ったかのように首を振ると、




「……フフフ。まあ、いいわ。あの体ももう要らなくなった所だったしね。もうこの城の人間は、私の魅了チャームで洗脳済み。この国もお終いよ。この国の人間達の絶望を魔王様復活の際に捧げるの! あぁ。想像しただけで興奮しちゃうわ!」


「にゃ、にゃんだと!」




 とりあえず、驚いておく。

 私は“シリアス”を忘れてはいない。




「フフフ。驚いたようね。貴方にも絶望に支配されていく、この国を見せてあげたいけど。邪魔になりそうだから、ここで消えてもらうわ! ……クレア! 殺りなさい!」




 クレアが、スカートの下からナイフを二本取り出し、飛びかかってくる。




「お前がやらにゃいんかーーーい!」




 突っ込みを入れつつ、考える。




 ーーーなんか格好いい、倒し方ないかなー。……あっ!




 閃いた、いや思い出した事がある。


 実践しようと思い、飛びかかってくるクレアに背を向ける。



 そう、ジジイ戦で見た背後の攻撃を指で挟むやつだ。



 フッ。



 タイミングを見計らって、指を挟む。



 …………



 だが、そんな練習もした事のない動きができるわけがない。真正面ならまだしも、背後が見えるわけでも、気配を感じる事が出来るわけでもない。



 見事に指で捉える事が出来ずに体に当たる。



 ーーーしくったーーーー!



 痛みが来る。と思い両目をギュッと瞑るが、待てど暮らせど、一向に痛みが来ない。




 おや?と思い後ろを振り返れば、少し離れた所でクレアが仰向けに倒れていた。




「……今、何をしたの?! 魔法? クレアの攻撃を跳ね返すなんて!」




 リリスが驚いた顔で、私に向かって叫んでいる。




 ーーーんー。恐らく、レベル差のせいで、効かなかったんだろうなー。言ってもわかんないだろうな。しかし、……私。やっぱ最強なんじゃないの? このまま国救っちゃう? 伝説の英雄になるんじゃないのこれ?




「うぉおぉおぉおぉ! 希望しかない!」




 突然の叫びに、私以外の全員が驚いた顔でこちらを見ている。




 私はファイティングポーズを取り指をクイッとさせ、




「おりゃ、2人がかりでもいいぞ! かかってこい!」



「調子に乗るんじゃないわよ! この糞餓鬼! クレア、援護しなさい!」




 リリスの足元に魔法陣が現れる。と、同時にクレアが再度、飛びかかってくる。




 ーーー掴み取り失敗したからな……どうしようかな。




 と、格好いい倒し方を考えていると、





 パン! パン!



 突然、手を叩く音が部屋内に響き渡る。




「はいはい。ストーップ」




 部屋に居た全員が、この場に似つかわしくない、可愛らしく無邪気な声がした扉の方を向く。




 …………




 そにいたのは、とても楽しそうな。含みを持たせた笑顔を浮かべているマオだった。



 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。次は、明日か明後日になります。

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