いい拾い亀
短めです。説明が分かりにくかったら申し訳ないです。
「《魔素》とは何か、わかったか? 主人?」
「にゃんとなく、わかった。ありがと!」
肩に乗ったフッ君に、ペコっとお辞儀しながら礼を言う。
今、私とフッ君は地下を出るために来た階段を登っている途中だ。その間、気になっていた《魔素》について聞いていたのだ。
フッ君の話によると、この世界には《魔素》という目には見えないものが空気中に漂っているらしい。
《魔素》を酸素などと一緒に、体内に取り込み身体の中で《魔力》に変換しており。
その体内の《魔力》と周りを漂う《魔素》を使って、何も無いところから、火や水など《魔法》を創り出す事が出来るらしい。
人によって入る《魔素》の《容量》や《質》が違うようだ。
《容量》はそのまま、体内で変換できる《魔力の量》のことで、《質》とは、《魔素》には種類と濃度があり人によって得られる種類と濃度が違うらしい、それらを《質》と呼び分けているようだ。
この《容量》と《質》で《魔法》の威力が変わってくる。やはり多くて濃ゆい物が、威力も比例して大きくなるらしい。
そして、体内の《魔力》が減る(魔法を使う)と空気中から《魔素》を取り込み、また《魔力》へと変換している。
これも人によって一定時間に吸う量が違うらしい。
恐らくだが、ゲームにすれば《魔力=MP》と言うところだろう。レベルや職種によって、《MP》の最大値が違う。《魔法》を使うと減ると言う点も一致している。
《魔素》はよくわからないが、職種によって使える《魔法=種類》が違うし、レベルによって《威力=濃度》が変わってくるのと一緒だろう。
時間が経つと、自然と《MP》が回復していくのが、《魔素》を体内に取り入れ再び《魔力》にしていくという事だろう。
この回復量もレベルなどで変わってくるし、その事を言っているのだろう。
そう考えることにした。
ちなみに、あの牢の中は何故か《魔素》が全く無い状態だったので《魔法》が使えなかったようだ。
そして、《魔素》で出来たフッ君には空気中や体内にある《魔素》の流れや《魔力》が見えるようで、私が強いということがわかったらしい。
フッ君は自分で数えるのも忘れるほど長生きしているだけあって、とても物知りのようだった。
後々、この世界の事をちゃんと調べようとは思っていたが、どうやって調べたらいいかも考えるのも面倒……見当がつかなかったので本当にいい拾い亀をしたと思った。
◆◆◆
《魔素》について考えるのに集中していて、気がつけば階段を登りきって上に出ていた。
私は扉から近い柱の裏に移動し、声を潜めてフッ君に話しかける。
「しゃてと、話は後でゆっくり。ここからは静かに、素早く移動しにゃいと」
「わかった。だが、どうやって城を出るつもりなのだ?」
フッ君が不安そうな声で聞いてくる。
私にはマオのような柱に隠れながら、人影を察知し俊敏に動く事などできない、となれば残された手段は一つだ。
柱の影から左右に誰もいない事を確認し、そっと廊下に出る。
そして両手を地面に着き屈み込み、頭を上げ前を真っ直ぐに見つめ。クラウチングスタートの構えをとる。
そう、私に残された手段とは、とにかく! 全速力で走る! という事だ!
これが一番簡単で楽な上に、捕まる可能性が低いと考えたからだ。
ーーー目指すは……とりあえずFと通った、あの抜け道だな!
私は、深く息を吸い込み腰を上に上げる。
そして今、まさに。走り出そうとした、
その時!
後ろから思い切り首根っ子を掴まれ、走ろうとした反動とあいまって、首が締まる。
「グゥオェ! ……久々の……デジャヴ」
……懐かしいお花畑が見えた。
一気に、力が抜けて手足をダランと垂らしたまま宙吊り状態になる。
そのままボーッとしていると、頭上から聞き覚えのある、感情の無い声が聞こえてきた。
「探しましたよ。さあ、部屋に戻りますよ」
その声でお花畑から戻り、ゆっくりと顔を確認するように首を動かし見上げる。
そこにいたのは、クレアだった。
ーーーグハァ! もう見つかった! これは……またお姫様の部屋に逆転戻りか? この城は、私を一人で動き回らしてはくれないのか?!
私が打ち拉がれていると、クレアは何も言わず無表情で、私の首根っこを掴んだまま移動を始めた。
ハー。私は諦めたように溜息をつく。
◆◆◆
それから、しばらく(宙吊りのまま)移動した場所は予想通り、そう。お姫様の部屋だった。
部屋に入ると、お姫様が椅子から立ち上がり駆け寄ってくる。
「もう、遅いですわ! 何してらしたの? いろいろと話したい事がありますのに!」
と、頬っぺたを膨らませる。本当に可愛らしいが、どうやらお怒りのようだ。
クレアが突然、パッ。と私から手を離す。
私は動揺せず、綺麗に二回転して地面に着地する。
「ごめん。道に迷ってた」
自分の頭を軽く小突き、ペロッと舌を出す。
決して、お姫様の可愛さに対抗しているわけではないと言っておこう!
「まあ! そうでしたの? クレアが付いていたのに? ……まぁ、いいですわ。お聞きしたい事がありますの。こちらに、お座りになって」
お姫様は私の舌ペロッを華麗にスルーして、笑顔で私が先程座っていた椅子を指差す。
私は帰る。と断りたかったが、聞きたい事があると言われたら菓子や紅茶をもらった手前、帰るわけには行かない。
私は意外と食べ物に関して義理堅いのだ。
それに扉の前にはクレアが陣取っていて、通してくれそうにない。
ーーーとりあえず、菓子食べながら話聞いて、とっとと帰ろ。……また、サエウムの話じゃないだろうな? 本当に! 本気で! サエウムの話には、巻き込まれたくないぜ!
などと考えながら、椅子に座る。
すると、クレアがスッと淹れたての紅茶とストローを私に出し、また扉の前に戻っていった。
ーーーいつのまに?! 此奴、なかなかやるな!
私がクレアの俊敏な動きに関心しながら、ストローで紅茶を飲んでいると。
「……それで、もっちーちゃんに、お聞きしたい事があるのだけど」
「うん。にゃに?」
近くに置いてあったお菓子を頬張り、耳を傾ける。
クスッ。
突然、笑い声が聞こえた事に違和感を覚え、お姫様の様子をまじまじと伺っていると、
お姫様の目から、徐々に光が消えていく。
まるで生気の無い、死んだ魚のような目だ。
…………
ーーーまた“あの目”だ! なんだ? この城の奴等はどーなってやがる? 流行ってるのか? 死魚目ブーム? もしや…… ドライアイなのか? ドライアイ一族?
私は目を逸らせず黙って見つめていると、お姫様は更に口角を上げ、口だけ笑みを深める。
その笑顔を見て背筋に一瞬、寒気を感じる。
お姫様が私の目を見つめ笑顔のまま、ゆっくりと口を開く
「フフフ。で……セ・もっちー。貴方は一体、何者なのかしら」
お姫様の突然の発言と、その狂気的な笑顔を見て、私は固まってしまったのだった。
前回、城編終わりと書きましたが、区切りを考え長くなりそうだったので、分けることにしました。ので、後一回になります。次回は、明日です。
皆さま、良いお年を。




