女子の中の女子
短めです。
一方その頃、私も優雅に紅茶を飲んでいた。
◆◆◆
「……って、感じにゃの」
「まぁ! それは大変でしたわね。フフフ」
私は今、先程出会った美少女もとい、この国のお姫様である少女に連れられ少女の部屋へと来ていた。
目の前には、上品に笑いながら紅茶を飲む美少女。
私も負けじと、上品に紅茶をストローですする。
本当に他愛もない話をしながら、出された珍しいお菓子をたくさん頬張る。
「もっちーちゃんは、今、誰か気になる方などは、いらっしゃいますか?」
「うーん。いにゃいかな。まぁ、しいて言うにゃら……魔王くらいかにゃ」
「まぁ! 魔王?? フフフ。もっちーちゃんは本当に面白い方ね」
ーーーなんだろ……幸せだ。これが『ガールズトーク』ってやつか?! 『女子会』か?! ……私は今とても充実している!!!
現実世界で、ほぼ仕事とゲームしかやってこなかった私は、こんな『キャッキャ』しながら、はしゃぐことなど滅多に……いや、ほぼ無かった。
たまにあった女友達同士での飲み会なども、小汚い居酒屋で、ビール片手に焼き鳥を頬張り、会社の上司の愚痴を言い会うか同級生のゴシップなどを言って『ギャハハ』と馬鹿笑いをするかだ。
『女子』と言う言葉からは程遠いものだっただろう。
ーーームフフ! 充実……これが『リア充』ってやつか?!! お菓子も紅茶も美味いし、美少女との女子会付きだ……もう、ここに住もうかな? ビバ! お城生活! ビバ! 『リア充』!
意味のわからない事を考えながら、勝手に顔が緩んでいく。
私が自分の世界に入って妄想を膨らませていると、
「……私は、今……サエウム、あなたのお父様が気になっているのです」
…………
ーーーえー! お姫様! あんなのがいいの? あんな胡散臭そうな男が?! ……サエウムの事、全然知らないけど!
「えー。“あれ”のどこがいいにょ?」
私は全く知らないサエウムの事を『あれ』呼ばわりして、信じられないという気持ちを顔全面に押し出して表現する。
すると、お姫様は慌てた様子で
「えっとね。気になると言うのは、その……」
何か言いづらそうに下を向き、自分の人差し指と人差し指を合わせモジモジとさせている。
ーーーいちいち仕草が可愛いな……これが女子! 女子の中の女子!
私がじーっと観察するように見ていると、
お姫様が小さく頷き、意を決したように口を開く。
「実は……サエウムが最近、変なのです」
…………
「へぇ……そうにゃんだ」
どうやら、私の考えていたような甘い浮いた話しではないようだ。
一気に興味がなくなって、暑くなっていた心が冷めていくのを自分でも感じた。
…………
「そうなんだ、って!! あなたのお父様の話なのですよ!? 気になりませんの?」
お姫様は先程の私の真似なのか、信じられないというのを顔全面に押し出している。
ーーーいや、そんな事言われてもお父様じゃない上に、サエウムに興味が一ミリもわかない。それに、この国は変な奴ばかりだ。
「まぁ……いいですわ。実はですね……
聞いてもいないのに、お姫様は勝手に喋り出す。
サエウムが最近、お父様《この国の王様》と言い合ってるのを何度か見た事、
怪しい人達を城に勝手に招き入れコソコソと動き回っている事、
偵察と言って国外に出ることが増えた事、
街で怪しい集会をしているのを見たものがいるという事
それらを一気に喋った後、お姫様はフー。と息を吐き紅茶を飲む。
ーーーおいおい! ダディ! しっかりしろよ! 怪しいを通り越して完全に“黒”じゃないか! 何かやばい事してるのは間違いないな!
「……そうにゃんだ」
だが! 私には全く関係ない事なのだ!
「ですから! そうなんだ、って!! あなたのお父様の話なのですよ!? 」
お姫様はまたもや、信じられないというのを顔全面に押し出している。
ーーーて、言われてもなー。それに、こんな重要そうな話を今日会ったばかりの子供に、更に、娘と思っている子供に話す内容か?
少し疑問を感じていると、
お姫様はまた、聞いてもないのに喋り出す。
「怪しい集会というのは、どうやら……
面倒くさくなってきたので、そろそろ、おいとましようかなと思い立ち上がり椅子から降りると
「!? 突然、どうされましたか? まだお話は終わっておりませんわ!」
お姫様はまだ喋り足りないようで、私の前を行く手を遮るように両手を広げ立ちはだかる。
やはり、そう簡単には逃してはくれないようだ。
「えっと……あれ! あれだ! ちょっと、お手洗いに!」
咄嗟に出た言い訳は、我ながらナイスアイデア! と自分を褒めてやりたい気分だ。
すると、お姫様は両手で口を隠し大袈裟に驚いた様子で
「まぁ、私としたことが気づかなくて、ごめんなさい。お花を摘みに行かれるのですね。……クレア。お城は広いわ。また迷ってしまわないように、ついて行って差し上げて」
部屋の扉の前に立っていたメイドの様な女性に向かって言う。
「かしこまりました」
と言ってメイドの様な女性、クレアが深々とお辞儀をする。
クレアは、綺麗な黒髪のボブに少しだけ吊り上がった目、茶色がかったような薄い黒い瞳はとても整った顔で、現実世界の日本人の様な見た目だった。
そして全く動くことのない、ニコリともしない顔。
世に言うクールビューティというやつだ。
「いや、大丈夫! 一人で大丈夫! むしろ一人がいい!」
私はこのまま、この部屋を出てお城探索でもしようと考えていたので、着いてこられては探索できなくなり、非常に困るので必死に断る。
「ダメですわ! 先程も迷子になられていたでしょう。クレアよろしくね」
だが私の願いは全く聞き入れてもらえず、『早く戻っていらしてね。さぁ、いってらっしゃいませ』と半ば無理矢理と行った形で、追い出される様にクレアと部屋を出されたのであった。
ーーーあのお姫様、意外と押しが強いな! ……さて、どうやってクレアを撒こうか。
考えながらクレアの様子を伺うように顔を見上げる。彼女の顔は、考えを何も読ませないような無表情だ。
ーーー黒髪、黒目、動かない顔、まるで日本人形みたいだ! ……なんだか懐かしいなぁ
現実世界を思い出し、懐かしんで見ていると目が合う。
「ご案内いたします。着いてきて下さい」
そう言って、クレアが前を歩き出す。
「あ、あい!」
ーーーとっとと撒いて探索だ! 探索ー! どうやって撒こうかなぁ。全力で走れば撒ける気がするけどな……てか、今日は人を撒こうとしてばっかだな。
私は追いかける様に後に続く。
が、すぐに立ち止まる。
ーーーあれ!? そういえば私……元々、何しに城に来たんだっけ?
顎に手を当て、必死に記憶を手繰り寄せていると、
「何をしてるんですか? 置いて行きますよ」
クレアが振り返り言ってきたと思えば、またすぐに歩き出す。
ーーーおい! 道案内たのまれたんだろ?!
せっかちだな! うーん。まぁ……いっか! 探索してるうちに思い出すだろう。
私は考えるのを辞めた。
「まってよー」
そして、だいぶ先に進んでいたクレアの後を追いかけるのだった。
次回は明日か明後日になります。




