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アンジュ・ス・バートル  作者: Jyona3
ー第2章ー カースス王国編
32/55

普通じゃない

 またまた感想と評価いただけました。とても嬉しかったです。皆さん、読んでいただきありがとうございます!



 俺たちが、彼らの突然の行動に戸惑いその場で立ち尽くしていると



「さぁ、紅茶が入りましたよ。遠慮せずに頂いてください」



 琥珀色の瞳をしたまるでどこかの貴族の様な美しい男が、こちらに向かって高そうなティーカップを笑顔で向けてくる。



 ーーーこのティーカップだけで《プラム》何匹分だ?



 そのティーカップにさえ戸惑いを感じていると



「ねぇ、君たちさー、助けてもらった人のお紅茶が……飲めないって言うの?」



 二本の角が生えた猫目の男が若干苛立ちを含んだ声で凄んでくる。


 体がビクッとなる。


 何に切れているのかわからないが、俺たちが苦戦して一匹倒せた《プラム》をいとも簡単に倒した人だ、言い返せずにビビってしまうには充分だった。



「も〜う、フフ。ソージったら〜威嚇しないの〜、坊や達が完全に怖がってるじゃな〜い」



 豊満な美女が微笑みながらソージと呼ばれた男に言うと、こちらに向き直り



「ごめんね〜この子、人見知りなのよ〜気にしないであげて〜」



 フフ。と言って髪をかきあげる。仕草の全てが艶やかだ。



 ーーーさっき坊やではないと訂正したはずなのに……というか、俺の育った村にはこんな胸ので……魅力的な女性はいなかったな。



 俺の心臓が激しく脈打つ。

 またボーッと見惚れていると、


 またシャルルが俺の耳を引っ張る。



「いてぇっ!」


「もう、ミッド! また鼻の下が伸びてる!」



 何故か、またシャルルが怒っている。



「なんで怒ってるんだよ! シャルル!」


「ミッドが、だらしない顔してるからだよ!」



 俺とシャルルが小さな言い合いをしていると




「さぁ、紅茶が冷めてしまいますよ。その鈍感系主人公と幼馴染のヒロインみたいな見てて、痒いイチャつき…………ゴホン。さぁ、紅茶が冷めてしまいますよ。喧嘩は辞めて、冷めないうちに頂いてください」



 貴族の様な美しい男は微笑んではいるが目が全然笑っていなかった。



 ーーーえ、?! 全く言ってた意味はわからないが、咳払いでは誤魔化しきれないほどの声が出てたぞ!



 とは思うものの、その笑顔の重圧にビビってしまい、また言い返せなかった。



 俺とシャルルは戸惑いつつも顔を合わせ頷き。


 見よう見まねで靴を脱ぎ布の上に座ると、恐る恐るティーカップを受け取る。



 先にシャルルが紅茶を少し口にして



「お、美味しい!」



 思わず口から溢れたかのように驚き言う。


 俺も早く飲もうとするが、利き腕がないので左手でぎこちなく飲む。



「う、うまい!」



 俺の口からも思わず出てしまうほど美味しかったのだ。

 あったかい紅茶からは、とてもいい匂いがし、程よい甘さで一口飲んだだけで身体中が暖かくなるようなホッとするような味がした。



「それは良かった。ですが美味しいのは、当たり前ですよ。俺が淹れましたからね」



 貴族の様な美しい男は先程とは違い今度は自然な笑顔だ。



 しばらく、ゆっくりと紅茶を飲みながら体と心を落ち着かせる。



 ーーーてゆうか、助けてもらったのに流されてて俺、お礼もまだだった!



「……あ! あの!」



 俺が意を決して大声を出すと、全員がこちらを見る。



「どうしましたか? おや、なんだか飲みにくそうですね……あ、確かセイラ様用の予備があったはず」



 貴族の様な美しい男が鞄をゴソゴソとして何か探している。



「いえ! 違います! 先程は……『やはり、ありましたよ。どうぞ。これなら飲みやすいはずです』」



 俺の言葉を遮る様にして貴族の様な美しい男が何かを見せてくる。



 俺はそれを見て固まってしまう。



 瓶でできた筒状の物の先端にゴムでできた丸く尖った物がついている……



 そう《哺乳瓶》だ。



「さぁ、紅茶を淹れ直しますね」



 と言う男の顔は満面の笑顔を浮かべている。


 その笑顔には何か含み笑いの様なものが見えるようにも感じられた。



「いえ! 大丈夫です! 本当に! 本当に! 大丈夫です!」



 俺が必死に大丈夫なのを伝えると、……そうですか。と何故かとても残念そうに哺乳瓶を鞄に戻していた。



 俺は心底ホッとした。成人した男が哺乳瓶を使うなんて恥ずかしすぎる。



 ーーーてか、なんで哺乳瓶? ……セイラ様とか言ってたな? どこかの貴族の人達かと思ってたが、小さな子供に使えてる執事とか使用人か? 全く貴族社会の事はわからないからな。



 1人考えふけっていると、



「あ、あの、その右腕は、ど、どうしたんですか?」



 少しおどおどした様子で、ピンク色のおさげの可愛らしい女の子が俺のなくなってしまった右腕の辺りを頬を染め恥ずかしくて笑っているのか、はにかんでいるのか、よくわからない不思議な表情で見ている。



「あ、これは先程のプラムに切られてしまって」


「そ、そうなんですか、あ、あの、その右腕はどちらに?」


「え? 右腕ですか? たぶん、あの辺りに……



 俺が場所を示そうと指を差した瞬間、喋ってる途中にもかかわらず、女の子は急に立ち上がり無言で差した場所へと向かっていった。



 ーーーなんだったんだ?



 俺が驚いていると



「ねぇ、なんでさっさと治さないの?」



 先程ソージと呼ばれていた男、ソージさんがまるで悪気がないような、本当に不思議そうな顔で聞いてくる。



「え? 切れてしまったんですよ? ……少しでも残っていれば可能性はあったかもしれませんが」



 ーーーそう、もう可能性はない。利き腕がなくなってしまった。これでは冒険者も……無理かもしれない。



 俺が自分で言いながら自分の言葉に傷ついていると、



「え? 2人で森に来たのにどっちも回復魔法とか使えないのに? ……あ! わかった! ピクニックだ! ピクニックしてたんだね! でも、この森はピクニック向きじゃないよ」



 フッ。と笑いながら俺の肩に手をポンポンとして隣に座ってくる。



 俺は訳のわからない言葉と行動に驚きを隠せず固まっていると



「あら〜ソージがもう、慣れるなんて、坊や〜なかなかやるわね〜」



 豊満な美女がウィンクを飛ばしてきた。



 するとシャルルが、座ったまま上半身だけ俺の前に出て、両手の平で蚊を潰すようなパチンと何か捕まえる動作をする。


 その顔は何故か、額から汗が出ていて必死だ。



「フフフ、あらまぁ〜」



 豊満な美女がシャルルに微笑みかけると、シャルルも引きっつた微笑みで返している。



 ーーーシャルルさっきから変だな。



 不思議に思いながら2人の違和感のある微笑み合いを見ていると



「そうだ! セイラちゃんに頼んだら治して貰えるんじゃない?」



 横に座っているソージさんが、良いこと閃いたとばかりに人差し指を立ている。



「できるんですか!!? 本当ですか? いいんですか? 」



 俺は突然現れた微かな希望に必死に食らいつくように男に激しく詰め寄る。



「うわぁ……辞めてよ! 近いよ!僕、男には興味ないから!」



 何故か急に距離を取られる。



「す、すみません。つい、興奮してしまいました」



 俺が深々と頭を下げると



「あらぁ〜興奮しちゃったの〜? 男の子ねぇ〜」



 豊満な美女がジトリとした顔で舐め回すような視線で俺を見てくる。



「……うわー。引くわー」



 ソージさんがさらに俺から距離を取る。




 ーーー……もう、我慢できない!!





「すみません! 助けて頂いて本当に感謝しています! ですが、先程からふざけているのですか? 俺を馬鹿にするのもいい加減にしてください! そもそも、こんな場所でお茶なんて普通じゃないです! あなた達は普通でないです!! ハァハァ」



 俺はとうとう先程から、ふざけているのかなんなのかわからないが、馬鹿にされ募らせていた悔しさと、違和感『この人達は何か普通じゃない』という思いを怒りに任せてぶつけてしまった。



 すると、先程まで一言も発さず黙っていた黒ずくめの男が口を開く



「フハハハ! その通りだ……よく気づいたな……我々は普通ではない……そう、我々は……



 男の意味深な言葉に唾を飲む。

 俺がその言葉の続きを待っていると、



「そう……我々は……「もう〜冗談じゃないの〜そんなに怒ったらいい男が台無しよ〜」



 …………




 豊満な美女の言葉で肝心なところが全く聞こえなかった。



「それより〜腕でしょ〜、で、ど〜なの〜エドモンド?」



 豊満な美女は黒ずくめの男の存在がまるでなかったように話を続ける。


 黒ずくめの男を見れば、先程のよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの自信に溢れた顔から一転、真っ赤なタコのような顔でボソボソと何かまだ喋っている。少し泣きそうだ。



 エドモンドと呼ばれた男、貴族のような男が



「そうですね。……セイラ様なら治せるでしょう、以前にも治してるところを見たことがあります」


「ほ、本当ですか?」



 今度は落ち着いて聞き返す。



「えぇ、……ですが、少々、いや、少し……いや、だいぶ気難しい方なので了承が得られるかが問題ですね」



 エドモンドと呼ばれた男、エドモンドさんは優雅に顎を手に乗せ、考えるような難しい顔をしている。



「そうですか。やはり、そんな簡単な事ではないですもんね」



 少しの希望が消えていくのを感じうな垂れるように落ち込む、


 すると、



「まぁ、大丈夫じゃない? なんだかんだで、セイラちゃん意外と優しいし」



 ソージさんが頭の後ろで手を組み寝転がりながら喋っている。なんだかもうこの話題に興味を無くしたのか少し面倒臭そうに見える。



「そうね〜確かに〜なんだかんだで見捨てないでくれてるし〜クロ様も〜お嬢ちゃんは〜変わってるけど〜いい子って言ってたわ〜」



 豊満な美女が髪の毛をクルクルさせながら、爪を見ている。彼女も興味を無くしたのか面倒くさそうに見える。



 ーーーやっぱりこの人達、変わってるな。でも、もしかしたら、この腕が治るかもしれない!



 希望の光がまた差した気がした。



「信じられません! なくなった腕が元に戻るなんて! 今までにもそんな話聞いたことありまん!」



 シャルルが少し疑いの混じった声を上げる。



 すると、エドモンドさんがフッと鼻で笑ったかと思うと



「お嬢さん、確かに見も知らない俺のような奴の言葉を信じられないかもしれないですが、これは事実なのです」



 と言ってシャルルの手を取り満面の笑みを浮かべる。その顔は、本当に男の俺でも見惚れてしまうほどの顔だった。



 シャルルは俺よりも更に近くで見た為か、先程の黒ずくめの男よりも湯気が出そうなくらいに顔を真っ赤にしている



「……は、はい! エドモンド様がおっしゃるならそれは、嘘でも真実ですね!」



 と意味のわからない事を言い出している。

 俺はなんだか、胸がモヤモヤするのを覚えた。



「では、話はまとまりましたね。……さっそく街に戻りたい所ですが、俺達には与えられた指令がありますので少しお待ち頂く事になりますが、よろしいですか?」



 エドモンドさんが優雅な動作を交えながら聞いてくる。



「「は、はい! 大丈夫です!」」



 俺とシャルルは返事をしながら大きく頷いた。



 ついに、ティミッドが言いましたね。次まで、ミッドさんのターンです。

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