表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンジュ・ス・バートル  作者: Jyona3
ー第1章ー
3/55

アンジュ・ス・バートル

 しばらく、説明が多くなるので少し話しのテンポ遅めです。



 私は、ごくごく一般の家庭で育ち高校、大学と進み、中小企業に就職し、職場近くのアパートを借り一人暮らししている、今年32歳になる独身女である。




  特に、波乱万丈な人生を送った事もないし、ブラックな会社で社畜のように働いてるわけでもない。朝起きて会社に行き、ほぼ定時に帰って寝る。そして、また朝起きての繰り返しだ。たまに会社の同僚と飲みに行ったりもするが月に一回程度だ。

 



 そんなつまらない日々の中、私には1つだけ楽しみがあった。



『エレフスリア・オンライン』



 それは5年ほど前に発売され

 日本で空前の大ヒットブームを巻き起こしたVR MMORPGだ。



 そのゲームは、広大なマップに種族や体型など自由なキャラメイキング、そして100を超える職種を選べ、国や街、村も作れたりする。武器なんて、多すぎて未だに誰も数えられていないとネットで言われているほどだ。それに職種に鍛冶屋もあるので新種の武器は増えていく一方だ。



 

 私は、休みの日はもちろんのこと仕事から帰って寝るまでの間やり続けていた。

 たまに、夜から強力なレイドボスを仲間と倒すのに朝までかかり、徹夜明けでそのまま仕事に行くのもざらだった。



 発売から5年がたち、人は全盛期の半分くらいにはなったが私は、未だにはまり続けていた。



 使っていたキャラは私の本名が『望月 星羅』なので『セイラ』

 そのままだ。

 

 身長が70㎝くらいで色白、髪はプラチナブロンドで腰下まで長く、クリクリの赤い目をし、白い翼が背中から生えている天使の女の子だ。



 べつに私が幼女趣味とか、こんな子供がいたらなーなんて三十路女の悲しい願望で作ったわけでわない。


 そう、違う!断じて違うと言っておこう!



 私は、そこで

『アンジュ・ス・バートル』

 というギルドに入っていた。そこは、有翼種族限定のギルドである。


 

 このゲームではギルド拠点も自分達でお金を出し土地を買い自由に作ることができる。天使系の種族多いし内装こだわればいいから外装は教会風とかいいんじゃね?というギルドメンバーの発言で皆、同意し拠点は教会の形になった。

 皆で1週間ほど名前を練りに練って

『リュミエール教会』という名前がついた。



 拠点ができ、マップに『リュミエール教会」という表記を見た時はメンバー全員でしばらくの間、興奮したものだ。



 そのメンバーも今では、三分の一の17人程度に減ったが、大型アップデートの後に集まって新しいクエストに挑んだり、レベル上限解放があればレベル上げしたり、レアドロップアイテム集めをしたり、ただの雑談をしに来たりと今でも十分に楽しんでいた。



 私にはこのゲームだけが生き甲斐と言っていいほど本当に楽しかった。





 そんな日々が続いていた中、ある日大型アップデートで新システム[ギルド拠点大戦]が追加される事となった。これは名前の通りギルド拠点を攻めて奪い合うというものだ。そこでメンバー1人に対し1人、拠点を守る兵士(NPC)を自由に作れる使用になった。



 アップデート後、すぐにギルドメンバーから集会のメッセージが届き集まった。


 やはり皆、アップデート後はテンションもこれでもかってくらい上がっている。


 リュミエール教会は一階は普通の教会のように礼拝堂があり2階に各メンバーの部屋そして、大きな円卓のある会議室がある。そこに皆なにかあれば集まる事になっていた。



「皆、集まったみたいね。今回、招集したのは皆もわかっているとは思うけど[ギルド拠点大戦]の事よ。まあ、それで兵士を作れるようになったけど、どうする? うちのギルドは人数も減ったし職種もバランスよく作らないと大戦に苦労しそうよね。」



 ギルドマスターで創設者でもあるササクレさんが皆に問いかける。

 ササクレさんの種族は、手が羽で出来ている。いわゆるハーピーだ。ショッキングピンクのロングヘアーで水着のような軽鎧を着ているボンキュッボンの大人の魅力満載な女性キャラだ。でも、中身は見た目に反して意外と真面目だ。



「そーですよねー。でも、あえて自由に作っても面白そうですけどね。というか、自由に作りたいですね! 今後の相棒になるわけですし。それに、いろんな編成での戦い方もいろいろできそうで楽しそうです。」



 と、意見を述べるのは、種族は竜人族で立派ないかつい羽が生えていて、男性にしては長めの青い髪と、切れ長の青い目のすらっとした体型で騎士のような鎧を着ている、ザ・イケメンなキャラがサブマスターのアレンさん。イベントなどでいろいろ計画をたてたりと、うちのギルドの参謀的な人た。




「暗黒神話の再来…か…! 共に愚者を狩る眷属を創造するならば、唯一無二の眷属を…!! 闇より(いず)る、我の求めに応える漆黒の配下…ククク、最高だな。しかし、現実と幻想の(あわい)に揺れる虚無が心を蝕む…!!」



 と言ってるのは、スピカさんだ。右目に眼帯をし、少し長めの黒髪で黒い羽、黒の軍隊ぽい服に身体中に包帯をグルグル巻きにしている。彼曰く、漆黒の堕天使だそうで厨二全開の少年キャラだ。

 うん。何言ってるかわからない。見るからに、右目が疼いてそうだ。



「やでなー! やっぱ自分の好みのキャラにはそれに見合った職種にしたいでなー」


 

 このエセ関西弁のお姉さんはクロさん、種族は妖精だ。真っ黒の中にカラフルな水玉模様の蝶々のような羽が生えて白髪ウエーブのかかった髪で泣きぼくろがありモデル体型でチャイナ服を着ているキャラでありかっこいい女という表現がぴったりだが、中身がオッさんなのだ。いわゆるネカマだ。



 だいたいこの4人と私を入れた5人がこのギルドの主要メンバーと言ってもいい。


 このメンバーはギルド結成時の初期メンバーだし、どのイベントにも休まず出席し、長い時間ログインしていて皆レベルも上限まで上げていて装備も独自のを揃えている。欲しい物を得る為には重課金もいとわない人達で、いわゆるガチ勢だ。


 みんな頼りになるし気のいい人達だ。

 



 話は戻り、私も自由に作りたい派だ、この(ギルド拠点大戦)に負けて土地(リュミエール教会)を取られるのは嫌だが、一人しか作れないのに縛りをかけてまで、ガチで勝利優先でやりたいというほどでもない。それに、ゴールド(ゲームで得るお金)は結構溜まっていたので、時間はかかるがまた建て直せばいい。



 決定にだいぶ時間はかかったが、最後は多数決で決める事になり、どうやら私と一緒の意見のメンバーが多く、自由に作る。という方針に決まった。




 私は会議後、だいぶ夜遅くなっていたが明日は仕事が休みという事もあり、さっそくキャラ(NPC)作りを始めた。



 他のメンバーは、「眠い」や「明日も仕事だー」という事で落ちたが、主要メンバーは残っていて、夢中でキャラ作成を始めていた。

  残っているのは、私を含めいつもの5人だった。やはりなと、みんな思っただろう。



 私もさっそくキャラ作成に取り掛かる。

 実は、アプデの情報を事前に見てから、ずっと考えていたのだ。




 自分の職種はクレリックと言う回復専門職とモンクという素手でぶん殴りながら回復もできる職のレベルをカンストしてなれる、上級職のビショップだ。

 なので相棒の職種は、火力系か盾系で自分と被らないキャラを作ろうと決めていた。

 それでうちのギルドは、アサシンやウォーロックなどの上級職で火力系が多いので、あまり被らない盾系つまりナイトにした。




 そして見た目だが……めちゃくちゃ迷った。

 最初は自分に良く似た小さな男の子にしようと思ったが、ただでさえ今のキャラで「ロリっ子」だの「幼女趣味」だの言われているので容易に次は、「ショタ」系のあだ名をつけられるだろう事はわかる!間違いない!



 しかし、考えても考えてもコレだ!と思うのには辿り着けず、

 とりあえず、自分の理想とする男性像を作る事にした。これからの相棒になるわけだしやはり見た目はいいに越した事はない。それにOKボタンを押さなければ何度でも作り直せる。



 これから作るキャラの良いインスピレーションが湧くのを期待して作るだけであって

 決して、独身三十路女のこんな彼氏欲しいなーなんて願望からではないと言っておこう。そう、断じて違うと!



 何度も何度も試行錯誤を繰り返しやっとできたのは、種族は同じ天人族の天使で白い大きな羽が背中かから生え、少し癖毛のふわっとした茶色の髪、少し垂れた琥珀色の目、スッと通った鼻筋、優しそうな雰囲気、どこぞの王子様って感じにできた。ちなみに名前はエドモンド。



  完成して眺めていると、なんかいかにもという感じに見えてきてだんだん恥ずかしくなってきた。



  ーーーフッ。私だいぶ痛いな。



 

 そう思い、やり直しボタンを押そうとした、



 その時……



 後頭部に突然、後ろから鈍器のようなもので殴られたような、鈍く激しい痛みを覚えた。



 ーーー何、これ? 痛い! やっべ痛すぎて死ぬかも……



 だんだんと視界が黒くなって意識が薄れていくなか、動くはずのないエドモンドの口が微かに笑みを浮かべているように見えた。



 ーーーえ? 腹黒そーな顔して笑ってんな、おい。見た目優しい系、腹黒王子キャラって、どんだけテンプレ要素満載なんだよ……


 

 私は、そこで意識を手放した。



次は、明日の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ