鬼ごっこ
《王都クラービリス》を出てすぐの草原、ここは《始まりの草原》と言われる場所で辺り一面に緑の草原が広がっており、出てくるモンスターもレベル1〜5と低レベルしかいない。
街から1キロほど離れた地点からモンスターの姿がチラホラ見えるようになった。
私はそこで立ち止まり、ずっと掴んでいたソージとシロの首元をパッと離し、
「よち! とりあえず全員レベル7ににゃるまで、ソロでその辺のモンスター倒ちて来て!
はい、ゴーゴー!」
全員に指示を出す。
「わかりました」「了解した」「は、はい」
エドモンドとレオ、ソフィアが返事をして散らばっていく。
ソージとシロの返事がないと思い2人を見てみると、私の小さい体で引きずってしまった為か、全身傷だらけでボロボロになって気絶しているようだった。
ーーーどおりで、途中から静かだったわけだ! てか、どんだけ打たれ弱いんだよ!
「ヒール」
仕方ないので2人に回復魔法をかける。
傷はミルミルうちに治っていき2人がゆっくり目を覚ます。
「う……うぅ、ここは? 」
「ん……ん〜どこ〜?」
2人はキョロキョロと辺りを見回している。
私は、こちらを見ろと両手を合わせパンパンと音を鳴らす。
「ここは、草原! はい! その辺のモンスターソロで倒ちて、レベル7までアップちてきてー! はい! スタート!」
「ハー。わかったよ」
と飲み込みが早く、ソージが渋々といったように前に行った3人と被らない場所に移動していく。
「え〜一人なんて無理よ〜! 私、魔法〜三発しか打てないのよ〜すぐ死んじゃうわ〜」
とシロが泣きついてくる。
私はシロの持っている杖を指差して
「魔法切れたら、それで……殴れ。死んだら……蘇生ちてやる」
「ひぃー! 鬼〜スパルタ〜! 人でなし〜」
ーーーこ、こいつ! ほんとに学ばないな!
「別にやらなくてもいいけど、レベル7になってない人は、今日は宿屋に泊まれないから、じゃ!」
と言ってシロに背を向け皆んなの様子を見に行く。
「そ、そんな〜」
とシロが後ろで嘆いているのが聞こえるが私は心を鬼にして無視した。
確かに後衛職のソロでのレベル上げは難しいとも言えるが、この辺りに出るモンスターなら大丈夫だろう。
ーーー獅子は我が子を千尋の谷底に突き落とすとか、そんな感じの言葉があった気がする! 私がやってるのはそれだ!
と自分に言い聞かせる。
まず向かったのはエドモンドの所だ、離れた場所から覗く、視力の高くなった今は遠くの景色もはっきり見えるのだ。
どうやら《バルブ》と言う植物系モンスターと戦っているようだ。
バルブは植物の白い球根に緑の手足が生えたような姿で、つぶらな瞳がかわいいモンスターだ。攻撃は体当たりのみだ。
エドモンドが剣を顔の前に構えそっとキスをして、腰元に構え直す。
「ソードスラッシュ!!」
と叫びながら剣を横に振ると、剣から斬撃が飛ぶ。寸前のところで、バルブが横に大きく避けるが間に合わず腕を落とす。
すると怒ったのか、バルブが走りながらエドモンドに体当たりする、それをエドモンドが盾で受け流す。
ーーーん〜、まあナイト職は防御力は高いし、攻撃力もまあまあだ、序盤のレベル上げで苦戦も特にないだろう。だが、あの無駄な動作が無ければ一発で倒せただろうに……本当にあの動きさえなければ……
私は、次にソフィアを探す。
すると、三匹のバルブに囲まれていた。ソフィアの頬は赤くなっていて呼吸も乱れているようだ……
ーーーもう疲れてるのか?
と思っていると、バルブ達が一斉に飛びかかる、するとソフィアが背中に背負っていたハサミを両手で広げ回転しながら三匹まとめて身動きが取れないように挟む。するとソフィアの顔は満面の笑みを浮かべる、
「さようなら……ギロチンカット!」
バルブ達の首が一斉に飛ぶ。
「ハァハァ、エクスタシーだわー」
飛ぶ首を眺めてハサミに頬ずりながら呟いている。
ーーー戦い方は荒っぽいが、特に文句はない……が! ソフィア……君だけは普通の子だと思ってたのに! エクスタシーって! 何でそこだけ英語なの?! かぶれちゃったの? 戦う時だけ普通に詰まらず喋れるの?! どんだけ後からキャラ付けてくるの?
ツッコミ所が多すぎて少し疲れたが、きっと彼女がレベル上げを一番に終わらせると確信した。
次はレオだ、
レオは、どうやら離れた場所から、バルブを狙い打ちしているようだ。
少し小さな岩に登り、右手で銃を構え
「俺の銃で、跡形もなく消し飛べ! ヘルシューティング! 」
どうやら、誰も聞いてないと恥ずかしがらずに喋れるらしい……
ちなみに……ヘルシューティングという名のスキルはないはずだ、つまりただの銃での攻撃だ。
同レベルもしくわ少し上のバルブは一撃では倒れず、撃たれながらも走って近づいてくる。
「お前の地獄はもう始まっている。」
とカッコつけて撃っていたが、バルブが止まらず近づいてくるのにビビったのか
「わ! え! なんでー!」
めちゃくちゃに撃ちまくり半泣きだ。
ーーー……まあ、大丈夫だろう! 頑張れ!
あの距離なら、全部外した。などと、
ならない限りは大丈夫だろう。
と思い次は、問題児のソージを見る。
ソージは、《ポヨリン》という名前の通りポヨポヨしたグミのような様相で、顔はなく全身水色で身体の中心に赤い核の様なものがある四角いモンスターと対峙しているようだ。
ソージは相変わらずやる気がないのか、ハー。っと息を吐き両手に刀をだらんと持ったまま立っている。
ポヨリンが勢いよく飛びかかる。
ぶつかると思ったその刹那、ソージがサッと消えたかと思えば、ポヨリンが元いた場所まで移動しており最初に見たやる気のない立ち姿で立っていた。
刀を鞘に戻す。するとソージの背後でポヨリンが真っ二つに斬り裂かれる。
ーーーおぉーー! かっこいー! お前は素手に……みたいなー!! やっぱ序盤のレベル上げはシーフが一番いいな! 攻撃力と素早さ高いし! これでやる気があればねー。まあ、最近の若い子は、なんでもクールがカッコいいと思っちゃうからね!
何目線?と自分にツッコミそうになったのをこらえ、ソージも問題ないだろうと思い一番の問題児を探す。
すると一番の問題児は、ポヨリンと鬼ごっこをしていた。
「も〜詠唱させてよ〜お願い〜3秒待って〜」
と走りながらポヨリンにお願いしているようだが、当然のごとくポヨリンは少しも止まる気配はない。
しばらく観察することにした。
…………
鬼ごっこは唐突に終わりを告げる……
シロが何かに躓き転ぶ。
ーーーダメだな、こりゃ……
と思ったが、
シロは倒れたまま、両手だけで身体を引きづりながら後ろ向きに逃げ続ける。
「き、器用だな……」
思わず口から出た。
見ていられなくなり、私はシロの横に並び走り声をかける、
「楽ちそうだね」
「お嬢ちゃ〜ん! 助けて〜! このモンスター待ってくれないの〜」
「待つわけにゃいだろ! 何で逃げてりゅの?」
「だって〜待ってくれなきゃ〜魔法使えないの〜」
「いや、魔法いらんでしょ。それで、殴りなよ」
「えー! そんな原始的な戦い方嫌よ〜! 私は〜魔女なのよ〜」
「あっそ! じゃあ鬼ごっこ楽ちんでね」
と私が去ろうとすると、
「も〜う! わかった! わかったわよ〜」
と言って意を決したのか、立ち上がり杖を構える。
「えぇい!」
と杖でポヨリンに殴り掛かる。が、その勢いのままポヨーンと跳ね返る、
「えっ?!」
とシロが驚いた声をあげる。とポヨリンが突撃する、真正面からぶつかりシロが吹き飛ぶ。
ーーーはー。 本気でシロは使えないかもしれない。
と思っていると、ポヨリンに飛ばされた事で距離ができたのに気づいたようで魔法を詠唱
する。
「ファイヤーボール!」
するとポヨリンは消し炭も残らず燃え尽きた。
「きゃ〜やったわ〜一撃よ〜」
シロが飛び跳ねながら喜んでいる。
「やればできりゅじゃん! その調子で!」
とシロを褒め、一緒に喜ぶ。
「でも〜あと一撃くらったら〜死ぬわ〜」
「…………」
私は、無言で背を向ける
「待って〜ヒールお願い〜! 一回でい〜から〜! お願い〜!」
とシロが私の腕を掴み離さない。
ハー、
と溜息をつき
「……ヒール」
シロの身体の傷が消えていく。
「ありがと〜助かったわ〜なんだかんだで〜優しいわよね〜一回助けたついでに〜この後も〜私の……
と喋っていたが、これ以上甘やかしてはいけないと思い瞬時に移動する。
ーーーまあ、ウィザードは体力ないし防御力も紙だけど、この辺のモンスターだったら大丈夫だろう。ただ……あまりにも……戦闘のセンスがない……まあ、死んだら蘇生すればいいか……
と思い、しばらく全員の観察を続ける。
しかし……暇だ。
やはり見ているだけだと飽きてしまう。
眠気が襲ってきたので、逆らわず草原に大の字に寝転がる。
心地よい風が吹いている。日差しが適度にあったかい。
私は夢の世界へと旅立っていったのだった。
今回はみんなの戦い方お披露目です。次回は、明日です。




