お花畑
「おまたちぇ〜。」
準備を終えリュミエール教会の入り口に行くと、すでに全員が集まっていた。
どうやら私が一番最後のようだ。
「みんな、集まってるみたいだね! はい! それじゃあ、しゅっぱーーーちゅ!」
私は、クラウチングスタートの構えをとり、今! まさに! 走り出そうとしたその時
後ろから思い切り首根っ子を掴まれ、走ろうとした反動とあいまって、首が締まる。
グゥオェ!
一瞬、お花畑が見えた。
「殺しゅ気か!私の伝説が、始まりゅ前に終わりゅとこだったじゃにゃい!」
「ハー。落ち着いて下さい。かなりの距離ですよ。どうやってカースス王国に行くつもりだったんですか?」
エドモンドが、本当にあきれた様子で言う。
「ん? どうやってって、そりゃ走って。……てゆうか! 早く、降ろちて!」
今の状況は、首根っ子を掴まれたままで宙ぶらりんの状態だ。手足をばたつかせる。
「ハー。嫌です。降ろしたらまたすぐに、バカみたいに走って行こうとするでしょう。」
「なっ! バカって! だってほかに方法ないち! 私、ゲート使えにゃいし!」
ゲートとは、一度行ったことのある場所に一瞬で移動できる魔法だ。ゲーム時、ゲートを使えるソーサラーのスピカさんがいたので、どこかの国やダンジョンへの長距離の移動は、ほぼスピカさん任せだった。
他にも馬や魔獣に乗るなどの移動手段はあったがもっていないし、一瞬で行けると言う便利差には勝てない。恐らく、他のプレイヤーもほぼゲートを使っていただろう。
それに、この世界に来てレベル120の体になったといえばいいのかわからないが、かなり身体能力が高くなっている。
なので私は、きっと走っても着けるだろうと思ったのだ。
「ハー。シロさん、魔法職のようですが、ゲートは使えますか?」
「ごめんなさ〜い。使えないわ〜。」
シロが髪を後ろにかき上げながら言う。
ーーーいちいちセクシーだ。オカマだけど……そういえば! みんなの職種をきちんと聞いてなかった……これからパーティを組むんだからちゃんと確認しなくちゃ。
私がみんなの職種を確認しようと口を開きかけたその時、
「我等を他の地へと運ぶ……魔の力を秘めた石を……持ってはいないのか?」
レオが、何かボソボソと言っている。
ん!?
全員の視線がレオに集まる。
すると、レオの顔がみるみるうちに茹で蛸の様に赤くなる。
「我等を……他の地へと……ウゥゥ……魔石」
すでに泣きそうだ。
ーーーどんだけシャイなんだよ! 恥ずかしいならその喋り方辞めろよ!
……なんか私、脳内ツッコミすること増えたな……
なんて、考えていると。
「ハハハ。きっとレオが言いたいのは転送石のことじゃないかな?」
ソージが、宥めるようにレオの肩をポンポンと叩きなら通訳する。
それを聞いたレオは、慌てて首を何度も縦にふる。どうやら当たっているようだ。
「……転送石……転送石……!! あー。それならたぶん持ってるよ!」
確か以前に、オシャレガチャで課金した時のおまけでいくつか手に入れていたはずだ、ゲートに頼っていたため、使わない物だったので存在すら忘れていた。
転送石は、ゲートと同じ効果を持っている石だ。
ーーー確かその時のガチャは和服ガチャで、目当ての巫女服が出るまで何万か、ぶち込んだんだったなー。懐かしい。
一人思い出に耽っていると、
「ハー。そんな便利なもの持ってるの普通、忘れます?」
「うるちゃいなー! 使う事にゃいんだから、仕方にゃいでしょ! ってか、さっさと降ろちてよ! 取り出せないじゃにゃい!」
……ハー。
エドモンドが、ゆっくり私を地面に降ろす。
ーーーこいつどんだけ溜息つくんだよ ! 喋る前に、毎回溜息ついてんじゃねーよ! キャラ作りか? キャラ作りしてんのか?
私が癖になりつつある、脳内ツッコミをしていると、
「お腹空きすぎて、倒れちゃいそうだよ。セイラちゃん、さぁ、お願い。」
「私も〜お酒でも飲みたいわ〜」
「わ、私も、早く街に行ってみたいです。」
「俺の魂が……こ「ハー。さっさと頼みますよ。セイラ様。」
ーーーこいつら、自由かよ!!
私は仕方ないなぁ。と呟き、肩から掛けてあるアイテムBOXに手を入れる。
手を入れると、自分がどうすれば欲しいアイテムが取れるのかがなんとなくわかる。不思議な感覚を覚えた。
転送石を取り出す。
「ジャジャーン! こ・れ・だー!」
転送石はキラキラと輝き、アメジストの様に深く美しい紫色をした結晶石だ。
「まぁ〜キレイね〜」
シロが食い入るように転送石を見つめている。
「……あげにゃいよ。」
「残念。ケチね〜」
残念と言いながらもシロはとても笑顔で、あまり残念そうではなかった。
凄く嫌な予感がする……アイテムBOXは厳重に管理しなきゃいけないと心に刻んだ。
フー。私は一度深呼吸をして気を取り直し、
「じゃあ、行くよー! いざ! カースス王国! 王都クラービリス!」
転送石を天に掲げる。
すると石が眩い光を放つ、辺りが白い光に包まれる。
あまりの眩しさに目を瞑る。痛みは無いが身体が捻れる様な奇妙な感覚に襲われる。
光が収まってから、ゆっくり目を開ける……
先程まで見えていた、リュミエール教会も森も見えない。
変わりに辺り一面に広がる草原と砂利で出来た道があり、その道の300メートルほど先に城壁と門が見える。
《王都クラービリス》は城壁で囲まれた都市、いわゆる城塞都市だ。
どうやら転送は無事に成功したようだ。
ーーー凄い! 凄い!ゲームの時とは違う転送のリアルな感覚!
えもいわれぬ感情が押し寄せてきて、私は叫ばずにはいられなかった。
「うぉぉおぉぉーーー!」
私が、街に向かって走ろうとしたその時
グゥオェ!
また花畑が見えた……
「デジャヴ……」
「ハー。いい加減、少しは落ち着く事を覚えてください。」
「……あい。」
このままでは、確実に花畑の向こう側へ行ってしまいそうだったので、大人しく従うことにした。
私は猫のように首根っこを掴まれ、宙吊りのまま《王都クラービリス》へ行くのだった。
。主人公の言葉を全て幼児口調にすると読みにくいと思い中途半端な感じになってます。逆に読みづらかったらすみません、
次回は明日です。




