女将の孫
あれは、夏休みの時の話です。
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敬語はあんまり好きじゃないからタメ口で話していいですか?
僕は旅行が好きで、色々な旅館やホテルに泊まるんだけど…
たまには、民宿もいいかなぁって思って泊まったんだよ。
かなりの田舎だったけど、自然が多くて空気も綺麗ですごい楽しかったなぁ
民宿も、外見はどこにでもある普通の小さい旅館みたいな感じで、結構綺麗だったし…
そこの民宿は女将のお婆さんと夫婦が経営していて、3人ともすごく優しくて。
それに なんと言っても、ご飯が美味しかった。
山菜の天ぷらやタケノコご飯は、絶品だった。
今も覚えてるよ、あの味…
ご飯を食べてる時は、お婆さんと話をするんだけど…
まぁ、お婆さんの話し相手みたいな感じかな。
でも、僕静かに食べるの苦手だから 逆に良かったんだけどね。
お婆さんの話は大抵、孫の話でさ。
「孫が、絵の賞状をとったのよー」とか
「今年で小学2年生になるのよー」とか
他愛もない話だよ。でも、それだけ孫が可愛かったんだろうね。
孫は女の子で、いつもニコニコしてて可愛いって笑顔で話してたよ。
「その料理に入ってる山菜も、私の孫が採ってきてくれたのよ」
って嬉しそうに話してて…
「へぇ、僕もお孫さんに会いたいです。どこにいるんですか?」
そしたら、お婆さん何て言ったと思う?
「あら、嫌だ。私の孫ならいるじゃないですか。私の隣に」
もう、すごく怖かったよ。
だって、お婆さんの隣には誰もいないんだよ?
「あ、えと、そうでしたね……」
とか、話合わせるのに必死で。
後で、夫婦に聞いたんだけど……
そのお孫さん、3年前に亡くなったんだって…
轢き逃げらしい。
本当に可哀想だよね…
***
あれから、あの民宿には行ってない。
ていうか、怖くてもう行けないよ。
それに轢き逃げって聞いた瞬間どきりとしちゃってさ。
だって、俺も轢き逃げしたことあるもん。
すごい ど田舎で街灯も無くて真っ暗…
間違えて小さい女の子、轢いちゃったんだよね……
あれ、今思うとあそこって……
あんまり、怖くないなぁ