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幽霊譚  作者: 月影 ゆかり
1/3

友達の弟

あれは友達の家に遊びに行った時の話です。


***


その友達は転校してきたばかりで、さほど仲良くはなかったのですが…


僕がずっと前から欲しかったゲーム機を持っていたので、

友達の家に遊びに行くことになったんです。


仮に友達の名前をA君とします。


放課後、家にも帰らずランドセルを背にA君の家へと向かいました。


A君の家はマンションで6階までありました。


僕は一軒家だったので、すごく高く感じました。


でも、今思うとそれほど高くはないんですね。


今じゃ50階とか平気であるんですから…


おっと、話が逸れましたね。


さっきの続きですが…


A君は3階に住んでいました。


エレベーターは無いので、階段でA君の家に行ったんですが…


まだ、午後2時すぎにも関わらず すごく静かでした。


マンションってこんなに静かなものなのかなぁなんて不思議に思いました。


だって、僕の家の周りはいつもちびっ子たちが遊んでいて、

午後2時なんてすごくうるさかったんですよ。


…A君の家に着く頃には、少し汗をかいていてシャツが気持ち悪かったのを覚えています。


まぁ、6月の下旬で結構暑かったのもありますが 階段を上ると一層暑かったんですよ。


A君の家に入ると、ヒンヤリとしていて涼しかったのですが…

今思うとクーラーもついてないのに、おかしいですよね…


でも、あの時はまだ気づかなくて…


A君が、冷蔵庫のお茶を出してくれてグイッと飲み干しました。


喉がカラカラに乾いていたので、すごく美味しかったです。


……すぐに帰ってればよかった…


あ、いえ…思い出しただけで怖くて…


話に戻りますね。


お茶を飲んだ後、赤ちゃんの泣き声がしたんです。


すごくビックリしました。怖くて怖くて


でも、A君が「弟が泣き出したから、待ってて」って言って部屋から出て行ったんです。


「あー!なんだ!弟がいたのか!」ってすぐ恐怖は吹き飛びましたよ。


少しすると、泣き声は消えて A君が赤ちゃんを抱っこして部屋に入って来たんです。


僕に弟はいなかったから、興味津々で赤ちゃんの顔を覗いて、本当にビックリしました。


だって、赤ちゃんの顔 A君とまるっきり同じ顔だったんですよ?


似てるとかじゃなくて、おんなじ。


もう、すごく怖くて…


それで気づいたんです。


なんで、クーラーがついてないのにこの家は涼しいんだろうって。


なんで、赤ちゃんがいるのにお母さんはいないんだろうって。


なんで、このマンションは静かなんだろうって。


僕は、「帰る」って言って一目散に走って帰りました。


あれから、A君とは一言も話してません。


いや、会っていません。


だって跡形もなく消えてたんですから。


友達やクラスの人、先生にもA君はどうしたのかって聞きましたよ。


でも、みんな口を揃えて言うんです。


「そんな人知らない」って。


でも、あれは確かに夢じゃなかった。


あれは現実だったと、そう思ってました。


あの、マンションに行って確かめようかとも思ったんですけど……


怖くて、それは無理でした。


でも、大人になってから行ったんですけど


あのマンション…


なかったんですよ。


最初からなかったみたいに…どこにも……


***


今では、あの日のこと全部夢だと思っています。


だって、夢じゃないならあれは一体何なんですか?

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