異能力軍、戦前演説~1番隊の場合~
説明っぽすぎたっ!
しかしこれ以上は……むぐぐ
太陽の光で、街が燃えてている。
赤く染まった街は静寂に包まれていた。
日本特殊異能力部異能課、異能力軍は人気の無い街の一画に集まっていた。
彼らはこれより、暴走した異能力保持者集団の鎮圧に向かうのだ。
異能力保持者が台頭してきた現代。
異能力は、武器を持たずとも人を殺せると言われ、何も知らない一般人から距離を置かれていた。
更に、心無い人達からは迫害の対象となり、現代の異能力保持者は肩身の狭い生活を強いられている。
そして当然の事ながら、異能力保持者達は自らを守るため集団となり保護を求めるようになった。
異能力保持者の存在を世間に正しく認識させるには、大きなアクションが必要だと判断された。
政府は、異能力は個人の特徴の1つとして認め、それを生かす場所を作ると明言。
それが、現代にある異能力軍の基礎となる組織だ。
始まりは小さく、ボランティア活動や異能力を使った慈善活動だったが、とある災害をきっかけに変化が訪れたのだ。
簡単に言うなら、災害が起こり、復興支援に最も貢献したのが異能力保持者達だ。
これを機に異能力は危険なだけではなく、人の役も立つのだと認識され受け入れられた。
日本と言う国は、そこからが速かった。
世代は既に変わってわっている。
国の運営はかつて、ゆとり世代や悟り世代と呼ばれた者達に、次の世代達が指揮を取り、様々な改革が進められた。
ざっくりと言えば、恐ろしい程柔軟な国に変化していたらしい。
有用である。と分かれば目を見張る早さで物事は進み、復興支援に協力していた異能力保持者達を全員に給与を払い、公務員として雇用。
暫定的に、同時に支援していた自衛隊の指揮下となり、その後分裂。
これが異能力軍の成り立ちである。
迫害されていた人達が、世の為人の為に働いている。
なんと美しい事だろう。
しかし、現実は甘くない。
本気で人の為に働ける者は、一握りしかない。
多くの異能力保持者は、就職可能な場所が限られいるため、仕方なく異能力軍に所属する。
全く異能力を使わない仕事に就く者も一定数居る。
そんな現代、厄介なのが異能力を使った犯罪だ。
現存の武装では歯が立たない事もあるため、異能力犯罪は異能力軍の管轄で処理されると決定した。
ただし、あくまでも異能力軍は犯罪の鎮圧の為の武力であり、犯人を逮捕する権限は持ち合わせていない。
そして今、異能力軍は結成後初めてとなる、軍の総力を用いた鎮圧に当たるのだ。
緊張感溢れる中、整列した隊員達の前に1人の男性が立った。
「本日我々は、武力による犯罪の鎮圧を行う。
日本では初めての、異能力保持者同士の大規模な抗争になる。
当然だが、我々にとっても初めての戦いだ。
訓練とは違い、予想だにしない事も起こる。
だが、我々は臆してはならない。
倒れてはならない!
我々が倒れれば、避難している人々が危険に晒されてしまう。
そうなれば事態の収拾は不可能だ。
一帯は大量の死傷者で溢れかえる戦場となだろう。
その事を忘れないでほしい。」
力強い輝きを放つ瞳で、隊員達の顔を見渡す男性。
隊員達は、息を飲むほどの存在感に、ただただ圧倒されている。
そんなカリスマを持つ男性が、フッと柔らかい表情に変った。
「しかしまぁ、あまり気負う必要はない。
何故なら、ここに私が居るのだから!
異能力軍1番隊隊長、宮村 大和とは私だ。
分かっているだろうが、私が隊長職に就いているのは伊達や酔狂ではない。
様々な意味でここに居る誰よりも、強いからだ。
いかに初作戦と言えど、私が居るからには失敗等あり得ない。
なんなら君達はここで待機していても良いくらいだ。
だが!
諸君等にも誇りがあるだろう。
私1人に負けていて良いものか!
それにだ、諸君等は私の部下だ。
私は知っているぞ、諸君等の努力を葛藤を決意を、日々訓練し己を磨いてきた諸君等の事を。
故に諸君等の事を心から信じて断言しよう。
諸君等が優秀でない筈がない!
私が居らずとも、完璧に作戦を遂行する事が出来る。
現に今作戦の初期立案では、私の参加は無く、副隊長が指揮を取る手筈であったのだから。
何故私が参加する事になったのか、それは単純だ。
諸君等は、異能力を使った本気の抗争を知らないだろう。
だから私が指揮を取る。
ただのお節介、とでも思ってくれれば構わない。
私はこれでも、外国の戦争で指揮を取っていたんだ。まぁ、ゲリラ戦に近かったから参考程度だろうけれど。
……と言うかだ、いい加減書類を見るのがイヤなんだ。
皆の知っての通り私は、異能力保持者が差別を受けずに安心して暮らせる社会を作りたいと思い、保持者を集めて復興支援の音頭を取った。
不満もあったが、異能力軍の1番隊隊長になり諸君等の上司になった。
なったからには上司として、優秀な部下達に負けぬ様、己を鍛えた。
だかしかし!
しかしだ…いや、分かってはいたのだが……
管理職って、意外と事務処理が多いんだ。
これも皆が知っているだろう!
私は! 事務仕事が嫌いだ!
さあ諸君!
四ツ橋補佐が小言を言いに来る前に、作戦を実行しようではないか!
そして全てを終わらせた後に『宮村隊長を責めないでくれ』と、あの不良補佐に言ってやってくれ。
私は諸君等の為に、諸君等は私の為にだ。
私は君達を、心から信頼している」
徐々に崩れていった内容。
最後のはただの願望である。
身内しか居ない為か、せっかく被っていた猫がずれてしまった様だ。
1番隊隊長の宮村 大和は、普段からこの調子である。
彼の言動はいつもの事で、隊員達は気にしていない。
それよりも彼が作戦に参加する、しかも指揮を取る、その事に色めき立つ。
仕方ないだろう。
宮村 大和と言えば、世界レベルの『英雄』である。
日本で異能力による戦争が始めてなだけで、現在も世界の何処かでそれは起こっている。
異能力保持者が現れ始めた際初期。
大規模な戦争が起こり、億単位の人間が犠牲になった。
当時、戦争難民の支援に向かっていた大和は、とある事情で戦地に紛れ込み、自身の異能力を発現させた。
その異能力を使い、周辺の戦争を強制終了させたのだ。
故に『英雄』だ。同時に悪魔であり兵器でもある。
因みにだが、異能力を発現させるのは殆どが幼い子供である。大和は異能力を23才で発現させ、異能力保持者の最高齢者である。探せば他に居るのかも知れないが、現在確認されている中では、彼ともう1人が同年齢で最高齢の記録を持っている。
つまり異能力軍では最高齢。
更に実力と能力はトップクラス、人柄も良く面倒見も良い。
彼は頼れる兄貴的存在になっており、最早滅多な事では信用と信頼は揺らがないだろう。
挨拶を終えた1番隊隊長こと宮村 大和は、軽く手を振ると後ろへ下がって行った。
隊員達の間には緊張や不安、安堵や恐怖等をごちゃごちゃに混ぜ合わせた様な、何とも言えない雰囲気が漂っていたが、今は違う。
宮村が挨拶することで、適度な緊張感で上書きした。
そして彼の人柄か、最後には程よく揉みほぐしている。
尚、宮村は、自身の影響力を理解した上で発言し行動している。
そう、彼は結構黒…いや、計算高い人間である。
確かに彼の理想や信念は立派なのだが、相手の逃げ場を塞いでから追い詰める様に、個人的な交渉材料を用意したり、目的の為なら手段を選ばなかったりするタイプなのだ。
先ほど被っていた猫は、表面にある1枚に過ぎないのだ。少なく見積もっても、下にあと2枚は猫が居る。その詳細を知っているのは、幼馴染兼妻である1番隊副隊長くらいだろう。
事務仕事が嫌い、と言うのは紛れもない事実であるので安心してほしい。
彼は嘘を吐かないのだ。真実を話すかどうかは別として、嘘は吐かないのだ。
まるで悪魔の様だ、とは割と頻繁に言われるらしい。
こうして異能力軍初の武力行使作戦は、宮村の手の平を転がりながら始まったのである。
作戦は恙無く成功した。
作戦終了後、不良補佐こと四ツ橋によって宮村は始末書やら何やらを書いていたらしい。
そして作戦中、宮村はとある出会いをし、本人や周りを巻き込んで大きな変化が訪れるのだが、それはまた別のお話。
宮村さん、結構黒い人です。
イイ人ではあるんですが、考えが読めないと言うか何するか分からないと言うか……
ただし、味方は守りますし、育てます。
仲間なら心強いですが、敵なら悪夢。
そんな感じの、二十代後半です。
それと、シリーズ見たら知ってる名前が出ているかも知れない。と言っておきます。
その流れで、時系列はシリーズ説明だかそんな感じの所に載せておきます。番号順ではありません。
これ以上何か書くことが思い付かなかったので、作者の心の声を残しておきます。
台詞はスピーチ3~10分(200~1000文字)にしたい!
地の文込みで3000文字前後にしたい!
うがぁぁ~難しいよ~
納得いかないよぉー
でもそこそこ満足なんだよ~チクショー!
……お付き合い頂きありがとうございました。